知っていた者
ガラシャ革命団について知っていそうなリィリィを探すヘルムート達。
町長の屋敷の周りは厳重な体制が敷かれていた。
リィリィなら何か知っているはずと考え街を探す。
そして街の宿でそれを見つける。
「見つけたぞ、お前、今回の事をなぜ知っていたか話してもらおうか」
「あっ、お爺ちゃん、そんな怖い顔しないの~」
「そうよ、早死するわよん」
「いいから話しなさいよ、ほら」
アルもそれを急かす。
とはいえ一応は話してくれるようだ。
「う~ん、予告状が届いたって聞いただけだよ~、あとは立地かな~」
「つまりそれから北側の窓が危険だとワシらに警告したのか」
「リィリィはこう見えて優秀なのよね、それにお爺ちゃんの事も知ってたのよ」
「つまりヘルムートさんだと分かってて言ったという事ですか」
「してやられたわね」
なんにしてもヘルムートが何者か知っていた上での忠告だったらしい。
そして現状も話してくれた。
「町長さんは逮捕されたよ~、娘さんは病院~、屋敷は調べられてるねぇ~」
「なんだと!?つまりあいつらの言っていた事は…」
「全部正しかったって事よ、少なくともあのガラシャ革命団が抜かるはずないわ」
「というかそもそもガラシャ革命団ってなんなのよ」
「そういえば姫様は知らないんでしたっけ」
そこについても聞いておく事にした。
悪徳政治家を掃除しているとされるガラシャ革命団の事を。
「ガラシャ革命団っていうのは西の国で生まれた革命組織ね」
「それで世界に勢力を拡大して今では全世界にその拠点があるんです」
「つまりそいつらが政治家を殺してるの?」
「正しくは違うね~、過激な手段は囮だよ~、政治家そのものは密告で逮捕~」
「今回もあの爆発は目を逸らすための囮か、政治家をその場から動けなくするためのな」
リィリィ曰くその過激な手段は政治家をその場に留まらせるために使うという。
その間に別の仲間が密告しておいた事により警察が来て逮捕、という流れらしい。
それだけでも用意の周到さが窺える。
ガラシャ革命団はなぜそんな事をしているのか。
「あいつらの発起人はスラム出身らしいの、それで政治家を憎んでるとか」
「その結果がガラシャ革命団の結成か、やれやれだな」
「でもきちんと法律で裁こうとする辺り単なるテロリストじゃないわよね」
「だよねぇ~、とはいえそれで平和にはならないと思うよ~」
「それは…そうなんですけど」
なんにしてもガラシャ革命団はそれだけ政治家を憎んでいるらしい。
弱い人達を救ってくれない政治家は牢獄にぶち込む、そんな信念なのか。
とはいえ政治の世界を知るヘルムートからしたらそれはただの綺麗事でしかない。
そんな手段で国は変えられないと身を以て知っているのだ。
「信念については立派なものだがな、それで国が変わるなら世の中暗殺が横行するぞ」
「お爺ちゃんはそれを痛いぐらい知ってるものね、アタシ泣いちゃうわ」
「国を変えたいけどそれしか手段が選べなかった、か」
「だからそういう人達を生み出す程度には政治の世界は闇が深いんだよね~」
「嫌なものですね、でもそれは私も…」
なんにしても話が聞けた事にはほっとした。
そのあとは病院へ移動してエストの事を任せヘルムート達は街へと帰る。
リィリィ達も今後の仕事探しという事で別れた。
ガラシャ革命団、それは政治の闇が生み出した異分子なのか。
ヘルムートはそんな闇を知っているのだから、その胸中は複雑なものであった。