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神隠し再び

街の発展がほぼ終わった頃に人探しが行われていた。

それは隣の国へ留学予定だった名門貴族の子息の行方である。

隣の国からは来ていないと言われ、貴族の家にも帰っていない。

この街の冒険者達も顔こそ見ていたが行方は知らないと言っていた。


「貴族の子息の失踪、な」


「盗賊にでも襲われたんじゃないの」


「…お前だな?」


「知らないわ」


だがその現場に人はメアとその子息しかいなかった。

証拠になるものすらもタマが喰らっているからなのである。


「まあいい、そのタマは証拠すらも喰っちまうんだろう?」


「そうね、好き嫌いはないわよ」


「好き嫌いがないってのも困りものだがな」


「ヘルムートは怒る?」


「怒るさ、とはいえお前を引き取ったのはワシだ、何があっても守ってやる」


そうしているうちにアルが戻ってくる。


国からも何か知らないかとしつこく言われていたようで、うんざりしていた。


「はぁ、まさかここで神隠しとか」


「国の人間は大変だな、末端とはいえ一応王族なんだ」


「そうよねぇ、でも知らないものは知らないっての!」


「カリカリするな、お前は本当に知らないんだ、それを貫き通せ」


「あんたこんな状況でも冷静ねぇ」


ヘルムートも犯人の目星はついているからこそ冷静なのだ。

とはいえ貴族の子息の家からも捜索願いが出されている。


さらに彼と契約で揉めていた冒険者にも任意の事情聴取が行われた。

だが全てシロでありアリバイも成立していた。


国は第二の神隠しとしてそれを発表するか否かの審議に入ったという。

数ヶ月前に王都で起きた貴族の娘の神隠し、そして今回の一件である。


「神隠しって本当になんなのよ」


「以前の貴族の娘も発見されてないんだろう?」


「そうよ、国も死亡したと決定するかどうか迷ってるとか」


「誘拐なら生きている可能性はある、まあ身代金の要求とかがない時点で察しろ」


「なんでこんな事件が…気持ちは察するけど」


とりあえずアルも国との対応で滅入っているようだ。


メアもそんなアルを気遣ってなのか、頭を撫でていた。


「よしよし」


「頭撫でてもねぇ」


「メアなりの気遣いなんだ、不器用ながらもな」


「元気出して」


「なんかお菓子ちょうだい、疲れてお腹空いた」


お菓子を要求するアル。

ヘルムートもやれやれと思いつつ台所から煎餅を持ってくる。


「お煎餅って、まあ美味しいからいいけど」


「お前すっかり和食が気に入ってるだろ」


「まあね、でもハシってやつはどうにも慣れないわ」


「東の国の文化だからな、アルには難しいか?」


「そんな事はないわよ、絶対マスターしてやるわ」


そうしているうちに洵と木花も戻ってくる。

この街の人間が全員シロという事もあり何かとあったようだ。


「また神隠しですか、子息の家の方からも何かとあったようですよ」


「隣の国からも来ていないと確認済みだそうです」


「なんでうちの国は神隠しが起きるのよ、それもここ最近に」


「私に訊かれても困りますが」


「神隠し、実はもっと恐ろしいものかもしれませんね」


もっと恐ろしいもの。

木花も犯人の目星がついているからこその発言なのか。


なんにしてもアルは国に対応こそ命じたものの本人は知らないを貫き通す。


第二の神隠しは再び暗礁に乗り上げようとしていた。

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