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爺さんと怪物少女  作者: あさしおやしお971号
魔界の暗殺者
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賢いとは

相も変わらずの日々を送るヘルムート達。

そんな今日もアルはヘルムートに質問をぶつける。

気になる事は訊かずにはいられないのか、ヘルムートも少し困り顔。

とはいえ自分なりの考えでいいなら答えてはやっているようで。


「ねえヘルムート、賢いってなんなの?」


「お前の質問は漠然としすぎだ、賢いっていうのがどういう事かだと」


「でも私もそれは少し気になるわ」


「そうね、確かに気になる話よ」


アルの質問、賢いとはなんなのか。


答えは難しいものの、ヘルムートなりの考えはあるようで。


「クッキーが焼けたぞ、ってまたアルがヘルムートに何か聞いてるのか」


「それでヘルムートの考えはどうなのかしら」


「そうだな、ワシが思う賢いってのは頭の回転が速い奴、だろうか」


「頭の回転が速い?」


「つまり有能な軍師みたいな感じかしら」


ヘルムートの考える賢い、それは頭の回転が速いという事。

要するに適応力や応用力に優れる人を言うのだと思われる。


その場の判断で最善ではないが最良に近い判断を出せるような人。

それがヘルムートの考える賢さなのだろう。


「でもなんでそんな事を聞いたの?」


「だって世の中有名な大学を出てるのに馬鹿な人が結構いるじゃない」


「辛辣ね、でも分からなくはないかしら」


「それは恐らく思想とかそっちの問題も絡んできそうな話だろう」


「でも僕もそれは思った事がある、僕の国の王族や貴族もそういう奴が少なからずいたぞ」


王族のアルやソルベがそれを言うのだから、嘘でもないのだろう。

とはいえなぜそうなってしまうのかとも不思議なようで。


「まずまともな人は政治家ではなく学者になると言われているわね」


「ならその学者にも明らかに変な奴がいるのはなんでだ?」


「それは恐らく思想とかそっちの話になってくるわね」


「そもそも勘違いがある、テストで高得点が取れる事が賢いとは言わんからな」


「それがヘルムートの言う適応力とか応用力になるの?」


ヘルムートはテストで高得点が取れるだけなら馬鹿でも出来るという。

大切なのは知識を活かせる事と、環境に適応する事だともいう。


「テストで高得点が取れるだけで賢いと言うなら、世の中の人間のほとんどが天才になるぞ」


「それはそうね、でもテストに力を入れるのは普通じゃないの?」


「テストっていうのは記憶のチェックよ、私が暗殺者としてやってた頃は実技メインだもの」


「つまり賢いっていうのはペーパーテストの点数より実技の出来って事かしら」


「でも確かに分からなくはないな、テストをゴールにしていてはその先のスキルが疎かになる」


結局はヘルムートの考える賢いとは、応用力や適応力なのだ。

紙に書かれた問題の答えを出すだけで賢くはなれないという。


医者は頭脳はもちろんだが、実技も優秀でなくてはなれない。

賢いというのはそういうところにあるという考えらしい。


「なんにしてもワシから見て賢いと感じる奴は多くが理系だ、それは確かだな」


「ヘルムート自身外交官やってたし、世界のいろんな人に会ってるものね」


「そういう世界の要人に会ってきたからこその考えなんだろうな」


「結局は生き残れる人は変化を遂げられる者だけ、そういう事なのかしら」


「それが適応力と応用力なのね」


そういう考えがあるのも外交官として外国の様々な人を見たからこそ。

政治的な意味でも人を見る目だけは肥えたのだろう。


「だからワシが国のトップなら政治家になる条件に理系の修士以上を必須にするな」


「それ門戸を狭くするだけなんじゃない?」


「時として最善の手段が最良の結果を生むとは限らないものだし、私は賛成かしら」


「愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ、というやつか?」


「難しいのはよく分からないけど」


なんにしてもそれがヘルムートの考える賢いらしい。

応用力や適応力、そして変化を遂げられる者こそが賢いのだろうと。


「ヘルムートの考えはなんとなく理解したわ」


「そうか、あとはお前なりの答えを出せばいいさ」


「そういうところは大人よね」


「答えは押し付けるものじゃないって事だろう」


「答えは人の数だけ、ね」


ヘルムートなりの考え。

アルもそれを理解しつつ自分なりの答えを出す。


そうして年寄りの考えも少しは役立つのである。

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