梅の使い方
いつもと変わらぬ日々を送るヘルムート達。
そんな今日はこの前のジュースの余りの梅をどう使おうか考えていた。
梅の実が大量に手に入ったもののジュースだけでは使い切れない。
木花も一応は様々に使っているのだが。
「まだ梅の実が余っているな」
「そうですね、使ってはいるんですが」
「あれだけジュースに使ってもまだ余ってるのね」
「お菓子とかに使えたりしませんか?」
とりあえず何かに使えそうなものはないか考える。
梅干しを漬けるにしてもすぐには食べられないので。
「なんだ、梅の実がまだ余ってたのか」
「ソルベさん、ええ、使ってはいるんですが」
「食べられるまで時間がかかるものはどうにもな」
「何かいい案とかない」
「私もお菓子に使ったりしてるんですけど」
そこでソルベが一つ閃く。
つまりすぐに作れて保存が利けばいいという事だろうと。
「ならジャムにでもすればいいだろ、作れるだろう?梅ジャム」
「ジャムですか、作れるには作れるんですけどね」
「何かあるの?」
「そうだな、まあやってみるのもいいだろ」
「スコーンとか焼きたいですよね」
梅ジャムに対して煮え切らない理由は一応ある。
それは東の国で食べた味で、懐かしの味でもあるからだ。
あれのようにはならないという事も理解している。
だからこそ梅ジャムに対しては煮え切らないのだ。
それでもせっかくだから作ってみようという事にはなった。
ソルベはすでにジャム作りは会得済みである。
「梅ジャムに対して煮え切らないのは何か理由があるんだろう」
「それはな、東の国に行った際に食べた味が忘れられないからだ」
「駄菓子ではあるんですけどね、あれを超える梅ジャムには今でも出会えていないんですよ」
「駄菓子なのにジャム?どういう事よ」
「そのジャムより美味しい梅ジャムがまだないって事ですか?」
ヘルムートも意外とノスタルジックな味が好みだったりする。
だからこそ梅ジャムはその味が今でもナンバーワンでオンリーワンなのだ。
過去に作った事が実はあるのだが、あれを超える事は出来なかった。
だから煮え切らなかったのだ。
「そのジャムの味には何度作っても到達出来なかったんですよ」
「それで梅ジャムって聞いてどうにも煮え切らなかったと」
「別に比べなくてもいいんじゃないか?同じものがあったとしてもそれは同じものではないぞ」
「それはそうなんだがな、作ってる人が引退しちまってもう二度と超える事はないんだ」
「そんな理由があったのね、梅ジャムに対しての想いって」
ヘルムートもそういう理由があってか家庭で作る梅ジャムに対しての気持ちはある。
とはいえ作る人が引退したからこそ改めて作ってみようという気持ちにもなった。
そんなわけで梅ジャムを作ろうとその決意を固める。
ソルベも最高の梅ジャムを作ってやると気合いを入れている。
「それにしてもヘルムートって駄菓子なんてノスタルジックなものが好きなのね」
「なんか意外でした、私も好きですけど、駄菓子」
「ふふ、ヘルムートさんはこれでも意外と子供っぽいものが好きなんですよ」
「やめんか、まあ確かに駄菓子はあのチープさが美味しいと思っているがな」
「僕にも駄菓子みたいなものは作れたりしないものか」
ソルベはすっかり料理人の顔だ。
とはいえそういった気持ちはやはりいいものだと改めて実感している様子。
「さて、では梅ジャムを作りますか、ソルベさん、お手伝いお願いします」
「ああ、任せろ!」
「いい家族に恵まれたわね」
「全くだ、人生悪くないもんだな」
「お爺ちゃんみたいな事言いますね、でもそれも素敵です」
そんなわけで梅ジャムを作る事になった。
梅の実は他にも様々に使い早々と消費していく事に。
思い出の味はやはり思い出のまま残るのだろう。