鬼と福
すっかりいつもの暮らしに戻ったヘルムート達。
そんな中アルが昨日やった事について訪ねてきた。
それは東の国での行事の話。
節分の事が気になっているようで。
「ねえ、昨日やったセツブンってなんなの?」
「それか、まあ東の国で言うゲン担ぎみたいなものだ」
「ゲン担ぎですか?」
「ええ、豆を撒いたり柊の葉を飾る事で鬼を追い出すんです」
節分、それは東の国の行事の一つ。
鬼を追い出し福を招き入れるという行事である。
「おい、冷蔵庫にあった残り物の恵方巻きは食べていいのか」
「ああ、それは食べて構いませんよ」
「恵方巻きっていうのもよく分からないんたけど」
「そいつは東の国の西の地域の風習だな、恵方と呼ばれる方角を向いてまるかじりするんだ」
「太巻き寿司を丸かじりってきつくないですか?私には無理ですよ」
確かに太巻き寿司を丸かじりで食べきるのは小さい女の子にはきついだろうと思う。
そもそも特定の地域の風習で全国区でもない。
ぶっちゃければマイナーな風習である。
大の男でも太巻き寿司を丸かじりで食べきるのは地味にきついので、やはりマイナーなのか。
「風習だと丸かじりでというが、無理だろ、僕は素直に切り分けて食べるからな」
「寧ろそうしないと食べられないし、太巻き寿司を咥えられるほど口も大きくないし」
「それはそうだ、そもそも大の男でも太巻き寿司を丸かじりで食べきるのはきついぞ」
「東の国の風習でもマイナーなものですからね、節分は本来は豆撒きですよ」
「マイナーなんですね、だからうちでは切り分けて食べると」
木花の言うように、恵方巻きはマイナーな風習だ。
東の国の西の地域の一部でやっていると言われるに過ぎない。
別に全国区でもないので、流行るはずもないのだ。
ヘルムートも美味しいとは思うが頻繁に食べたいとも思わない。
ソルベも味は美味しいというが、丸かじりで食べきるのは無理だとはっきりと言う。
アルやベリンダではそもそも咥えるのも難しいのだ。
「恵方巻きは風習だからそう呼ぶだけで、実際はただの太巻き寿司だしな」
「中身は指定されてたりはしないのか?」
「そういう話は聞きませんね、恐らく指定はされていないと思われますよ」
「よく分からん、なんで太巻きに豆に柊なの?」
「確か恵方巻きは恵方を向いて食べると福を呼ぶんでしたっけ?」
恵方巻きについては大体そんなところだ。
豆撒きと柊の葉の事についても説明する。
「豆と柊の葉は鬼が苦手にしていると言われますね、どっちも魔除けの意味合いです」
「つまり玄関に柊の葉を飾るのは家に入らないようにという事か」
「それで豆は鬼に撒いて追い払うって事ね」
「大体そんなところだな、あとは福を招き入れる事も含めてな」
「魔除けですか、東の国の風習ってそういう伝承みたいな感じなんですね」
そもそも東の国は国としての歴史も長い。
そういう様々な風習が残っているのも歴史が成せる技なのか。
「なんにしても節分とはそういうものです、東の国のお伽噺でも鬼は鉄板ですから」
「撒いた豆を歳の数だけ食べたやつもそうなの?美味しくなかったけど」
「それは仕方ないさ、無理に食べなくてもいいしな」
「なんにしても東の国の文化とは面白いな、料理についても勉強になった」
「ソルベさんはどんどん料理が上手くなりますね」
そんな節分について話したわけで。
東の国の文化についてはアルもソルベも興味はあるのは確かなようだ。
節分の文化については恵方巻きはマイナーな風習だと考えるべきである。