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爺さんと怪物少女  作者: あさしおやしお971号
魔界の暗殺者
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大人になるとは

お正月もすっかり終わりいつもの日々に戻った街の人達。

そんな今日は東の国では少し特別な日らしい。

洵やヘルムートはそれを知っているので少し考えていた。

アルはそれが気になるようで。


「ねえ、今日って何か特別な日なの?」


「ん?ああ、今日は東の国では成人式なんだ」


「成人式ですか?」


「ええ、大人になるという事ですね」


こっちと東の国では当然その日がいつかの違いはある。


そんな成人式の話とは。


「なんだ、面白そうな話をしてるな」


「あら、ソルベも聞く?」


「東の国の成人式といえば新成人が暴れるのはお約束でな、毎年ニュースになる」


「暴れるって、なんでそんな事…」


「その人達は最後の思い出のつもりなんでしょう、周囲からしたらいい迷惑ですよ」


東の国の成人式のお約束。

それは新成人が暴れるという事らしい。


ヘルムートもそれを見たわけではないが、話は聞いた事があるらしい。

洵も東の国で暮らしていた時はそのニュースを毎年見ていたという。


「その新成人って大人になってないわねぇ、馬鹿じゃないの」


「そもそも世の中には体だけデカくなったクソガキが多いからな」


「ヘルムートさんも辛辣ですね」


「とはいえ大人になるというのは社会に出る事でもありますからね」


「アルの方がずっとしっかりしてる気がするな」


ソルベも結構ズバッと言うものだ。

とはいえ新成人がなぜ暴れるかというのは、やはり大人になったら出来ないからなのか。


「新成人が暴れるのはもはや風物詩ですよ、ただその人達も卒業のつもりなんですかね」


「それで成人式をぶち壊していい理由にはならないと思うんですが」


「ヘルムートの言うように体だけデカくなったクソガキなのか、そいつらは」


「なんにしても大人になるというのは式を迎えたら大人とはワシは思ってないがな」


「あくまでもそれは法令上では大人という年齢に到達しただけに過ぎない、かしら」


アルの言う事も間違いではないのだろう。

法令上では大人と言われる年齢になっただけの話だ。


実際に大人と呼べるようになるには程遠いクソガキも世の中には多い。

体だけ大きくなって精神は子供のままのクソガキという事でしかないのだ。


ヘルムートも辛辣ではあるが、大人になる事の大変さも知っているつもりではある。

大人になるというのは精神的に成熟する事、ヘルムートはそう考える。


「なら私もこの国で法令上では大人になったら大人になれるの?」


「それはアルさん次第だと思いますよ、それを決めるのは自分自身です」


「むぅ、僕も年齢的に大人かどうか微妙だしな、今年20になるからな」


「ソルベさんって思ったより若いですね」


「なんにせよ成人式ってのは社会への船出に過ぎん、本人が大人になるとは限らんぞ」


ヘルムートは相変わらず辛辣な事を言う。

とはいえそれは外交官として国の中で体だけデカくなったクソガキを見ていたからなのか。


大人になるとは辛い事なのだろうとも考えてもいる。

アルもそれをあえて訊いてみる。


「ねえ、ヘルムート、大人になるのは辛い?」


「そうだな、いい事は少ない、痛みだけは無駄に増えていった気はするな」


「ヘルムートでもそんな事を言うんだな、意外だ」


「ですが世の中には大人になんかなりたくない、子供のままでいたい、そう思う人も多いです」


「洵さんの言う事もまんざらでもないんでしょうね」


大人になるという事。

ヘルムートも洵もそれを経験したからこそ言える言葉もあるのだろう。


「大人になるって難しいわ、私も大人になれるように努力しなきゃね」


「仮にも姫だからな、それでも辛かったらいつでも言ってこい」


「大人を頼るのは子供の特権ですからね」


「はい、そうします」


「やっぱりこの二人は頼りになるな、大人かどうかは別としても」


大人になるという事の大変さと難しさ。

それはアルもベリンダもソルベもこれから経験していくのだろう。


大人になんかなりたくない、それは子供が見た大人の世界からの言葉なのかもしれない。

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