イブを祝うわけ
年末に向けて準備なども進めるヘルムート達。
そんな今日はクリスマスイブ。
ヘルムートもアル達に内緒でプレゼントを用意している様子。
とはいえアルには少し気になる事もあるようで。
「ねえ、今日ってクリスマスイブよね?」
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「ああ、そういう事か」
「どういう事ですか?」
ソルベには察しがついたようで、ベリンダは考えている。
その内容についてはヘルムートも察したようだ。
「つまりお前が言いたいのはなんで人はイブばかり騒ぐのか、そうだな?」
「そうよ、クリスマスって明日でしょ?今日祝ったらそれは前夜祭じゃない」
「それは尤もなんだがな、イブに厳しいくせに当日は静かなのが不思議でならん」
「ああ、そういう事ですか、確かにそれは不思議ですよね」
「何を話しているのかしら」
そこにリヒアもやってきたようだ。
話していた事は簡潔に説明する。
「つまりクリスマスの前夜には厳しいくせに当日は静かなのが不思議って事ね」
「そうよ、まあ成り立ちを考えると当日は静かな方が正しいとは思うんだけど」
「特にカップルなんかはイブを神聖視してる傾向にある気はするがな」
「それか、そもそも本来のクリスマスなんて今はないに等しいしいいのではないか?」
「それはそうなんですけど、姫様の気にしてる事も分からなくはないですよね」
つまりアルが言いたいのはイブには厳しいくせに当日は地味な事が不思議らしい。
成り立ちは当然知っているし、なんの日かも知っている。
ソルベもそれは不思議に思っているようで、イブを神聖視し過ぎではないかと考える。
理由としてはよくは分からないが、ヘルムートなりの解釈もあるようで。
「結局はケーキ屋が稼ぎたいからとも解釈出来るな、要するに煽ってるんだ」
「それはそれで逞しいわね、ケーキ屋の商売のためにって」
「でもクリスマスって七面鳥とか他にも食べるものなんてあるじゃない」
「ヘルムートさんは東の国のクリスマスも見てますよね?」
「その解釈はそれを知ってないと出ないと思うんだが」
ヘルムートは確かに東の国のクリスマスも知っている。
だからこそそういう解釈も出るのだろう。
「バレンタインだって東の国の菓子屋がチョコを売るために作った日だからな」
「つまり東の国と西の国のクリスマスは違うって事でいいのね」
「でも見たわけではないですけど、西の国はイブも騒いだりはしませんよね」
「そう考えると東の国の人間が祭り好きなのか?クリスマスが祭りとは言いにくいが」
「うーん、結局はお金儲けに都合よく解釈して煽ってるって事でいいの?」
ヘルムートの解釈ではそんなところだろう。
結局はそういう日は稼ぎ時と考える、つまりはケーキやチョコを売るための煽り文句だ。
本来の意味とは違っているのも国民性なのだろう。
東の国はあらゆる文化を取り入れて発展している国だからこそだ。
「ワシなりに言わせてもらえば、響きもいいからとかはありそうだがな」
「でも前夜ってそこまで騒ぐものなの?」
「寧ろ前夜だからこそ騒ぐんじゃないかしら」
「リヒアさんの新解釈ですね」
「つまりイブに騒ぐのは前夜祭で、当日は厳かに、そう言いたいのか?」
その解釈にはヘルムートも唸るしかなかった。
前夜だからこそ騒ぐ、そういう考えもあるのかと。
「私なりの解釈だけどね、でもそんな神聖視はするものとも思わないけど」
「解釈もいろいろありますね、イブに騒ぐ理由、考えると面白いです」
「とはいえイブにやたらと厳しいのもどうかとは思うんだがな」
「そうよねぇ、でも文化を取り入れるならいいんじゃない?」
「何事も程々、そういう事だな、結局は」
そんなイブと当日の違いを考える。
やはりイブに厳しいのは前夜だからという事になるのか。
クリスマスの謎は尽きないものである。




