例の占い師
ソルベに男だと吹き込んだ占い師。
王子から連絡をもらいその占い師に会うべくヘルムート達は王都に来ていた。
無用な事は起こすまいとヘルムートとアル、ソルベの三人だけで来ている。
まずは王子とコンタクトを取る事に。
「言われた待ち合わせ場所はここだな」
「王子の力を借りられるとは、アルもやはりこういう時は頼りになるな」
「一応王族なんだから、それぐらい当然でしょ」
「ヘルムート殿!」
噂をすればその王子がやってくる。
とりあえずその占い師の事を尋ねてみる。
「例の占い師はどうなってる」
「今は城の地下牢に入れてあります、逃げられては困るので」
「王子、あなた結構大胆ですね」
「あなたがソルベですね、私用の時は敬語でなくていいですよ」
「それよりその占い師に会わせてくれる?」
王子もそのために拘留しているという事ではある。
占い師に会うべく王子に案内され城の地下牢へ。
そこには脳天気に鼻歌を歌う占い師がいた。
ソルベが長年の疑問に答えを出すべく占い師に話しかける。
「おい、お前、僕の事を覚えているか?」
「ん?ああ、あの時のお姫様ですか、私に何か用ですか?それより出してくださいよ」
「質問に答えてからですよ、過去にソルベに男だと吹き込んだそうですね」
「なんでそんな事言ったの?そのせいでこいつ男だって信じ切ってたのよ」
「罪に問うつもりはないが、仮にも一国の姫をたぶらかしたわけだからな」
その理由について記憶を引っ張り出す占い師。
そして出た答えは衝撃的なものだった。
「なんか悩んでたみたいですからね、少し元気づけようとしたんですが、まさか本気とは」
「…は?それだけ?それだけの事でソルベの人生を振り回したの?」
「悩み自体はいいとして、それを本気にしてしまったソルベにも非はあるのか?」
「うーん、この場合詐称の罪とかは適用出来るとは思いますが、西の国次第かと」
「お前…僕は本気で自分が男だと思って生きてきたんだぞ!子供だったとはいえ…」
占い師の方もまさか本気にしているとは思ってなかったらしい。
ソルベも当時は子供だったとはいえ、それを本気にしてしまっていた事も問題か。
なんにしても理由はそんな事である。
凄く拍子抜けだし、あまりにあっけなく意外すぎる結末。
ソルベ自身も落胆は隠せないし、占い師も申し訳なさそうにしている。
アルとヘルムートもなんか一気に疲れが放出された気分だ。
「でもまさか本気にしてるとは…私の方が驚いてるんですよ」
「子供は無垢ですからね、それも王族ともなると世間知らずな事もありそうです」
「そのせいで本気にして男になるんだ~ってなってこの有様なの?世の中怖いわね」
「はぁ、もうなんか力が一気に抜けたよ、僕が冗談を本気にしてただけとか」
「解決でいいのか?ソルベはそれでいいのか?」
ソルベもなんかどうでもよくなったようだ。
とりあえず悩みは解決したのだが、どうにも腑に落ちない感じはする。
占い師の方も驚いているし、アルも呆れ顔だし、王子もやれやれという顔をしている。
ヘルムートも真剣に考えていたのが凄く馬鹿らしくなってしまったようだ。
「それより出してくださいよ」
「ああ、すまない、今鍵を開ける」
「罪に問えるものなのか?この場合は」
「うーん、少なくとも実害とか出てないから難しいとは思うけど」
「結局は勘違いと励ましと子供の無垢な心が見事に噛み合ってしまっただけか」
なんにしても問題は解決した。
ソルベは国に帰るつもりもないようで、このままヘルムートの家に住み着く事に。
占い師は解放されて王子も理由は話してあるので、私的な用件で処理するらしい。
全部解決したという事もあり、ヘルムート達も家に帰る事にした。
「さて、家に帰るか」
「帰る前になんか食べていきたいわ、どっと疲れたから精神的に癒やされたいのよ」
「僕もだ、もう無駄に疲れたぞ」
「仕方ないな、食べたら帰るぞ」
「ふふ、ヘルムートもいいお爺ちゃんだわ」
こうして思わぬ結末を迎えたソルベの男騒動。
とはいえソルベもスッキリはしたようで、このままヘルムートの家に住み着く事に。
問題が解決したら次の問題がやってくる事になるのだろうか。