ある程度の自由
アルの兄に頼んだ例の占い師の事は滞りないと連絡を受けていた。
その占い師はなぜソルベにお前は男だなどと言ったのか。
その答えは近いうちに分かる事となる。
そんな連絡を待つ間もアルもソルベもいつもと変わらないようで。
「ほら、レモンタルトが焼けたぞ」
「お前、本当にどんどんスキルアップしてるな」
「プロみたいなお菓子作ってなんなのよ」
「私よりお菓子作りが上手くなってますよね」
ベリンダもすっかり抜かれてしまうそのスキル。
ソルベの料理はプロ並みではないが専門家程度には到達していた。
「邪魔するよ、少し話が…すんすん、いい匂いがするね」
「ゾールか、僕が焼いたレモンタルト、お前も食べていくか」
「ソルベの腕は凄い上がってるから美味しいわよ」
「それより話があるんだろう」
「用件が先ですか」
ゾールの用件は食べ物を少し多めに仕入れたらしく、どこか売る先を探しているらしい。
ヘルムートはそれなら知り合いの孤児院があるので、そこはどうかと提案する。
「孤児院か、いいね、仕入れたものもお菓子だし喜んでくれるかね」
「お菓子?なんでまた」
「そういえばこの季節はハロウィンだな、西の国の祭りだ」
「東の国でいうところのお盆だな、まあやる事は違うんだが」
「要するに霊をなんとかっていうお祭りですか?」
ソルベは西の国の出身なのでそういう話もあるのだろう。
ゾールも祭りをするという事ではないらしいが、それに関係するお菓子を仕入れたらしい。
それで少し多めに仕入れたらしく売る相手を探していたらしい。
孤児院なら子供達も喜ぶと思うだろうし、ちょうどいいとヘルムートは言う。
「孤児院は街の西地区にある、あとで案内するぞ」
「すまないね、お菓子なら子供達も食べてくれるさ」
「それにしてもゾールって結構自由よね、それでよく商人が務まるわね」
「そもそも商人というのは信頼関係で成り立つ仕事だ、ゾールは信頼されてるんだろう」
「でも確か商工会とかありますよね?この国って」
商工会、それはこの国で商売をするに辺り許可をもらったり所属する組織だ。
国で立ち上げる際には参加は義務であり、行商人などは許可を得る場所。
つまりこの国の商売人達の元締めである。
商店の立ち上げの際には参加が義務であり、行商人は許可を得なければ商売が出来ない。
商工会の運営は国の国税庁がやっている。
つまり商売人達からの税金を一括で引き受ける組織でもあるという事だ。
「一応許可はもらってるよ、これがその証明書さ」
「そのプラカードみたいなやつか?」
「ワシも持ってるぞ、一応この店の経営者だからな」
「でもその割に自由よね、なんで?」
「商工会はお金の管理と国内の商売人の把握が仕事ですからね」
商工会の主な仕事は国の商店などから納められる税金の管理や商売人を把握する事。
それにより夜逃げなどを素早く把握する事も出来る。
税務署に税金の申請を一括で行うのも商工会の仕事だ。
つまり国税庁管轄の監視組織のようなものでもある。
「税金は国の重要なものだ、議会が腐敗していようともちょろまかしたらアウトだぞ」
「でも商売自体は自由にやれるの?」
「基本的に自由だよ、ただし薬物みたいな非合法なものを売ったら国外追放さ」
「この国のシステムは何かとあるんだな」
「まとめて管理した方が楽といえば楽なんですけどね」
そんな商売をするに当たり大切なもの。
自由とはいえ法に従うのも国で暮らすという事である。
ゾールの仕入れたお菓子は孤児院の子供達に喜ばれたそうで、どっちも得をしたようだ。