足りない建材
都市計画が始まってからそれなりの時間が経過した。
街の拡張は順調に進み建物の骨組みなどもほぼ完成した。
あとは建物を組み上げていくだけである。
だがここで思わぬトラブルが発生する。
「順調に進んでるわね、やっぱり職人って凄いわ」
「その道の事はその道の奴にやらせる、これは基本だぞ」
「いちいち小言が多いわね」
「お前はどんなに勉学を覚えようともまだ若造だからな」
そうしていると役場の担当者がアルの下にやってくる。
どうやら何かトラブルのようだ。
「姫様、実は少しお話が…」
「何かしら?」
「実は建材が足りないようで…追加発注をかけられませんか?」
「建材が足りない?最初の見積もりでは足りなかったという事か?」
「ええ、恐らく想定ミスですね」
どうやら建材が想定していたよりも足りないらしい。
つまり最初の見積もりが甘かったという事になる。
アルはそれに対し即座に国に発注をかけると約束する。
建材が届くまで数日だそうだ。
「感謝します、とりあえず今ある分は酒場の拡張に全部つぎ込みますので」
「そうね、出来るところから一気に完成させなさい」
「冒険者用の寝床なんかは後回しか」
「すみません、では頼みます」
「ええ、今すぐ国に言っておくわ」
そうして担当者は現場に戻っていった。
アルもすぐに国に発注の申請書を送る。
「にしてもアル、お前思ってたよりずっと有能な奴だな」
「当然でしょ、私を誰だと思ってんの」
「おや、何かトラブルですか」
「洵か、そうだ、だがこの姫様もなかなかに有能な奴で驚いてるよ」
「アルは出来る子?」
食事時という事もあり皆が家に戻ってくる。
ちなみに現場の人達には街の食堂を使ってもらう事になっている。
少しでは足りないような連中故に店も稼げているようだ。
そうしているうちに木花が食事を運んでくる。
「今日はオムライスですよ」
「オムライスか、まあワシは好き嫌いもないし構わんが」
「オムライス?このオムレツみたいなやつ?」
「美味しいですよ、オムライス」
「オレンジ」
そうしているうちに食事が始まる。
メアは相変わらずオレンジしか食べていないようだ。
それを見てアルも少し心配していた。
「あんた少しはそれ以外も食べたら?」
「メアはどういうわけかこいつしか食わんのだ、食えなくはないんだろうが」
「とはいえ栄養が足りなくなるような節もないですからね」
「私はこれでいいのよ」
「私も言っているんですが、困っていますよ」
メアは静かにオレンジを二つ食べ終わる。
一方のアルはオムライスに対してどういう感想を言うのか。
「このオムライスって美味しいわね、この赤いのはオコメってやつかしら」
「そうですよ、ケチャップで炒めたケチャップライスです」
「あとは鶏肉とか玉ねぎ、ピーマンなんかだな」
「そういえばアルさんは苦手な食べ物とかはないのですか?」
「苦手な食べ物…ネバネバしたものが苦手、というか無理」
アルの嫌いな食べ物はネバネバしたものらしい。
そんな中洵があれを見せる。
「これは無理そうですね」
「臭っ!なにこれ…腐ってるじゃない!」
「納豆だな、そいつは意図的に腐らせてあるんだ、そういう食べ物だからな」
「東の国の食べ物って美味しいのが多いのに、変なのもあるわねぇ」
「好みが分かれる食べ物ですからね、栄養価は極めて高いのですが」
そうしているうちに食事が終わる。
とはいえネバネバ嫌いなアルには納豆は無理のようだ。
なんとか食べさせてみようかとも考えたが、無理はよくないとも思った。
午後もアルはその手腕を発揮して街の拡張を進めていくのであった。