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爺さんと怪物少女  作者: あさしおやしお971号
騎士と呪いと花
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理想論について

ソルベの探す花はマイペースに探すヘルムート達。

そんな中アルが今回も気になる事をぶつけてくる。

それは物語の事のようだが。

王女であるアルには気になってしまうようで。


「ねえ、ヘルムート、なんで勇者ってぼんやりした理想論ばかり語るの?」


「何を言い出すかと思えば」


「だが僕もそれは引っかかる、どう考えても悪の方が正しい事を言っていないか?」


「難しい話ですね、それは」


アルが引っかかるのは勇者の物語らしい。


なぜ勇者達は理想論ばかり語り現実的な事を語らないのかと。


「あれ?また姫様が何か訊いてるんですか」


「おや、ベリンダさん」


「それより教えなさいよ」


「ワシは作者じゃないんだがな」


「でも考察ぐらいぐらいは出来るだろう」


ヘルムートも少し困り顔である。

とりあえずは洵と大人が思っている事を言ってみる。


「ぶっちゃけて言えば綺麗に聞こえるからなんだろうな」


「綺麗に聞こえるって?」


「理想論は一見すると言っている事はとても綺麗です、でもそれが現実に可能だと?」


「確かに…選挙などでも現実的な事を言う奴より綺麗な理想論を語る奴がよく勝つな」


「言葉のマジックってやつなんでしょうか」


ヘルムート曰く人は汚い正論より綺麗な嘘に惹かれるという。

どんなに正論を述べてもその言葉が汚ければ人は惹かれない。


勇者の話はその典型なのだと洵は言う。

魔王が語るのは汚い正論、勇者達が語るのは綺麗な理想論。


それのどちらに人は共感するかと言われれば言わずもがなだ。

それが人の心を動かすのだから、現実的な言葉より理想論が支持されてしまうのだ。


「だからな、子供のうちは勇者に惹かれる、だが大人になると魔王に共感するんだ」


「そんなものなの?子供騙しもいいところね」


「なぜ魔王を倒したあとの世界を描く作品が少ないか、考えた事はありますか?」


「そうか…理想論を現実にやったら勇者達は世界の敵になってもおかしくない」


「つまり綺麗事で魔王を倒してあとの世界は勝手に妄想しなさいって事ですか」


国の外交官をやっていたヘルムートもそういう話の脆さは感じるという。

少なくとも理想論で政治は出来ない、現実を見ない政治は必ずどこかで崩れると。


勇者の言う事は財源を無視した支援のようなものと言う。

その理想論は現実的な部分には基本的に触れていないのだ。


もし魔王を倒したあとの荒廃した世界がスムーズに復興出来るかと言えば難しい。

物語にリアリティを持ち込むのはおすすめしないが、極端な理想論は話を壊すと。


「話なんてのはご都合主義でいいんだ、だがな、登場人物が全員聖人ならどうだ?」


「それは確かに怖い世界だな、どこかに貧民や犯罪者を入れないと流石に変だ」


「登場人物が全員綺麗な物語など成立しないんですよ、それで対比になるのが魔王です」


「現実的な汚い正論を言う存在という事ね」


「そう言われると上手く出来てるなぁと思いますね」


物語なんてものはご都合主義でいい。

だがどこかに世界の闇を入れなければ話そのものがディストピア化してしまう。


争いが一切存在しない世界の物語を描いたとしたら、それはある種の恐怖になる。

話を書くとはそういう事だし、それが綺麗な理想論と汚い現実論だ。


「ワシも今だと勇者より魔王に理解を示すからな」


「大人になるって複雑だわ、私も少し考えるべきなのかしら」


「ですが世の中には考えさせられる物語はたくさんあります、それに出会えるかですよ」


「魔王から見た人間とかそういう話か」


「そういう話も一度は読んでみたいものですね」


アルも少し不服そうだが一応は納得したようだ。

綺麗な理想論と汚い現実論、それは常に人の目を眩ませる魔法の言葉。


人は汚い正論よりも綺麗な理想論に惹かれやすいのだから。

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