砲兵を招く銀の鍵(2)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
「我が軍勢を降ろす事が出来ない、貴様の仕業か?」
知るか、と道隆は内心で呟く。
クレーターから飛び出したアルキゴスの気配は、先刻とは大きく変化している。
厳かにして苛烈。夏の日差しのように降り注ぐ天使の圧。対峙する道隆は、胸が騒ぐのを感じた。
傷が癒え、鎧が修復されている以外、容姿に変化はない。
「極東の民。洗礼を受ける機会を得られなかった貴様の不運を、私は憐れもう。我が名はカマエル。我が名を灯とし、嘆きの縁に入るがいい」
カマエルの名を聞いた道隆は、内心で眉を顰める。
大天使の一人で、能天使の指揮官…だっただろうか?天使の知識はゲームや漫画由来なので、あまり詳しくはないが。
甲冑の美青年は長剣で斬りかかる。刀身は煌めきを放っており、命中するのは不味いだろう。彼は高度を上げて回避する。
カマエルの上を取った道隆は、左腕の引き金を引く。繊維が裂けるような音が、大天使と異能者の聴覚に飛び込んできた。
空間が捻じれ、天使の炎など話にならない高威力射撃が放たれた。
巨人が掌を閉じるように、カマエルを中心とした半径30mに存在した全てが中心部分に向かっていく。
一筋の閃光が走った後、かつて商品を略奪しに行ったショッピングモールの一部が店舗もろとも、スプーンで穿られたように削られていた。
道隆はあらかじめ、天使のみを射殺できる程度の出力を意識していた。杭を操作する要領で、この銃撃もコントロールできると考えたのだ。
予想が当たったのか、腕から撃ち出された破壊光は1秒経たずに消滅。
(何mあるんだこれ?)
道隆の足元に、地獄に通じるような大穴が口を開けた。
地殻を貫くほどではないだろうが、変身した自分の視覚でも底が見えない。
もし水平に放ったなら、最大出力で放ったなら、どれほどの被害が出るのか?
さしもの道隆も、おいそれと使う訳にはいかないと考えた。異能者に取り囲まれて、責任を問われても困る。
目に見えるトラブルに、突っ込んでいくつもりは無い。
道隆は新たな力に警戒しつつ、自身の暮らす集落に戻る。
平安通の地上では、巨獣に変化した暁が、集落内に降りてきた騎士を砕いていた。
とはいえ、道隆の結界によって強化された魔物が倒し、飛蝗頭が片付けていた為、集落に降りてきた天使は僅かだ。
巨人に築かせたバリケードの真上に3つ数え終わる前に辿り着くと、氷雪の嵐を天使にお見舞いする。
結界の力で強化され、砲撃態となった道隆の嵐は強烈だった。
騎士達の体内の水分が凍り付き、撃たれた鳩のように次々と落下していく。
率いた魔物の勢いもあり、一時間かからずに天使の軍団を壊滅させることが出来た。
天使を片付けた翌日、道隆が目覚めたのは10時過ぎだった。
起床した彼は顔を洗い、歯を磨くとレシピを見ながら、焼きそばを調理する。
朝食を済ませた道隆は小説でも読もうか、と考えたがすぐに思い直す。
昨晩の被害を確かめなければならない。外着に着替えてから外に出た彼は、亮典と鉢合わせになる。
「おはようございます」
「おはようございます」
表通り脇の十字路で、亮典は戸惑ったように微笑む。
「昨日はすいませんでした」
「え?」
「ひとりで戦っていたでしょ?僕達、助けに行かなかったから」
亮典は暁に起こされて、昨夜の騒ぎに気付いた。
道隆の軍勢が応戦している事はすぐにわかった為、2人は杏子の保護を優先。
幸い、というべきか彼女は起きなかった。
「あぁー、だって魔物たちがいるし」
「それでも――」
「いや、あの、お母さんと笹沼くん、無事?」
道隆は居心地の悪さを覚え、話題を変える。
腹を立てていない――戦力に数えていない――のに、申し訳なさそうにされても困る。
それに昨日、自分が放った砲撃が予想以上に高威力で驚いた。味方を減らすのは不味い。
「はい。母さんも暁も無事です」
「よかった。それじゃ」
「――あの、昨日の被害を確かめにいくんですよね?ついていっていいですか?」
「…いいけど」
勝好は炎熱を無力化する白狼を呼び出す。
全身から象牙の様な突起を生やした巨体に亮典はたじろぐが、道隆に誘われて背中に飛び乗る。
戦闘向きの異能者ではないとはいえ、3~4mは一跳びで越せる。2人は巨狼の突起を握りしめながら、バリケード内をみて回る。
ミミズ頭の魔鳥を哨戒にやるが、目立った被害は出ていないらしい。
(我が伝えたとおりだったろうが?)
飛蝗頭の皮肉が、頭の中に響く。
そうは言っても、人伝に聞くだけと目で見て確かめるのでは安心度合いが違う。
2人は正午には戻り、道隆は昼食をご馳走になった。
ありがとうございました。