青鬼の箱庭を歩く幽霊(1)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
道隆が結界を敷く平安通コミュニティは、かつての賑わいを取り戻しつつあった。
歩道を無数の歩行者が行き交い、コンビニやスーパーには商品が並ぶ。自動車が走っておらず、また会話も無い為に静かだが、電気やガス、水道を使用する事が出来た。
その原理は不明。焼失する前の紀里野家の部屋と、ほとんど同じ現象が起きている。
歩行者に顔は無い。黒い人型のシルエットが、人間のように立ち働き、そしていくつかの家に帰る。
「ねぇ、これって食えんの?」
「食べれると思う。前の家でも、こんな感じだった」
「こんな感じ?」
「冷蔵庫とか棚に食べるものが勝手に補充されるんだ」
復活しつつあるコンビニのパンコーナーで、暁は道隆に尋ねる。
店は修繕され、破壊の痕跡はない。レジに人影が静かに立ち、ジュースを収めた冷蔵ケース前に1人、アイスクリームのケース前に1人分のシルエットがいる。
総数は不明だ。他はバックヤードにいるのかもしれない。コンビニに来ているのは、道隆、杏子、暁の3名。亮典は母子の家で、留守番をしている。
「ふーん。とっていいの?」
「いいけど」
「タダで持ってってイイの?」
「儂は良いけど、知らねー」
道隆にはわからない。
以前のケースでは自宅だったので、何食わぬ顔で飲み食いできた。
しかし、こちらは商店。勝手に持ち出したら、黒いシルエット達に攻撃されるかもしれない。
「万引きは駄目よ」
杏子は嗜めるように息子の友人に言う。
自分の――暁の母親はいない――母親に子ども扱いされるのは、暁の心をひどく不快にさせる。
万引きは犯罪だが、この無数の商品の置いておけというのか?
「でも金ないじゃん」
「実験してみるか?」
「実験?」
勝好は人型の魔物を一人呼び出し、商品を万引きさせた。
すると黒い人影がまとわりつき、彼を奥に引っ張る。
人影を引きずるように魔物が移動し、とった商品を戻すと、人影はあっさりちらばってそれぞれの作業に戻る。
一連の様子を、3人は並んで見ていた。
「駄目じゃん」
「いや、まぁ、あちこち探して拾えばいいんじゃない」
「それはそれで問題あると思うけど、まぁ家の電気も使えるようになったし。ありがとう、紀里野さん」
「あー、いえ、それほどでも」
道隆達はコンビニを出て、帰宅。
途中、ゴミを集めている人影が何人も見かけた。指定の場所に置いておけばいいのかな、と杏子は呟く。
牧野家、道隆の新しい住居には既にライフラインが通っており、快適な暮らしが蘇りつつある。
愛知県、いや名古屋市全体と比較すれば猫の額ほどだが、現代人らしい暮らしができる土地。
早苗達の訪問があった頃にはかなり少なくなっていたが、現在はもう化け物を見る事が無くなった。
(そのうち噂になりそう)
他のコミュニティがどのように運営されているか、道隆は知らない。
せいぜい人材派遣コミュの阿久津が、食料を無制限に供給できるらしい、という程度だ。
衣・食・住を供給できる異能者は、それだけで頼りにされる。チヤホヤされるかもしれないが、道隆にとっては心労の種でしかない。
ありがとうございました。