環希、迷宮ボス戦-キマイラ-
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
三叉路に向かってきたドラゴンより背の高い巨人――ヘカトンケイル。
50の頭、100の手は持ち合わせていないが、彼は伝説に違わぬ異形だった。
孔雀の羽根のように数十の腕を生やし、顔の集合である頭部は蜂の巣を思わせる。
彼はキマイラに追いかけられる環希を見つけるや否や、嵐のような拳撃を放った。
緑の楔が反応するも、環希は肉の弾幕を躱しきることが出来なかった。風に吹かれた木の葉のように吹き飛ばされる。
背後の曲がり角に叩きつけられた環希は、すぐさま立ち上がる。
眩暈を覚えるが、我儘を言える状況ではない。右手の通路を脇目もふらず駆けていく。
そしてまた三叉路に出た。左に進むと、また左手に脇道が見えた。
(隠れる場所位ないの!?)
一旦隠れて、体勢を立て直したい。
脇道に入り、道なりに進むと怪物のいない部屋に出た。
怪物がいない間に治療を済ませるべく変身を解くと、左腕の痛みが数倍となって環希を食い荒らす。
変身を解いた少女は、鞄から大須で購入した代替肢を使用する。繋がっていた左手を千切り、傷口に当てると左腕が再生した。
感覚すら元に戻ったが、冷たい汗が止まらない。続けて茶褐色の膏薬を滅茶苦茶に塗りたくる。
膏薬は皮膚に馴染むと、膜のように環希の身体に包んだ。少女の姿が消え、紺青色の異形が出現する。
(こんな事になるなんて…、気が抜けてたな)
環希は夏の異変で、異能者になった者の一人だ。
超人が跋扈し、怪物が文字通り湧いて出る異常な土地に、彼女は強く心惹かれた。
暮らしぶりは厳しいが、街の変化をこの目で見られるなら、耐える事が出来る。
ダンジョン出現の報を聞いた時、一も二も無く探索チームに加わった。
環希の右手に、黒い直剣が出現する。
驚いた彼女は、確かめるように剣を消し、また出現させる。
求めに応じて呼び出せる、ということだろうか?
まもなく、キマイラは2人の空飛ぶ若い女を連れてきた。
金髪の麗しい欧州系の女。年齢は10代後半から20代後半と言った所か。
顔立ちは微妙に異なっているが、格好は同じ。背中から蝙蝠の翼を生やし、首から乳房の上半分と陰部を鱗で覆っている。
他には布一枚に身に着けていない。陰部の鱗は前張りになっており、肉感たっぷりの尻は剥き出しだ。
若い女魔――サキュバスは環希に向かってウインクをするが効果は無い。
獅子頭は喉を鳴らし、様子を窺うように身を沈める。
「聞いてないじゃん」
「女の子にはやっぱ、効果薄いわ~」
「喋――!?」
左のサキュバスは顔を寄せ、こそこそと会話する。
環希が怪物が言葉を発した事に驚く。それが合図になった。
弾かれたように突進してきたキマイラに、環希は右手の剣で斬りかかると同時に、吹雪を視界いっぱいに放つ。
黒刃に籠められた水の力、環希が覚醒した水の異形の力の2つが混じり合い、周囲の温度を急激に下げる。
フロア内が白銀に染まった。
壁や床が凍り付き、徘徊していた怪物達が、キマイラを残して死亡する。
ダンジョンを支配する獅子頭ですら、全身の筋肉に霜が降りるのを抑えられなかった。
環希がブレードと直剣で斬りつけると、魔獣は身体の制御を取り戻したらしい。咆哮を上げて、爪を振りかぶる。
頭に深々と切り傷がついたが、キマイラは意にも介さない。
環希の腕の届かない程度の間合いを維持し、隙と見れば雪崩のように攻めに転じる。
袈裟懸けに振るわれた剣を避け、環希の右肩に噛みつく。牙が突き立つも、骨まで届かず、筋肉の半ばで止まる。
左腕のブレードを持ち上げると、キマイラは頭を振って、環希を投げ飛ばす。
空中で体勢を立て直すと同時に、キマイラの体に雹の嵐を浴びせた。
獅子頭の動きは徐々に鈍くなっている。体温を奪われ、活動力が低下しているのだ。
キマイラは炎を吐いて、環希を迎え撃つ。彼女は地上に落下する間際、直剣を横薙ぎに振るった。
不可視の破壊が、部屋いっぱいに広がる。
頭部に亀裂が走り、キマイラは崩れ落ちる。
地に伏せる姿を見た瞬間、環希の心に安堵が広がった。
距離を保ち、自分と同じ大きさの氷柱を連続で浴びせると、獅子頭は頭を上げて吠えたが、立ち上がることは無かった。
身体から、衣を被せられたような重圧が除けられていく。黒い剣で突いてみるが、キマイラは反応しない。
死んだようだ。いつになったら、自分は帰れるのだろうか?環希は不安を押し殺し、迷宮の奥に進む。
ありがとうございました。