環希、迷宮ボス戦-ドラゴン-
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
壁に背中をつけながら、環希は出ていくべきか思案する。
ドラゴンの頭の動き次第だが、隠れていれば炎をやり過ごせるかもしれない。都合が良すぎるとは思うが、怪物がそこまで念入りにいないかもしれない敵を探すだろうか。
入口から炎の吐息で一方的に攻撃しようとするあたり、こちらを警戒しているのだろう。そこそこの知性を持っているのは間違いなさそうだが。
(倒せるのかな?)
黒い剣、緑色の楔、変身能力……手札はある。
炎が向かってくる中、環希は透明化したまま、変身を行う。
源の変身を見ていた為、戸惑う事なく、環希は紺青色の異形に変化した。
寒色の皮膚を象牙色の外殻で覆った怪人。顔は十字のスリットの入った仮面で覆われている。
白い燐光を発した為、ドラゴンに気取られてしまう。火炎の波濤が部屋いっぱいに広がった。
再び透明化した環希は、炎の壁を突っ切ってドラゴンに迫る。
黒い剣は掌から消えている。緑の楔――と考えた直後、身体に激痛が走った。
臍から細い針金を刺し込まれたみたいだ。穿られているような感覚の中、両腕の肋骨を開く。
ブレードが飛び出すと同時に、臍から翡翠色の金属質が顔を出す。俊敏さを向上させる楔の、取っ手の頭だ。
速力が増す。環希は一呼吸のうちに炎を横切り、刃の切っ先を顎の右関節に突き入れた。
手応えを感じると同時に踏み込み、頭の付け根から首まで斬り裂いていく。しかしドラゴンも黙ってはいない。
頭を滅茶苦茶に振り回し、首まで斬り込んだ環希を壁に叩きつける。強く打ち付けた感覚はあるが、動けない程ではない。
(こういうものなんだ、変身するって)
源が愛用するのも分かる。
安心感に包まれた身体。これに比べたら、普段の自分は石像ののようなものだ。
身体を捻る勢いを使って、両腕のブレードを引き抜く。壁を削って部屋の中に戻った瞬間、炎が掻き消えた。
掃除機で吸われるように熱を消えていき、壁には霜が降り始める。
ドラゴンが部屋に踏み込んできた。
両腕で渦巻く寒気を浴びせるも、効き目は薄い。振るわれたブレードから不可視の斬撃が飛ぶ。
斬撃の波は、ドラゴンが跳び上がって避けた為、通路の壁に着弾。上空から火炎が滝のように落ちてくる。
緑竜は空を迂回して部屋に降下。環希は振り返り、空に向かって跳ぶ。
このまま逃げ出す事もできるが、怪物が集まってくるのは不味い。
袋叩きにされる前に、まだ1匹であるうちに片付けておくべきだ。環希の周囲に、氷柱が出現する。
空中ですれ違った瞬間、環希はドラゴンの背中にしがみつく。右腕のブレードを突き下ろす。
不可視の斬撃が強靭な外皮にヒビを入れ、内臓に深く傷をつける。環希は傷口から寒気を叩き込んだ。
ドラゴンが音を立てて落ちる。黒い剣があった部屋の入り口は巨体によって塞がれた。
通行の邪魔なのだが、鱗の山を足場にすれば、全景が見渡せそうだ。ドラゴンの身体を駆けあがる紺青色の怪人の聴覚に、軽快な足音が飛び込んでくる。
鱗の山を蹴ってすぐ、双頭の魔獣が姿を現した。山羊と雄獅子の頭を持つ獣――環希に知識があれば、キマイラと即座に看破しただろう。
(壁を駆けあがってきたの!?)
投擲された砲丸のような獣を、環希は両腕のブレードで迎え撃つ。
臍から力を注ぐ緑の楔が、彼女の動作速度を2倍、3倍へと高めていく。
小型の嵐となって獅子の身体を斬り刻むが、斬られた端から再生していき、両断するには至らなかった。
キマイラの開かれた顎から、火炎が大河のように放たれる。炎は環希が放つ冷気とぶつかり、水蒸気となって辺りに広がる。
通路の壁を背中に、環希はキマイラと向かい合う。
合成獣はドラゴンの死体を蹴り、環希に飛び掛かった。
右に左に跳び、鋼の爪を紺青色の怪人に叩きつける。躱しきれず、ブレードで受け止めるが腕が痺れる。
大きく吹き飛ばされた環希の左腕に、獅子の牙が突き立てられた。装甲が砕け、獅子の口元から血液が流れ落ちる。
長い呻き声を上げつつ、右のブレードを獅子の目に突き立てると、獅子は顎にかける力を強めた。
ピストンを2往復行ってから、環希は吹雪をお見舞いした。
獅子の顎の力が緩み、左腕を千切るように引き抜く。左腕は肉が痛々しく裂け、骨だけで繋がっているような有様だった。、
引き抜いた直後から再生が始まるが、その速度は鈍い。痛みが強く、心が奮い立たないのだ。
異能者の身体能力は、精神状態に強く影響される。先程の通路を逆に戻る環希目がけて、キマイラは爪を振るう。
ブレードで弾きながら後退するうち、ダンジョンを徘徊する魔物が集まってきた。
ありがとうございました。