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鉄の騎士と復讐の拳(6)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 雅音が起き上がったのは、フローリングの居間。

人の気配は無く、彼女は自分が開けた入口から外に出る。

天使は虹色の光弾を撒きながら、和成に接近。

光弾が降り注ぐ度に路面が、屋根や塀が霧散していく。


 和成は銃撃を続けながら、雅音から離れていく。

瞬きする間に交差点を前後左右に動き続ける。

康一は義手を構え、熱弾を三発続けて連射。


「うおォッ!!」


 コントロールを失ったバイクが横転し、和成は放り出された。

肩や肘を擦り剥くが、精神エネルギーの装甲で護られた肉体は負傷しない。

立ち上がった和成の左右を熱弾が通り過ぎていき、電線が焼き切れる。

頭髪と着衣が熱波により、炎に包まれた。


 2階の風穴から空中に躍り出た雅音は、追い風を受けて加速。

一個の砲弾となって、義手を構えた男を蹴り砕く。

跳び蹴りをもろに食らった康一は、路面に音を立てて埋まった。


――死んだ?


 足を抜こうとした直後、虹の光線が風のように吹き付けた。

飛びずさった雅音の視界で、康一が立ち上がる。

顔の皮膚が切れ、出血しているが、蹴りの勢いにしては傷が軽い。

鉄色の眼球が緑色の女怪を見つめ、口が裂けるような笑いが雅音に向けられる。


「今の効いたよォ――!こんな時じゃなきゃ、じっくり解してから本番に入るのに、なァ?」

「気持ち悪いこと、言うな!」

「おい、助けてくれ!?」


 火に巻かれた人型が懇願する。


「市村!」


 突風によって炎はかき消されるが、焦げた皮膚が痛みを発し、和成は呻く。

康一は雅音目がけて義手を振り回す。躱した彼女の鼻先を風が撫でる。

身を逸らした雅音の身体に衝撃が叩きつけられ、その場からおよそ20m弾き出される。


――ふと、3人は接近してくる数十の妖気に気づいた。


 路地や崩れたビルから、体高50㎝ほどの巨大ネズミが30匹ほど飛び出してきた。

雅音は風の刃をばら撒いて切り刻み、康一も右腕の鉄塊でネズミを血飛沫に変える。

和成も両目が不自由な中、滅多矢鱈に乱射して応戦する。

鉄塊の乱舞を潜り抜けた1体が、康一の足首に噛みついた。


「痛ってェな!!じゃれてくんな!!」


 足首のネズミを殴り飛ばす。

肘に当たる部分の装甲を展開し、熱弾の発射口とは別の箇所から小指大の物体の列が姿を現す。

マイクロロケット弾が火を吹き、雅音達とネズミの群れに突撃する。

再び火に巻かれた和成は無いに等しい視界の中、無我夢中で走り始めた。


 ギャング共は公園に向かっただろうか?

あまり時間をかけると、鬱陶しい連中が増えるが、面倒見てやる義理は無い。

向こうが頭を下げたからトップに座っただけ。勝利したから、彼らを扱き使っている。


「離せ!死にかけ!」


 雅音の身体を、虹の天使が掴む。

和成の放った銃弾を数百発も受けた天使の外皮はひび割れ、動きも心なしか鈍い。

彼女がトドメを刺すよりも、虹色の輝きが放たれる方が早かった。

すりおろされる様な痛みに襲われながら、雅音は七色の世界に追い出された。


――異能者の気配が十以上、こちらに近づいてくる。


 康一は平和公園に向かって、走り始める。

途中、通りに面したマンションに熱弾を乱射。

隠れているであろう、近隣住民に光の砲弾をお見舞いする。

窓ガラスが溶け、外階段が焼き菓子のように崩れ落ちた。

火のついた街路樹の間を、康一は走り抜ける。


 猫洞通1交差点に達した時、頬のこけた男が走り込んできた。

気配感知によって察していた康一は体を回転させ、右腕の鉄塊を振るう。

男はかなりの速度で走っており、康一が視界を向けた時、既に腕が触れそうなほど近かった。

彼は義手の一撃を捌くと、康一の懐へ滑るように入った。

強い衝撃が腕を走り、男の皮膚や眼球にヒビが入る。傷ついた男は構わず踏み込み、正拳突きを前方に見舞った。


 初撃を躱された康一は余勢をかって、鉄柱を男へ振り下ろす。

男の拳が康一の腹部にめり込む。それと同時に路面に薙ぎ倒される。

衝撃がアスファルトを震わせ、叩きつけた鉄塊の下から亀裂が広がる。


「う、ゴホォッ…!」


 攻撃を食らっていない筈の康一は、突然吐血した。

機械の眼球が弾け、鋼鉄の義手が姿を消す。

皮膚が裂け、赤い液体が噴き出す。手足の骨にヒビが入り、天使は幻となって消失。

康一は足元の血の池に倒れこんだ。弱弱しく震えるさまは、さながら芋虫の様であった。


「う――!」


 正史郎は生きていた。全身から血を流し、腕の骨が複雑に折れているが。

彼は自力で立ち上がると、胸を押さえて血を吐き、膝をつく。

正史郎が得たのは腕に触れた相手の罪に対して、罰を与える能力。

物理的な剛性を無視してダメージを与える事が可能だが、使用の度に肉体的ダメージが入る。

異能によって他者を害する正史郎もまた、罪人であると言わんばかりに。


(この男、レインボーズのメンバーなのだろうが…負傷し過ぎた)


 蹲った正史郎は意識を掴み損ね、その場に倒れこむ。

二人はほとんど重なるようにして、静かに横たわった。


 その後方250m先に、虹色空間から脱出した雅音が姿を現す。

彼女は逡巡の末、平和公園を目指す。その途中で、横たわった正史郎と康一を発見した。


「局長、しっかり!?」


 雅音は変身を解き、蹲る正史郎に駆け寄る。

鍛えられた痩身をそっと支えると、低い男の声が漏れた。

正史郎が話す言葉には血が混じっている。


「平気だ…それより周辺住民の保護を…」

「わかりました!皆のところまで運びますから、喋らないで下さい!」


 正史郎を抱えた雅音は、駅前に向かって駆けていく。

和成の事も気がかりだったが、腕の中の重傷者が先だろう。

既に周囲には120名の局員が展開、被害者の救出と暴徒鎮圧にあたっている。

散開していた局員は正史郎に気づくと、応援の医師達を呼び、二人を彼らの元まで移送していった。







 数日後。

中警察署を改装したビルディング。

その一室で自警団――正式には治安維持局のメンバーが寄せられた被害報告に目を通していた。

ここもまた名古屋市内では珍しい、電気が通っている施設である。

ただし他所から引いているのではなく、自家発電設備が動いているのだ。


「ねぇ」

「何でしょう?」


 雅音は隣で作業している女に話しかけた。


「アイツ、殺しとかなくていいのかな?」

「物騒な事を言いますね、矢上さん」


 アイツ、とは康一の事である。

彼は本山で倒れた後、維持局が管理する留置場に放り込まれた。

正史郎の意向により、傷は手当されている。


「局長に逆らうつもりですか?」

「そういう訳でもないけど。生かしといても更生なんかしないよ、多分」


 女は怜悧な微笑を浮かべながら、雅音の顔を眺めた。


「皆が皆、局長の判断を鵜呑みにするばかりでないと知り、私、安心しました」

「失礼なこと言うね。納得してない人の方が多いと思うよ、正直」

「そうでしたか。私、心の機微に疎い物ですから」


 女は淡々と謙った後、顔に自信を浮かべていった。


「彼の方で動きがあった際は私の軍隊が知らせますので、矢上さんが四六時中気を揉む必要はありませんよ」

「ふーん…って軍隊?私、貴方の能力って聞いたことないんだけど、ひょっとして召喚系?」

「そんな所です」


 女は静かに笑うと、書類に視線を戻した。


ありがとうございました。

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