白い翼の急襲作戦(4)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
白い火球が炸裂し、神宮前は火の海になる。
膨らませた風船が弾けるように爆発がそこらじゅうで起こった。神宮前駅が融解し、倒壊していく。
巨人が踏み歩いたように建物が潰れ、通りが陥没する。破壊と同時に火炎が生まれ、熱田の空が赤く染まった。
異能者の身体を膜のように包む精神エネルギーを嘲笑するように、涼葉の肌に水ぶくれが生まれる。
ドラゴンに連れられ、2人の異能者は去った。
崩壊した神宮前コミュニティに残されたのは、天使の軍団と逃げ遅れたミュータント。
騎士達は炎の壁の中を走る異形を追いかける。サイの特徴を持つ男の背中が剣で真っ二つにされ、ハエトリグサのような顔の子供が焼き尽くされた。
とはいえ、ミュータントも逃げ回るだけではない。抵抗を試みる一団も存在し、彼らは溶解液や爪、刃の連なったような尾を武器に数体の騎士を倒す。
倒された騎士が5体を数えた頃、ミュータントの身体に蒼炎が巻き付く。
細長い炎で絡め取られた怪人は、天高く持ち上げられると、滅多矢鱈に地面へ叩きつけられる。
身体は二度叩きつけられた時点で、ビスケットのように砕け散った。炎は砕けたからだから離れると、青い甲冑の青年の手元に戻る。
三対の翼を持ち、炎の鞭を持つ「火のカマニディール」。神宮前急襲の指揮官だ。
天使の軍団は燃え上がる街の中をうろつく。
その中で唯一、炎の影響を受けなかったのは、熱田神宮のみ。
カマニディールは敷地内に、逃げ込んだミュータントがいる事を感じ取っていた。
蒼炎の波濤は林や社殿を呑み込む前に掻き消える。炎が通じないと見るや、騎士達は次々と内部に侵入。
ミュータントを探す彼らは境内ではなく、鬱蒼とした森に招かれた。
集落外に出ていたミュータントは、地下に潜った。
彼らは拠点を失った不運を嘆き、口さがない者は千晃達の不甲斐無さをあげつらう。
しかし、彼らの間に深刻な雰囲気は広がっていない。不満を垂れていても状況は好転しない、という認識しているからだ。
★
「……」
「いつまでも顔を伏せている?別の塒を探さねばならないというのに」
「……そんなこと言われても」
涼葉は誰に聞かせるでもなく、溜息を吐いた。
一夜にして数か月暮らしていた街と住人を失ったのだ、簡単に気持ちを切り替える事など出来ない。
ドラゴンもそのあたりの事情は承知しているが、天使達が追撃してくるかもしれないのだ。
「涼葉、外に知り合いはいないのか?」
「え、えぇと、いない。外に出た事ないから、わかんない」
「人のいる場所に降りるか」
涼葉は街の状況をほとんど知らなかった。
コミュニティの運営は千晃にまかせていたのだ。
巨大生物が暴れただの、ダンジョンが出現しただの、重大事はミュータントの噂話を耳にして知っていたが、話の大部分は聞き流していた。
ドラゴンは中日ビル前の交差点に降り立つ。
涼葉達の気配を感知して、周囲の建物の窓に近隣住民が現れる。
彼らの一部はガラス越しに、あるいは窓枠から目だけを覗かせ、勇ましい者はドラゴンを狩りに外に出た。
変身し、あるいは武器を持って距離を縮めてくる異能者の群れを見て、悲鳴を上げた。
「待って!助けて!」
「どうする?」
衝突が始まろうとする寸前、中日ビルから2人の男が現れる。
中背の涼やかな短髪に黒縁眼鏡の青年。その隣を歩くのは、上背のある厳つい顔つきの男。
彼らは中日ビルに入っている施設の主催者だ。
交差点に巨大な気配が現れるのを感じ取り、急速に集まってくる数十の異能者。
「ストップ、ストップ!どうしました!?」
眼鏡の青年が両腕を振って、異能者の囲いを割って涼葉に近づく。
切羽詰まったような声を出す、どこか頼りなげな雰囲気の持ち主。
阿久津俊祐。人材派遣コミュニティの主催者。
異変発生直後から避難者を保護するために行動、食料を作り出す能力を使って多数の市民の命を繋いだ。
その後も数名の異能者とチームで動き、9月にコミュニティを発足した街の有名人である。
ありがとうございました。