白い翼の急襲作戦(3)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
漆黒の空に、満天の星。
電気供給に著しい問題が起き、不夜城であることを止めた今の名古屋でしか、見られない光景だ。
空にかかる星の煌めきを、無数の人影が覆い尽くしていた。影は翼を持ち――天使の群れだ。
鎧兜に身を包んだ、二対の翼を持つ騎士が、高度数百メートルからパラシュート無しで降りてくる。
千晃が見ている前で、騎士たちは次々と落下していく。
クッションがあるかのように柔らかな着地を披露すると、天使達は己に課された職務を遂行するべく行動を開始した。
熱田コミュニティで暮らす全住民の抹殺。マンションに押し入り、双頭のカタツムリを思わせるミュータントを斬り倒す。
6体で陣形を組み、青白い炎を放つ。6つの火箭が絡み合い、炎の龍と化す。夜空が白っぽく照らされた直後、瞬く間に団地が蒸発した。
巨大な火球が生まれた時点で、千晃が見当識を取り戻した。
体表から細い稲妻を発しながら、黄金の天使は降り注ぐ騎士の群れに突撃していく。
明滅するように騎士の傍らに現れると、長槍を力強く叩きつける。騎士が剣を一振りする度に、千晃は数百の天使を殺害。
建物内に入り込んだ者もいた為、全てではないが、千晃は1分足らずで軍勢の大部分を殲滅する。
黄金の天使が動きを止めた瞬間、何かが彼を拘束した。
驚くと同時に、彼は青白い炎に巻かれる。千晃の身体に蛇のようなものに巻き付いており――鞭だ。
鞭を包む青白い炎が、黄金の天使の皮膚を焦がし、筋肉を破壊していく。
辛うじて変身は保っていたが、それも間もなく消える――前に、真紅の翼が空中で静止する千晃のもとに飛来する。
涼葉のドラゴンだ。紅竜は千晃を顎の中に放り込むと、向きを変えて上昇を開始した。
「千晃君!?ちあっ、なんで食べたの!?」
「食べてなどおらんわ、戯け!」
「本当?病院?」
涼葉は千晃が口の中に放り込まれた場面を見て、いたくショックを受けた。
彼女に詰られたドラゴンが、面倒臭そうに返事をする。千晃は口腔の中、歯と舌の間で蹲っている。
救出する瞬間の姿、舌先が伝えてくる生命力から見て、無事とは言えない。巨竜自身、青白い炎で皮膚や歯を焦がされた。
変身した異能者にこれだけの深手を負わせるなど、今まで見てきた天使ではあり得ない。
「涼葉、気配は感じないか?」
「えぇ、天使の事?」
「それではない。もっと強大なものだ」
「うぅん、何も」
ドラゴンの背筋が、俄かに凍り付いた。
気配の感知ではない。野生動物として、涼葉の守護者として与えられた危機回避能力が、最大の警報を鳴らしている。
後方から自分を包み込むように、不可視の大海嘯が迫っているのを感じた。
「涼葉、しがみついていろ!」
ドラゴンは鋭い語気で言うと、翼を大きく羽ばたかせた。
風を打ち、一気に前進する竜の上空で、無数の白い蛍火が生まれる。
蛍火は徐々に大きくなる――落下しているのだ。空中に無数の火球が何者かによって投げられ、それがいま地上に迫りつつあるのだ。
仰ぎ見た涼葉は言葉を失い、彼女と接続しているドラゴンにもおおよその察しはついた。
「このまま振り切るぞ!振り落とされるな!」
「それ…、ミュータントの人達は?」
「我の知った事か!貴様の生存が最優先だ!」
絶望したように声を震わせた涼葉に、ドラゴンは怒鳴る。
彼らには気の毒だが、こちらにもミュータントの面倒を見る余裕はない。
紅竜の視界にも白い火球の雨が映る。完全回避は諦め、致命傷だけは被らないよう祈りつつ飛行を続ける。
火の雨は見渡す限りに広がっているのではない。面攻撃の切れ目を越えれば、涼葉の安全は見込めそうだ。
「そんな!?」
涼葉は悲鳴を上げた。
見捨てられるミュータント達が気の毒なのもあるが、千晃の受けるショックを思い、彼女は声を震わせる。
煩悶する涼葉の先手を塞ぐように、ドラゴンは言った。
(飛び降りて助けに行こうなどと思うなよ。千晃がこれだけの傷を負ったのだ。貴様など一たまりも無い)
(でも……)
(自惚れるな、たまたま異能者になったの分際で)
ありがとうございました。