伽藍洞の街(2)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
道隆は居並ぶ顔を見回してから、夜色の怪人に変身した。
意図を計りかねた群衆の中から、悲鳴が上がる。道隆は彼らに説明することなく、大規模テレポートを行った。
以前、浜松市で大暴れした事もあり、顔を見られたくないのだ。
(こっちは見られたけど、たしか)
移動先は、静岡県の新所原駅。
夏の異変で東海道本線が寸断されて大打撃を受けたが、天竜浜名湖線の終点としてまだ機能している。
四六時中展開し、愛知県への侵入を制限する自衛隊の姿が、避難民の視界に移った。
監視中の部隊は、突如出現した2万人強の群衆に慄いた。差し向けられた装甲車を見て、道隆はさっさと姿を消す。
彼らに関わる気は無い。代表として押し出されるのも、戦闘に陥るのも御免だ。
帰ってきた夜色の魔人に、亮典達は駆け寄る。
3人は、道隆を必要とあらば殺人も辞さないタイプと見ていた。
道隆が現れた瞬間、男を投げてきたこともあって、大量殺戮が始まるものと思っていたのだ。
変身を解いた暁から降り、牧野親子はおずおずと口を開いた。
「あの人たちは?」
「封鎖の側に置いてきた。自衛隊が出てきたし、すぐに保護されるだろ」
変身を解きつつ、彼は答える。
「パニくって話なんてできないでしょ?」
「知らねーよ。あれだけ数いるんだから、それくらい自分達でやれ」
話を打ち切ると、道隆は交差点を見回した。
道隆達4人以外誰の姿もない。自分達しか残っていないのか、気にはなったが確かめるのも面倒だ。
同じ町に住んでいても、存在を把握している必要はない――向こうが干渉してこない限り。
「これからどうすんの?紀里野さん」
「ん、あぁ……結界で囲うかな」
「結界?」
道隆は再び夜色の魔人に変化した。
数歩進んでから、道隆は自身の異能――変身態について明かした。
区切られた空間を自らのエネルギーで満たし、指定した法則で動かす能力。
「嘘くせー、なんだそれ」
「でも、本当なら安全な拠点が作れるよ?手伝いましょうか」
「いや、別にいいよ。基本座ってるだけだし」
道隆は暁達を置いて、天高く跳びあがった。
北区一帯を、交差点上空から見渡して境界線を探す。
やや思案してから、道隆は平安通駅からおよそ400mを区切る事にした。
東は平安通駅から、法徳寺。北は御成通3、南は布団屋と本屋の間。西は志賀本通の1番出口手前のあたりまで。
夜色の怪物は適当な位置まで飛ぶと、杭を出現させた。
これを端末として、結界を構成するつもりだ。その意を汲んでか、杭の表面に凹凸が出現する。
道隆は変化に気づく事なく、杭を地中に向かって放つ。これを4か所に仕掛けると、住人のいない民家に隠れる。
道隆は物音のしないリビングに寝転がった。
天板がガラスのローテーブルと、真っ暗な液晶テレビの間で、だらしなく仰向けになる。
その意識内では周囲の状況の探知、指定した範囲の異界化作業が忙しなく行われていく。
――改めて考えると、すごい状況だな。
当たり前のように、異能を受け入れてしまっている。
逃れたかった日常のしがらみ、夢見ていた超人としての自分。
手に入れた力は便利だが、妄想の中ほど軽くは無かった。これから自分はどうなるのか?
日々を過ごす中で、何が起こり、自分は乗り越えていけるのか?
ありがとうございました。