鉄の騎士と復讐の拳(5)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
道隆らが取引現場に奇襲をかけた数日後。
廃棄されたバイクショップ。現在ここはレインボーズが、アジトとして使っていった、
展示場だった広いスペースで罵り合う男達に、サングラスの男が近づく。
暴徒の首魁――梅崎康一は近くにいたギャングに殴りかかる。
たちまち喧嘩になるが、相手は一般人だ。左腕1本でノックアウトできる。
「うるせぇなあ、静かにしろ!」
康一は吼えた。現在、彼は大きな借りを返すことができたため、平素より落ち着いている。
「喧嘩してる暇があンだったら、他所で暴れて来いよ」
康一はカウンターに座り、ぼんやりと天井を仰いだ
屯する男達はリーダーの次のアクションを待つ。
市外にいたメンバーは大量に排除され、別コミュニティとの取引も台無しになった。
彼らとて、追い詰められている自覚はある。
しかし脱退を口に出す者は不思議な事に、これまで一人も出ていない。
「なぁ」
「ハイ!」
5分くらい経ってから、康一は口を開く。
目の合った男が肩を跳ねさせるのを見て、康一は小さく笑った。
「そんな怖がンなよ、なーお前、武器と金と…女と食いモンか、どれが欲しい?」
「は…」
「4択だよ4択。簡単だろぉ?」
「えと、食いモン欲しいです」
「そーか、食いモンか。じゃ―行くぞ」
康一は体を離すと、外に出る。
意識を集中し、異形の天使を出現させた。
下半身と両目を持たない、心臓を外に晒した怪物。
康一が器用に乗っかると、それは二対の大きな翼を広げた。
「あのリーダー、俺らはどこに…?」
「お、そうだそうだ。ワリィワリィ、本山だ。一足先に楽しんでるからよォ、お前らも適当に来い」
それだけ告げて、康一は飛び去って行った。
ギャング達も愛車をスタートさせ、本山を目指した。
細かい場所までは分からないが問題はない。
リーダーが本気で暴れれば、必ず騒ぎになるから、それを目印にすれば必ず辿り着けるはずだ。
現在の名古屋市で、自宅で寝起きできていない者は珍しくない。
家や土地を失った市民も多く、そういった人々は避難先で固まって暮らし、そこにちょっとした街を作っている。
本山もそんなコミュニティの一つだ。
日泰寺と名古屋大学に近いこのエリアは暮らしやすい部類に入る。
平和公園会館には人材派遣ネットが管理する異空間――通称ダンジョンが存在する。
異変後しばらくしてから街の至る所で空間の裂け目が確認され、裂け目の向こうは妖気に満ちた空間が広がっていった。
ダンジョンには管理者の概念が存在し、管理する者の気質に応じて内部の様相は変化する。
平和公園のダンジョンでは一定量の食料や衣料が生産され、決まった数だけ住民に放出される。
材料や製造工程は不明だが、見た目、味、着心地など全て問題なし。住民はコミュニティ代表に深く感謝し、施しを遠慮なく享受した。
――付近を巡回中の治安維持局員3人は、不意に顔を上げた。
「オゥア――ッ!!」
彼らが顔を上げた時、異形の天使が両腕を構えていた。
両腕から放たれた虹色の光弾が、路面が陥没させていく。
降り注いだ光弾が背中を向けた隊員の下半身が霧散させる。
極光の雨から幸いにも逃れた1人が、懐の厚さ5㎜の金属カードに叫ぶ。
本部局員が作った通信装置によって、本山に襲い来る変事に維持局は速やかに対応できた。
付近を通行していた5人組は、虹色の蹂躙を見て、声を失った。
天使を街に近づけ、両足で地面を踏みしめた時、康一は彼らに気づく。
「野次馬かァ?この俺が見納めとは、運がいいな」
天使が七色の光を、濁流のように浴びせる。
5人組は声を上げる間もなく、その場から消え去った。
行き先は犠牲者しか知らぬ。
「これだけじゃねェだろ!?まだいるよなァ!?」
康一が当たり構わず怒鳴り散らす。
「味気ないんだよォ!全員相手してやるぜェ!!」
右手に建っているコンビニが、天使によって破壊される。
腕の一振りで電灯を折り、直進。後ろの店舗から市民を引きずり出す。
その身体をくっと力を込めて、天使は握り潰した。
康一は飛び出してきた武装市民を殺害しながら、猫洞通を進む。
ギャング達を待ちわびるように、遅々とした足取りで通りに面した建物を蹂躙していく。
3丁目を過ぎたあたりでバイカー達が近辺に姿を現すが、彼らは維持局のメンバーに追跡されていた。
公園と応援、どちらが面白いだろうか。
思案する康一の元に、二人の異能者が到着した。
少女――矢上雅音の姿が変わる。
白い燐光の中から現れたのは、鳥を模倣した風の精。
黒いボトムから突き出る緑の上半身を、鋼の軽鎧で包んでいる。
素肌に直接纏う胸甲は中心が大きく開かれ、少々際どい。両腕の小手には、翠色の風を帯びている。
和成も己の異能を出現させる。
傍らに出現したのはモスグリーンで塗装された、オンロード仕様のバイク。
フューエルタンクを覆う装甲が左右に迫り出し、ヘッドライトが不吉に赤く輝く。
和成は慣れた手つきで、シートに腰を下ろした。
「緊張してんな?優しくリードしてやっから、力抜け――」
雅音は風の刃を無言で放つ。その後ろに張り付くのは和成が駆る二輪。
和成は手に大型の回転式拳銃を出現させ、康一に銃口を向ける。
銃身から二百近い数の弾丸が打ち出されるが、控えていた天使が盾になったことで康一が負傷する事は無かった。
雅音は一気に距離を詰め、天使を跳び越す。
そこで見たのは鉄の塊。バイクを思わせる巨大な義手を装着した康一の姿。
重機アームのミニチュアが、小枝のように振り回される。
雅音は身体を離すが、義手から漏れる精神力が波動となって空間を震わせ、彼女に襲い掛かる。
殴られた彼女は右手のマンションのベランダを崩し、錐もみしながら2階に割って入った。
「カッカッ、ちゃんと食ってるかァ!?警察ごっこ!!」
和成は天使の体当たりを避けるべく、急速後退。
彼の愛車は時速1000㎞を軽々と超える。暴力的な速度でタイヤが唸り、銃弾を天使に吐き出す。
銃身は時に蛇のように捻じれ、弾の軌道を自由に曲げる。
虹色の雨の隙間を、和成はすり抜けていく。
ありがとうございました。