鉄の騎士と復讐の拳(4)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
午前1時過ぎになると、名古屋市は多くの地域が真っ暗になる。
市役所や浄水場などの重要施設を除くと、電気が通っていないのだ。
一般世帯の場合、自家発電を行っているのでなければ、昔ながらのランプや蝋燭を照明にするしかない。
海沿いに建つ倉庫内。
本来あるべき荷物の山はなく、中はがらんとしている。
倉庫の中では今、二つの集団が合計30近い顔を突き合わせている。
片方は気品を感じさせないスーツ姿の男達、もう片方は見るからに攻撃的な革ジャンの男達。
見張りが四方に顔を向けており、倉庫内に侵入者が隠れる場所はない。
道隆達は取引場所から1kmほど離れた物陰で待機。
異能者の存在を警戒しているが、相手は気づいた様子はない。
彼らのそばで体を揺らしているのは、「遠隔視の魔物」。
四角い木枠を両手で持ち、顔を近づけている姿は窃視中の男性を思わせる。
早苗の黒い騎士が、魔物が見ている映像を壁に投射している。
「準備はいい?」
夏姫を除く3人が頷く。
全員、手袋を嵌め、大きめの鞄を用意していた。
圭は乗り気で無かったので、早苗の家で留守番している。
「じゃあ、テレポートするから。皆気を付けて」
4人の姿が、物陰から消える。
瞬きよりも早く、彼らは取引真っ最中の倉庫に移動した。
倉庫内に立っていた男達は呆気にとられた。
見慣れない男女が音も無く現れ、見張りもしばしの間、声を失っていた。
「誰だお前ら!?」
スーツ姿の男を無視して、早苗が3人の前に進み出る。
「ドラマや小説でしか見たことなかったけど、本当にこういう場所で取引するのね…」
早苗の後ろに立つ3人は身構え、道隆は甲冑を纏った剣士を召喚する。
金属製の小さな板を縦横に繋いだ鎧は、古墳時代の挂甲に似ている。
剣士は幅広の直剣を正眼に構えたが、つい先刻まで取引していた男達は気づいていない。
「ど、どうする?」
「女に傷はつけるな。男…ガキの方は残せ」
「異能者じゃないのか?」
「撃てば死ぬだろ?」
男たちの囁きは、道隆達にも聞こえていた。
物騒な内容だが、却って安心を呼び起こす。
彼らの中に異能者はいない。超常の気配がしない事からも、それは明らかだ。
男達が銃やナイフを取り出し、じりじりと動き始めた。
「フッ」
早苗が男達を嘲笑った。彼らの視線が集中する。
「ウッ――!?」
「ご…」
「がっぐぼォッ…!?」
男達が一斉に苦悶の表情を浮かべて、崩れ落ちる。
掌からナイフや拳銃が滑り落ちる。
指の震えは瞬く間に収まり、呻き声もじきに止んだ。
「…何してるの?早く調べて」
早苗が硬直している道隆と浩紀を見咎める。
彼女は足早に歩き、死体から荷物をひったくる。
夏姫は慣れているのか、グローブを嵌めた手で拳銃を検めている。
「な、なぁボス?今何やったんだよ…」
「今見たとおりだけど?」
「ちがうって!どんな能力」
「……」
早苗が刺すような視線を、浩紀に向ける。
浩紀は怯えたように黙り込んだ。
早苗が顔を逸らすと、ラバー軍手を嵌めた手で札を手に取り、眺めていた道隆に近づく。
「なぁー、怖いよ~あの人…。何やったか分かった?」
「ん、いや。…ただ、貴嶋さんとは、事を構えない方が良さそうだな」
「まーな、いきなり死んだもんなー」
隣で拳銃を眺める浩紀は、話題を変えた。
「スーツの連中は知らないけど、こっちの革ジャンってレインボーズだよな?」
「また?」
「また?」
浩紀がオウム返しにする。
「前に市外で会った」
「へぇー、戦ったの?」
「仕事でな」
道隆は鞄を検めている途中、倉庫内にキャラメル色の自動車を出現させた。
ドアを開け、後部座席に入手した道具を放り込む。
「私たちの分もいれていい?」
「どうぞ」
道隆が許可すると、3人も目ぼしい荷物を車内に押し込んだ。
20分ほどで探索を終え、道隆はクラシックカーを精神世界に引っ込める。
早苗が号令を掛けると4人は集まり、夏姫のテレポートで倉庫から脱出した。
移動先は、何処かに建つマンションの屋上。
夏姫は人目のある場所に現れるリスクを避ける為、移動先に使えそうな場所の目星を幾つもつけているのだ。
早苗宅、道隆宅、浩紀宅、いずれの場所に飛ぶわけにもいかず、このような手段をとった。
「じゃ、山分けしよっか」
戦利品の数はかなり多い。
刀が4本、ナイフが2本、小太刀が1本、ナックルダスターが1組。
ショットガンが2丁、自動式拳銃が6丁、弾丸が詰まったケースが20箱。
武装以外にもプラスチックパック入りの錠剤、救急箱、小瓶入りの水、触ると冷たい石、図柄の描かれた札。
人目を気にしつつ4人は相談をする。
早苗は日本刀を手に取り、夏姫は武器以外の道具を調べている。黒い騎士が本を展開し、内容を解析する。
錠剤は霊的な力を回復する薬、救急箱は既存のそれより効果が高い、水は服用することで精神を安定させる、冷たい石は強い衝撃を与えると寒気を放出する、札は対応する攻撃への抵抗力を向上させる事が分かった。
戦利品は全て超常の気配を放っており、一般的なルートで手に入れた品ではないのだろう。
(霊的な力…て何?)
全員が内心、疑問を抱いた。
霊的な力、自分達に関係あるのだろうか?能力を使用することで、消耗を感じたことは無い。
それもそのはず。彼らの世界において、魔法や魔術の類は物理的な影響力を持たない。
異能者達が得た能力は、幾ら使っても何も消費することがない。
もちろん制御する際は緊張するし、召喚物が破壊されれば修復されるまで使用が制限されるが、それだけだ。
「もしいらないなら、儂がもらってもいいか?」
「私はいらない」
「俺もいらねー」
「じゃあ、これは紀里野さんに」
道隆が霊力回復剤を受け取る。救急箱と水は早苗達の手に渡った。
30枚ある札は7枚ずつ、余り2枚は道隆と夏姫が辞退した為、浩紀と早苗が受け取った。
武器を選ぶ段に入り、道隆はナックルダスターを選んだ。
「他はいらない。みんなで分けていいよ」
「マジで!?」
「本当にいいの?拳銃とかナイフとか、かさばらない物もあるけど…」
夏姫が尋ねるが、道隆は首を横に振る。
3人もそれ以上は何も言わず、各自気になる武器を選び始める。
道隆は金属の指輪が解けてくっついた様なそれを弄びながら、3人のやり取りを静かに見守った。
(お前何なんだろうな?)
特異な効果でもあるのか?
異能者の使用に耐え得るほどの強度があるのか?
使用に耐えないなら、売るか観賞用にしよう。
目新しい物に触れる事ができたし、儲けも出た。
道隆は今夜の襲撃に満足していた。
ありがとうございました。