水底の迷宮(2)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
遭遇した5体を倒した道隆は、広間まで進んだ。
球形の空間は床が通路と比べて窪んでおり、危うく転びそうになる。
足を踏み入れた瞬間、道隆の動きが止まる。動かない右足は、コンクリートに埋まったみたいだ。
かといって倒れ込む事も無い。硝子に閉じ込められた道隆の視界に、動くものがある。
襤褸切れを纏った老婆だ。
等間隔に並ぶ柱の陰から、こちらを覗き見つつ近づいてくる。
老婆の腕は長い。彼女は掌に雷球を握っており、それを立て続けに投げた。
雷球は道隆の体表で弾けるが、指で掻いているような僅かな痺れしか感じない。
(考える事は出来る。なら余裕だな)
老婆の頭上に、柱のような杭が出現する。
杭は瞬き程の間に地中に深々と刺さり、老婆の身体が風船のように弾けた。
立ち並ぶ柱が砕け、瓦礫が浴びせられたが、頑健な肉体に傷はつかない。
体液が飛び散ると同時に、道隆の拘束が解ける。
瓦礫を踏み越え、道隆は部屋の奥に進む。
道は緩やかな坂になっており、まもなく足元から水が引く。
通路が左右に伸びている。感知を行うと、左に気配が一つ。
右に進んですぐ、右手の壁が姿を消した。
崖になっており、縁から下段の地面が見えている。
降り立ったそこは、四方数百mはあるか?
周囲の物音に気を張りつつ、道隆は奥に進んでいく。
6~7分ほど進むと、岩肌に大きな扉を発見する。
抱き柱には猪と人間を混ぜた生物の装飾が施されている。
扉には取っ手が無く、道隆は指を突き込んでこじ開けた。
中にあったのは牢と貯水槽、そして大きめの作業台。
牢には老若男女問わず20名ほどが、ぼろ布を着せられたまま閉じ込められている。
酸っぱい臭いを放っており、風呂に入っていない――今の名古屋で、毎日入浴できる人間は少ない――事が伺える。
しかし食事はとっているようだ。肌は色つやが良く、手足には肉がしっかりついている。
一様にふくよかなのは、運動していないからだろう。
悲鳴を無視して、道隆は貯水槽に歩み寄る。
容器を満たすのは、濃赤色の液体。
作業台の側の壁にかかっていた大きなスプーンを取り、掬ってみた。
液体は油のようにドロッとしている。引き上げたスプーンの中には具のような固形物が浮かんでいる。
牢に視線を戻すと、金属製の皿が放り出されている。皿や囚人の口元には、赤いものがこびりついている。
(飯か…、こいつらの)
囁き声を無視して、作業台を漁る。
金目の物は見当たらず、隣の棚に雑然と置かれた道具には赤黒い汚れ。
S字のフックや握りのついたピックを手にとるがすぐに飽き、いよいよ牢の調査に移る。
鳥籠を思わせる牢は部屋に2つ、そのいずれにも人が入っていた。
彼らは寒色の異形が近づくと、顔面蒼白になって後退る。
道隆は牢の鍵を破壊し、部屋を出た。
流石に一度ならず視線が交わった相手、特に恨みの無い初対面を見捨てるのは脳に毒だ。
だが囚人たちと会話する気は無い。彼らの非難も感謝の言葉も聞く気はない。
来た道を戻り、広間に戻った道隆の知覚に、妖気が一つ近づいてくる。
ありがとうございました。