中級天使(2)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
舞い降りたのは、5体の人型。
彼らの全身を包む純白の西洋甲冑は、見るからに鳥の翼をモチーフにしていた。
兜には放射するエネルギーを象った黄金の装飾。
右手に両刃の剣を握り、左手に円形の盾を掲げている。
「天使だ――!」
叫ぶ男の首が、胴体から離れる。
騎士達は風のように異能者の元に迫り、襲い掛かった。
反応できたのは車輪の持ち主と、道隆のみ。
拳打と衝撃波が甲冑に腹に穴を開けると、赤い液体が右腿を伝ってアスファルトに落ちていく。
二段目を繰り出そうとした瞬間、天使が青白い炎を放った。
(あっ、糞!怪我したー!)
全身を炙られた道隆は、炎を払うように変身する。
オレンジの複眼で天使を見据え、青い拳で鎧を貫く。
炎がすぐさま怪人を包むが、ほぼ同時に再生が始まる。瞬く間に傷が塞がり、痛みは幻のように消えた。
変身した道隆の打撃は凄まじく、一撃で胴体が鎧ごと真っ二つにされる。
車輪の男も、死んでたまるかとばかりに応戦する。
彼は内側の握りを掴んで得物をぶん回し、天使に叩きつける。
横から3体目の天使が剣を振り下ろすが、回転する男に弾かれてしまう。
強盗の生き残りは口を大きく開け、赤黒い煙を吐いた。
煙は瞬く間に広がり、周囲およそ60mは覆い隠される。
道隆は固まった血液を思わせる気体が視界に入ると同時に、弾丸のような速度で離脱。
一般的な異能者と比較して、その走力は10倍強。
取り残された車輪の男は道隆を追いかけるが、まもなく見失った事を悟り、廃墟めいた街の中に消えた。
道隆は結界守のバッタ頭の助けを借り、空間を移動する。中日ビルの端末に向かい、掲示中の依頼を探す。
(ダンジョンばっか…、流行ってるなぁ)
スクロールすると、依頼の見出しが次々と流れていく。
そのうちの半分以上が、ダンジョン関連だ。
物資の調達、探索チームの募集……げんなりとしてくるが、それを堪えて検索を続ける。
しばしの後、道隆は一個の依頼を受諾して、ビルを後にした。
20分程かけて、道隆は星ケ丘の百貨店・四越前にやってきた。
此処は現在、魔物――鳥と鹿のキメラの群れに占拠されている。
9日前、内部で暮らしていた市民に犠牲者が出て、討伐隊が結成された。
一度大規模な掃討が行われたのだが、24時間後に再出現が確認される。
しかし、ある性質が明らかになった事で、この施設は捨て置かれる事になった。
死体が残るのだ。
その肉は透き通るように白く、さっぱりとした味。やや筋っぽい為、噛み切りにくい事をだけが難点だ。
この合成獣――ペリュトンと名付けられた怪物が襲うのは一人だけ。倒すと消滅する怪物達ほど、攻撃的ではない。
健康被害が報告されなかった事で、彼らは近隣住民の狩猟対象になった。
とはいえ攻撃されればやり返す。異能者2名を蹴散らすほどの身体能力に加え、8体前後で行動する為、狩猟者が中々集まらないのだ。
道隆は、ペリュドンについてある程度の知識があった。
人間一人を殺す事で、影を奪う幻獣。その程度の知識しか得られなかった。
即死技は持っていないと思うが、断言はできない。
道隆は半信半疑でロビーに入る。
商品の殆どが持ち去られた店舗は、まさしく抜け殻そのもの。
往時の繁栄に思いを馳せつつ、道隆は気配を発する地下に向かう。
動かないエスカレーターを降りると、かつての食品エリア。
多くの人で賑わった空間は今、ペリュドンの巣となっていた。
エスカレーター前の十字路で、道隆は青い羽毛で覆われた小さな鹿2匹と遭遇。
小鹿は降りてきた人間を見ると、一目散にフロアの奥へ逃走する。
その直後、道隆の周囲に気配が集まってきた。耳まで届く地響きに、思わず身が固くなる。
やがて、エスカレーター前に合成獣が雪崩を打って押し寄せた。
道隆は変身を行う。白い燐光が弾け、夜色の魔人が出現する。
(杭は使えない)
肉を持って帰らなければならない為、建物ごと吹き飛ばす事は出来ない。
道隆は精神世界から、魔物を呼び出した。
カラスの頭と翼を持ち、ダブルのコートに身を包んだ16名の人型。
彼らに狩った獣肉の処理を行わせるのだ。
都会で生まれ育ち、山に入る事もしない道隆にはハンティングの知識や経験が無く、最初の内は上手くいかなかった。
ペリュドンは口笛のような声を上げながら、頭の角を突き出す。
道隆は側面に回り込むと、手刀で首を落とした。蹄が一歩進む度に、2匹前後が狩られていく。
寒色の魔人はエスカレーターで待ち構えるカラス男に肉を投げ渡す。
断面から湧く血液が宙を舞い、昇降口のあたりを赤く汚した。桶の中身をぶちまけたような、嫌悪を催す粗さだ。
カラス部隊は首の無いキメラの死体を、宙づりにしていく。
道隆が鹿を掃討する頃、1Fロビーは血の海になっていた。
彼は内臓の摘出された死体を洗うと、新たに魔物一匹呼び出す。
巨大な変身した道隆と大差ない。体躯のムササビだ。
彼が命じると、怪物は飛膜を大きく広げた。
道隆が念じると、ペリュドンは一斉に宙に持ち上がった。
ムササビは死体の群れを包むと、一個の球体に変化する。
見る見るうちに小さくなり、掌大の大きさになった。
リスに似た頭部だけが、出現時と同じサイズを保っている。
にじが丘の集合住宅に戦利品を届けるまでに、2度検問を通る羽目になった。
幸いトラブルにはならず、道隆は依頼を達成。30000円を受け取って、帰路に就く。
天使の気配を感じた為、南に向かう事にする。
東山公園前から名大の方に非難するつもりだったが、平和公園口で襲撃されてしまった。
盾と剣で武装した、西洋風の鎧戦士が14名。四方から取り囲むように降下するのが嫌らしい。
(殺意高すぎるだろ…、加減しろよ)
道隆は逃亡を優先する。
わざわざ相手にしてやる謂れは無い。
変身して青白い火箭を避け、千種スポーツセンターに逃げ込む。
ロビーに殺到した彼目がけて、火球が次々と放たれていく。
その炎は精神エネルギーの装甲も強靭な外皮も破り、肉と骨を露にする。
苛立った道隆は、杭を連射する。
突き刺さる――というか衝突した天使の身体が弾けると、赤黒い肉と体液が飛び散った。
窓ガラスが弾け、轟音と共に壁が砕ける。
半壊したロビーを、青白い火炎が呑み込んだ。
青白い炎の中、道隆は幽霊のように立つ。
5名の騎士が、炎を意にも介さず、哀れな犠牲者を冥府に旅立たせようと襲い掛かる。
斬りかかる天使の群れを霧となって躱した直後、兜から夜色の腕が勢いよく突き出た。
道隆はセンターの建物の前で固体化。
――異能者の気配が集まる。
この騒ぎを聞きつけたらしい8つの気配。
足を沈めた瞬間、道隆の周囲がひずむ。
空間が捻じれ、逃げ出そうとするも間に合わず、道隆はその場から姿を消す。
近在の住人が現場に到着する頃、あたりには天使の残骸と炎の海、半壊したセンターだけが存在した。
ありがとうございました。