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中級天使(1)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 持ち帰られたダンジョンの情報は、名古屋に無数の探索者を生み出した。

あちこちのコミュニティで調査隊が結成され、異界に送り込まれるが、集落の守りを考えるとあまり規模の大きいチームにはならない。

異能者が少ない程天使の襲撃は少ないが、住人による襲撃の危険が増す。

ダンジョンから持ち変えられた物品や怪物の死体は分析され、必要に応じて解体される。


 しかし、封鎖の外に遊びに行く道隆には関係なかった。

興味はあった。しかし似たような物なら自分で作ることができるし、人間関係のトラブルもあるだろう。

異空の内部で殺害されても、犯人が罰せられる事はあるまい。

無論、下手人の仲間や通行人が咎める事はあるだろうが、それを信用する道隆ではない。

他者と繋がり事で得る利益よりも、一人の平穏を選ぶ。彼はそういう人物。


 県外で買い物を済ませ、キャラメル色の古車で上野に戻った。

空を見上げると、数千の人影が空を覆っていた。

遠くから怒号や爆発音が轟き、あちこちで戦闘が行われているのが分かる。

蝗害を想起させるそれは、お世辞にも快いとは言えない。

巻き込まれる前に帰ろうとした彼の元に、16名の美しい少年のようなものが舞い降りた。


「異能者…」

「外なる神と交わったもの、奇跡を弄ぶもの、これを生かしておいてはならない」


 彼らは青白い炎を纏い、道隆に迫る。

変身した道隆に掴まれた頭部が、水気のある音を立てて爆ぜる。

杭が轟音と共に宙を飛び回り、翼を貫いていく。16名を瞬く間に殺害し、道隆は人目を忍ぶように帰宅する。

戦闘は続いていたが、関わるつもりはない。


 道隆の周囲100mに広がる空白地帯に、天使は降り立たなかった。

異能者一人に構う気は無かったのか、それとも後に回すべきと判断したのか、16名以外に襲撃は無かった。



 上野の集落からハゲタカのように天使達が飛び去った頃、千種のコミュニティは天使の掃討を終えた。

鋭利な両腕から血を滴らせる雅音は、咳き込みながら家路に就く。

彼女は無貌の怪物によって精神を揺さぶられて以降、情緒が不安定になっている。

それに比例して身体が弱くなり、数日前に風邪をひいていた。体調はかなり改善していたが、咳が長引いている。


 自宅が見えた時、新たな気配を知覚する。

天使のそれと似ているが、美少年――雅音は男と見ていた――達よりも冷たい。

彼女は見なかった事にして、玄関扉を潜った。


「雅音、戦ってるみたいだけど行かなくていいの?」


 まもなく始まった戦闘音を聞きつけて、母親が声を掛けてきた。


「いい。私だけじゃないんだから、わざわざ行かなくていい」

「そう…?なら、御飯温めておくわ」


 母親に礼を言って、私室に引っ込んだ。

現在、矢上家は温かい食事を摂れる程度には台所事情が改善されていた。

異変当初は缶詰や固形食糧ばかりだったが、ステンレス製の焚き火台を入手した事で煮炊きができる。

雅音が暮らす集落には、未だに電力が通っていない。



 16体の天使を蹴散らしてから数日後、道隆は栄の中日ビルに向かっていた。

もはや人目を忍ぶ必要を感じなかったため、黒い駿馬に乗っている。

道路を蹴る蹄の音を聞く道隆の知覚に、異能者の気配が侵入した。

4名だ。スピードを速めてしばらくすると、沈んだ真鍮色の車輪が飛来する。

飛び降りる事で道隆は奇襲を回避。馬は軽くなった事で速度を増し、そのまま内的世界に姿を消した。


 空中を通り過ぎた車輪はアスファルトを砕き、再び上昇。

道隆の頭部に迫るも、拳から放たれた波によって撃ち落とされた。

弾いた車輪を無視して、道隆は馬を走らせる。

両者は芸術文化センター交差点で邂逅。道隆の前に編み上げブーツを履いた男が現れる。

取り巻きと思しき3人組も、ビルからビルを伝って近づいてきた。


「荷物出せ。異能者だろ?この人数から逃げれると思うな」


 殺意を腹の底に降ろし、道隆は変身を行う。

白い燐光に包まれた瞬間、空に寺社仏閣を思わせる厳粛な気配が出現する。

貧者に手を差し伸べる清廉さと、確かな年月を重ねた自信が共存したそれに、4名のチンピラも気づいていた。


ありがとうございました。

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