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四者会談――熱田区

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 街に出没する天使の群れは、やがて話題の中心となった。

散発的に現れる怪物とは、行動パターンが明らかに異なっている。

集落の境付近に数百体規模で姿を現し、異能者を優先的に攻撃するその行動パターン。

無差別に攻撃する怪物とは違い、目的を感じる――天使は異能者を殺す。


 各コミュニティの住人達は、不安に囚われた。

異能者を狙って、天使がやってくる。

彼らの庇護を抜け出したなら、徘徊する怪物に殺害される。

また、異能者との協力無しで、物資の入手など不可能。

決断力に富む者は、名古屋からの脱出を始めた。


 異能者の協力は期待できない。

7月に脱出した異能者が調べられた事で、その存在は公にされてしまった。

文明が退行した名古屋だが、異能者が平穏に暮らせるのもここだけだ。

生活の豊かさを取るか、人目を気にせずに済む自由を取るか。

現在、街に残っているの者達は、頃合いを見計らっている人々も含めて後者だ。


 彼らは近在のコミュニティで集まって、合議を重ねた。

尽きる事無く湧いて出る怪物達も問題だが、最優先で解決すべきは天使達だ。

意図をもって集落を襲う彼らを放置しておけば、いずれコミュニティの運営が立ち行かなくなる。

また、精神エネルギーの防御を貫通する白炎も、異能者の心胆を大いに冷やした。


「始めまして、ミュータントの王。同じ卓に着くことができて光栄だよ」

「…よろしくお願いします」


 小柄な女性が、千晃に会釈をする。

ややウェーブかかった髪に広い額、垂れ目。

日比野に居を構える、俵藤奈々(ひょうどうなな)だろう。


「息災そうで何よりです、チアキ君」


 Yシャツ姿の長身が僅かに笑む。

金山に拠点を置く、芳賀紘はがひろしだ。

コミュニティとして交流は無いが、個人的に面識がある。

彼は集落にエネルギー炉を置いており、支配地域に電力を無料で供給している。

千晃も同様の事はできるが、規模が違う。


「初めまして、雨宮さん。噂は度々聞いている。これで全員か?」


 スキンヘッドの中年男――戸神蔵人とがみくらんどが顎をさする。

ここは旧名古屋学院大学の曙館。

教室として使われていた部屋の一つに、近在のコミュニティの異能者の顔役が集まっていた。

千晃は招待されただけで、今回の議題については知らされていない。

拠点防衛などの点を鑑みて、他の住人は連れてきていない。皆一人だ。


「それで、今日は何の用ですか?」

「あぁ、我々は天使への対策について議論していてな――」

「…区内のコミュニティを一つにまとめる、という話ですか?」


 蔵人が目を丸くした。僅かな間だけで、すぐに表情が戻る。


「耳が早いね。スパイでも放っていたのかな?」


 奈々は楽しそうに尋ねた。

千晃が無言でいると、紘が弾んだ声をあげる。


「ま、ま!そのあたりは置いておくとして、個々は大した事ないんだけど、数が増えると馬鹿にならないんだよな。アイツら」




 顔を顰めた紘が言っているのは、天使達の事だ。

強敵とは言い難いが、異能者に対して一定の殺傷力を持つ。

名古屋で手に入る鈍器や刃物が打撲にすら至らない事に比べれば、雲泥の差だ。

怪物にしてもそう。脅威になるのは、知性があるとか巨大だとか、ずば抜けた要素を持つものだ。

異能者の敵は異能者。これまではそうだった。


「うむ。だから集落の行き来を活発にして、天使への対応力を高めたい」

「コミュニティの生産物はどうなるのでしょう?」


 千晃は疑問を口にする。


「俺は今まで通りでいいと思うけど。コミュニティが生産した物は、そのコミュニティに帰する」

「それで足並み揃う?一旦、解体するんだから分配法も考えてさ、区内で回そうよ」

「ずっと続けるわけじゃない。天使どもが落ち着くまで…違うか?」


 紘は蔵人に水を向けた。

自然、3名の視線が彼らに集中する。


「経済的な部分はこれまで通りでいいと、俺は考える。我々は天使の危険性についてのみ、共通の認識を持つ」

「コミュニティ間の勢力争いは容認すると?」


 市内のコミュニティは、その勢力図を稀に変化させる。

集まった者達の方針によって暴力組織と化し、別勢力の異能者の引き抜きや暗殺を狙う不届きな集団も少なくない。

変化が第三者の目に見える頃には、取り返しがつかない程に状況は進んでいるのだ。


「私は君たちのリーダーではないよ。ただ、この同盟が維持されている間は、君達と衝突するのは避けたい」


 潰し合いがしたければ勝手にやれ、と蔵人は言外に示す。


「…じゃあ、天使の始末が着くまでは、お互い不干渉という事で」

「どこかが攻撃を仕掛けたら?」

「他の3つで下手人を叩く――」

「自警団には知らせないのですか?」


 千晃が食い気味に言うと、3名は目線を交わす。


「これは盲点だったね。アイツら、行動範囲は広いから抱き込んでもいいんじゃない?」

「事後承諾でいいだろう。遠くの連中に干渉されても困る」


 4勢力の同盟で決定すると、彼らは実務的な話に移った。

奈々が瞬時の移動を可能とする、転移門の設置を申し出たが、千晃と紘が却下した。

利用者を制限する事はできるが、管理権は彼女のものだ。

不在の間に攻め落とされないとも限らない。


「そうだ!ここに拠点を置くのはどう?異能者を常駐させてさ、入り込んできたら…」

「境界線に人を置けばいいだろう。こんな所に配置しても――異能者なら打って出る事はできるか」


 蔵人は皮肉っぽく言った。しかし、奈々の案に賛同した訳ではないらしい。


「差し当っては、共同で城壁を作るか。チアキ君の所がやっているみたいに」

「お、いいねー!手伝ってくれる?」

「皆さんと相談します。手伝うかどうかは返事次第ですが、協力する場合は、作業場所を分けてください」


 蔵人は重々しく頷く。


「わかった。明日まで待つ。それまでに意見を統一させろ」

「はい」

「…じゃあ、今後は週1くらいで定期連絡するって事で。携帯を使えるのが、こんなありがたいとは!」


 やがて、会談はお開きになった。


ありがとうございました。

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