第3層――苔の縦穴(1)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
数日後、装備を整えてきた周哉達は荒子のダンジョン探索を再開する。
入手した品の数々を売り、その金で食料や寝具を持ち込む。
今回の探索は、泊りがけも視野に入れている。
名古屋への帰還はいつでも出来る。進めるだけ、進めておいた方がいい。
洞窟のような第2層は道が入り組んでおり、また深さの概念が曖昧だ。
どれくらい降りたかは、体感で判断するしかない。
紗莉の蛇に照らされながら歩くうち、足元の岩が湿り始める。
歩く度に水音が立つようになった時、彼らは地底湖に辿り着いた。
行き止まりらしく、他に出入口は見当たらない。
「どうする?帰る?」
「潜るか」
「着替え持ってないけど!」
不満があちこちから漏れると、源は変身を行う。
「これで問題ない。行ってくる」
「じゃあ、待ってるから――」
猪の頭が首を振る。
ここは足場が滑りやすく、戦闘に向くとは思えない。
8名は少し戻り、天然の空き地で源の帰還を待つことにした。
「おーい、稲田さんいる?」
1時間経過し、不安になった周哉は地底湖に呼びかける。
この間、小規模な戦闘が2度起こったが、大きな負傷は無かった。
前回の毒霧など、症状を誘発するものに対する防御物・治療物も携行している。
――テレパシーとか使えない奴ばっかなのは失敗だったな。
周哉が踵を返しかけた時、湖面が波打つ。
聞き取った周哉が足を止めてしばらくすると、厳つい右手が現れた。
まもなく、猪面の怪人が水か上がってくる。
「おぅ、黒岩……だったか」
「元気そうだな、出入口は?」
「あったよ。こう、横っちょに穴が開いててな」
源が変身したまま、右手でUの字を描く。
話し振りから察するに、湖の壁に人が通れるくらいの穴が開いているらしい。
トンネルは途中から上に傾斜しており、そこから奥に進めるようだ。
それを聞いた俊樹ら7名は、複雑な顔をした。
「スキューバかぁ…やった事ないなぁ」
「水着持ってくる?」
「しょうがないんじゃ…」
奈々葉が周哉と源にちらっと視線を向けて、すぐに外した。
眉間に皺が寄っているが、気に障る事をした覚えはない。
彼女は男性陣から離れ、紗莉の隣に場所を移す。
探索班は各々荷物を取りに戻り、再集合は10分強経ってからだった。
「黒岩、着替えないのか?」
「これさー、気合入れたら水弾けないかな?」
「チャレンジャーだね!」
源に尋ねられた周哉は、首を横に振った。
精神の揺らぎは不可視の力となって、体表から放出される。
それによって、異能者の身体能力は状況に応じて変化する。
膨大なエネルギーは着衣に、鎧のような強靭さを付加する事さえある。
「どう?」
「ダメそう」
岩の縁から湖に浸けた足は、ぐっしょりと湿っている。
周哉は大仰に肩を竦めてから、ベルトを外す。
女性陣はちょっと離れた岩陰で、潜水用の衣装に着替える。
覗こうものなら、その場で袋叩きにされるだろう。
子供だろうと老人だろうと、異能者相手に油断してはならない。名古屋人の常識だ。
まもなく、探索班全員が潜水の準備を終えた。
多くはレジャー用のそれでは無く、競泳用の遊びに無いデザインの水着を着ている。
周哉が視線を向けると、奈々葉は表情を歪めて、盛大に舌打ちを行った。
源含む、変身を行える者は変身を行い、衣装を濡らさないようにする。
「頼んだぞ、蟲井」
「焦んなくていいから、割るなよ!」
全員、荷物は俊樹のボトルシップに預けている。
瓶の中は外寸より広く、9名の手荷物程度は余裕で入る。
栓をしっかり締めれば、潜水時でも多くの物品を持ち運べるだろう。
ただ、材質がガラスの為、衝撃に弱い事が不安の種だった。
俊樹の能力によって強度が向上してはいるが、異能者が殴打すれば一発で割れる。
全員が湖に沈む。
潜水が上手くいかない者は、得手なメンバーが手をついてサポートする。
30分以上潜り続ける探索班の前に、横穴が姿を現した。
周哉が源に確認すると、彼は首を縦に振った。
幻像と融合し、再構成された肉体は高い自立性を持ち、水中行動力は周哉達の比ではない。
ありがとうございました。