天使が来る(3)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
天使がダイヤモンドの箱を砕く頃、その場に緑色の甲冑が現れた。
外部装甲に身を包んだ道隆は、天使を目にするや否や、右拳で突きを繰り出す。
空間が歪み、見えない衝撃が胸を衝く。突きを受けた1体は顔を顰め、胸を抑える。
残りの1体が炎を飛ばす。擦り足で避ける道隆は、風に乗るように炎から逃れた。
足元の路面に、縁の融けた窪みが増える。
道隆は胸を衝いた天使に飛びつき、その頭部を引きちぎる。
落下する彼目がけて、一時に20近い数の火球が浴びせられた。
そのうちの幾つかが魔物の外骨格を融解させ、道隆は筋肉にまで達する火傷をあちこちに負う。
着地した直後、痛みが表皮から立ち昇った。身体が再生を始めたのだ。
痛みを堪えつつ、道隆は天使から間合いを取る。
――痛った…。
道隆は他人事のように思った。
火球を避けつつ、天使に組み付こうとする彼だったが、その度に裂かれるような痛みが叫ぶ。
動きは鈍り、宙を舞う性別不詳を捕まえられない。
戦う義理は無いと言いたいが、今更見ないふりして帰る気にはならない。
状況の終了を見届けるまでは残っていたい。その為には、目の前の相手を殺す必要がある。
――う~ん、いいや!使っちゃえ。
道隆は魔物を呼び出す事に決めた。
あちこち痛む身体で、無理はするべきじゃない。
勝ち目がないとは思わないが、楽をしたくなったのだ。
召喚された魔物が天使の頭上に現れ、華奢な身体を風で吸い寄せる。
紫色の皮膚に朱色の蔦を走らせた人型が、少年聖歌隊のような頭部をスイカのように叩き割った。
道隆は千種公園に向かって駆け出す。
紫の無貌も翼を上下させて随行し、天使を魔の風で薙ぎ払う。
あどけない身体が吹き飛び、返す一撃で千々に砕ける。
その時、露になっていた傷口を緑のゼリーが覆う。
癒えたわけではないが、空気に触れない事で痛みが和らいだ。
若水住宅は、天使と異能者が競り合う巷と化していた。
接近された彼ら――一部の住民達の攻めが激しくなる。
紫の人型――秩序破壊の魔物が持つ、加虐の権能の効果により、思考が攻撃に偏重しつつあるのだ。
烈しさを増す異能者に、天使達は圧され始める。
蒼白の炎に阻まれるも、頑健な者は怯まない。
精神エネルギーの装甲を破る特別な攻撃であるが、今の彼らにとっては軽い問題だ。
道隆は傷ついた天使に攻撃を加え、確実に数を減らしていく。
精神を汚染されつつある住人は天使に加え、見慣れぬ異能者にも攻撃を加える。
(チッ…!)
殺すのはいいが、後始末が面倒だ。
救援に来たのは失敗だったか?
道隆は内心、不平を垂れつつ天使の相手を飛び回っていく。
情緒の安定を欠いた住人達に蹴りを入れて距離を広げるが、彼らは殆ど傷を負わない。
道隆の思考が精神エネルギーに影響を与え、キックの威力を低下させているのだ。
――浩紀。
髪を耳に掛かるくらいに伸ばしている、華奢な少年と目が合った。
彼は何事か言いたげに口を開いたが、道隆は立ち止まることなく走り去る。
道隆の背後を、堕天使か悪神のような人型がついていく。
青白い炎は無貌の頭部を焼き滅ぼす。断面から蔦のようなものが生え、次第に頭部を形成していった。
頭部の再生が終わると同時に、道隆の拳が天使を貫く。
天使の掃討が済み、道隆は魔物を伴って撤退。
彼が姿を消して数分後、攻撃性の鎮まった住人達は後始末の最中、鎧で全身を覆った異能者らしき者を思い出した。
住人達の脳裏で黒馬に乗った男と外骨格の戦士が結びつき、疑問と興味を呼び起こす。
浩紀は道隆ではないのか?と思った。好意的とは言い難い住人達の顔色を窺った彼は、顔馴染みについて明かさない事にする。
そもそも、異能者の所在を知らせる義務はない。
ありがとうございました。