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大迷宮はここに(3)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 稲田源いなだげんが変身を行う。

彫りの深い、ラテン風の顔立ちが、猪の頭部に変わる。

凍えるような紫の皮膚に毛は生えておらず、代わりに鼠色の四角い装甲が連なって各部を護る。

一声鳴く源の両目に向かって、カワンチャが鋭い爪を振るう。

伸びる右腕にアッパーカットが見舞われると、乾いた音があたりに響いた。


「沈黙こそが我が望み(したきり)」


 その隙間を縫って、周哉が骸骨の足元に接近。

両腕にジャマダハルが装備されるが、その姿は以前と異なる。

無骨な木製の握りは、細工が施された銀に。突き出た刃の面には、羽を広げた雀が彫り込まれていた。

周哉がカワンチャの膝に切れ込みを入れると、骸骨の歯から赤い霧が噴き出す。

蹴りを喰らったオールバックが宙を舞う。体重の乗った蹴りでは無く、痺れたような痛みで済んだ。



 紗莉の魔神が浮遊し、カワンチャに掴みかかる。

タケミカヅチは全身を現しており、その体躯は5mの骸骨が見上げるほど立派だ。

しかし膂力においては引けを取らず、迫る腕を払い、拘束を妨害。

骸骨は飛び上がると大きな右手首を掴み、巨神を9名の集まっている前方に投げ飛ばす。

周哉は紗莉のもとに一足で近づき、古代戦士との衝突を回避。


「離れてろよ、当たるぞ!」


 猪怪人に変身した源が駆ける。

彼は武装の鎖鉄球を召喚していた。

ツヤのある金属球はボーリングボールのようだが、指を差し込む穴は開いていない。

彼は今、悍ましいほどの握力で、鉄球を掴んでいた。

間合いをおよそ5mまで縮めると、猪の頭部より大きなボールをピッチングの要領で投擲した。


 重い衝突音が周哉の耳を衝く。

剛速球を喰らったカワンチャだが、その身体は未だ原型を留めている。

ボールを放り、立ち上がった骸骨が顎を開くと、赤い液体が滴り落ちた。

構わず咆哮を上げた怪物だったが、水気のある音を発するだけで、特異な効果は生まれない。


――?


 周哉の「沈黙こそが我が望み(したきり)」が力を発揮したのだ。

垂直に伸びた一対の刃は、舌を切り落とした相手の、口を使う動作に制限を付ける。

顎をさするカワンチャの前に、牛頭の怪人が降り立つ。

彼が正拳突き、膝蹴りを繰り出すと5mの痩身が浮き上がった。


 カワンチャは即座に態勢を立て直し、牛頭に突進。爪を鋭く振り回す。

源に折られた右腕が、分銅のように何度も弧を描いた。

後退する牛頭の足がもつれた隙を見るや、骸骨は左足を踏み込み、爪をボディーブローのように突き込む。

精神エネルギーに包まれた厚い外皮に爪は立たず、抉るような衝撃だけが走る。


「攻撃するから、どいて!」


 紗莉の従僕が稲妻を走らせる。

厳つい眉間から雷電の柱が放たれ、カワンチャの身体を駆け抜ける。

骸骨の周囲に再度放電が起き、探索班の一部が感電する。

大した負傷にならないのは、異能者――彼らは知らぬ名称だが、骨食いであるが故に。


「痛って!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

「気を付けろ!!」


 骸骨は足を止めない。

黒焦げた体に鞭を入れ、探索班の命をもぐ為、一息に距離を詰めた。

爆ぜるような踏み込みを終わらせたのは、ダーツが刺さった時に似た音。

俊樹である。彼が投擲した短剣が、カワンチャに向けて放たれたのだ。

一拍の間を置いて、頭蓋骨がレンガが崩れるように形を変える。




「お前がトドメか…」

「アハハ…、何か悪いね」


 俊樹は倒れるカワンチャの側による。

骸骨が霧のように溶けると、その場に赤い瓶が残された。

陶磁器製らしい表面には取っ手が一つ、図柄は描かれていない。

俊樹はそれを取り上げ、しげしげと眺める。

栓を抜くと、レモンのような酸っぱい臭いがした。


「なんだそれ」

「おっと、最初に見つけたのは俺だぞ?」

「ハァ?」


 声を荒げる周哉を制止するように、俊樹は手を突き出す。


「誰か、分析とか鑑定とか出来る人いない?」


 8名は顔を見合わせるが、俊樹の問いに応える者はいない。

真っ先に戦利品を収めた俊樹だったが、頼まれれば躊躇なく瓶を見せる。

もっとも、冷や汗をかきながら咳をする今の俊樹に、近づく者は2、3人程度だが。

瓶を揺らすとちゃぷちゃぷ音が経ち、中に液体が入っているのがわかる。

9名の内に、毒見を試みる勇気は奮い立たず、うやむやの内に赤い瓶は俊樹の懐に収まった。


「お前、それパチる気?」

「ちげーよ!第一発見者なんだから、俺が見せるんだよ!」


 俊樹は鼻の詰まった声で、慌てたように訂正する。

あわよくば自分のものにしたい、というのは口にしない。


「そろそろ帰らない?鼻水止まらないし」


 奈々葉が咳を交えながら、声をあげる。

このまま重い体を引きずりながら、ろくな装備も無しに、奥へ進むのは無茶だ。

しばしの話し合いの後、9名はひとまず引き返す事に決めた。

異能者の基本能力ゆえ行き来は容易。探索を強行する必要はない。


ありがとうございました。

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