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1時間――陸の孤島

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 異変発生から1時間、12人の王の残党は自壊しつつあった。

全身を鱗で覆ったモオシャの身体から、肉片がどろりと離れる。

派手な音を立てて、地面に落ちた。

泣き叫ぶような声を発するも、活動停止まで、少し猶予があった。


 巨大な魚人は静岡県湖西市に入る直前で身を翻し、豊橋市に向かう。

その周囲を複数の戦闘機が飛び回る。

封鎖の内側に展開された自走砲が、魚人の胴体に砲弾を撃ち込む。

日本はこの時点で、愛知県内で発生する怪物達に、組織だって対抗できる制度を成立させていた。


 砲弾は鱗を貫き、肉を穿つ。

巨大な半魚人は身体を曲げ、苦悶の声を上げた。

刺激されるまでもなく、モオシャは既に崩壊しつつある。


 モオシャは体表から、碧色の霧を拡散させる。

攻撃を加えたF-35Aが、霧を突っ切る。変化はあっという間に始まった。

パイロットの目がぎょろりと飛び出し、皮膚が潤いを失っていく。

髪が抜け落ち、首に生まれた弛みはエラに変化した。

墜落したコクピットから飛び出した影は、1時間前のそれとはまるで違う。


――半魚人。


 キャノピーを叩き割り、窮屈そうな服を脱ぎ捨てる。

彼はモオシャに率いられるように歩行するも、県境で立ち止まる。

主人が愛知県側に引き返すと、唸り声をあげて続いた。




 その頃、道隆は常滑市に向かっていた。

犬山から南下している、触手で覆われた肉塊を殺害する為だ。

同じ頃、古い民家が立ち並ぶ一角が、気象条件を無視した旋風によって薙ぎ払われていく。

特急列車のような速度で動く大気にブロック塀は砕かれ、屋根が木の葉のように舞い上がった。


 道隆は海に向かう渦巻目がけて、自前の運動エネルギー弾を放った。

自動車を思わせる巨大な金属塊は、先端が鋭く尖っている。

化け物じみた杭は風の壁を破り、内部にいた肉塊を100m以上吹き飛ばす。

触手の塊――スカバルが渦の外に出て間もなく、周囲に吹く強風が止んだ。


 スカバルは白い腕を使ってうぞうぞと這い、ややあってから宙に上がった。

その身体に繁る触手が剥がれ落ち、筆を引いたようになる。

傷口からは、黄緑色の鼻の曲がりそうな臭いのする液体が、とろとろと流れていく。

道隆は黒雲から雷電を、背筋を震わす柔毛の玉に落とす。

触手塊は肉の焦げる臭いを漂わせたまま、細身の竜巻を生み出した。


 道隆の間近に表れたそれは複数あり、さながら粉砕機の回転刃の様だった。

互い違いに回転する風の刃が、道隆の装甲を少しづつ削っていく。

たまらず霧化して逃れようとした時、大気の回転が収まった。

削られた甲殻は全壊には至っていないが、皮膚からは赤い血がとめどなく流れている。


 道隆が態勢を変えた時、風刃が消えた。

竜巻が消失した事で、回復力がダメージを上回る。

まもなく全身の傷はもれなく塞がった。


 スカバルは地面に横たわっていた。

弱弱しく震え、無数の白い腕が広がってゆく黄緑の絨毯を引っかいている。

触手が剥がれて露になった体表には、黒い断面が無数に並んでいる。

それもやがて消え、黄緑の液体に赤が混じった。

混合物は道隆が見ている前で、幻のように姿を消す。


(父上。連中、結界の外に出られないらしい)


 モオシャの様子を聞かされた道隆は、少し安心した。

県境で引き返し、その身体は徐々に崩れつつあるそうだ。

しかし、浴びると半魚人と化す碧色の霧の存在はやや心配だ。

霧と化した道隆は6分ほどかけて、湖西市に急行。

そこでは半魚人と化した同僚に慄く、自衛隊員達の姿があった。


(どうする?加勢するか?)

(うーん、しばらく様子見だな)


 対処できるなら、任せてもいい。

浜松で大暴れしてしまったので、彼らの前に姿を見せたくない。


 跳ねるように動く魚人共は、躊躇する彼らの隙を突き、防衛線の内側に侵入する。

戦闘車の射程から抜けた彼らに、小銃弾が浴びせられていく。

拳打を受けた様に身体を傾がせつつ、迷彩服に走り寄り、爪を突き立てる。

半魚人は不死身ではなく、やがて一匹、また一匹と倒れていく。

通常の怪物と違い、息を止めた元人間達は死体を残した。


――普通の銃火器で殺せるのか。


 道隆は固体化することなく、その場から姿を消した。

ただし、完全に放置したわけではない。

封鎖された県道近くの物陰に現れた、赤と緑のまだら模様のヤモリっぽい人型。

彼らは透けるように姿を消し、主人の命令を実行に移すべく、行動を開始した。

すなわち、自衛隊や機動隊の撃ち漏らしの掃討を。





 5日後、道隆は巨大怪物のニュースをネットで漁っていた。

彼らが歩き回る土地は、住民の半数以上が避難を済ませていた為、一般市民から直接の死傷者は出ていない。

その人知を超えた威容は様々な通信媒体によって拡散され、一部の錯乱した視聴者が異常行動をとった事が話題になっていた。


――これ、儂か…。


 浜松の一件において、暴れている道隆の映像がヒットした。

不安がるコメントが多数ついているが、中には危機感のない者もおり、SNSや掲示板出発の悪戯めいたコラ画像を大量に見つける事が出来た。


(父上。これは―)

(!…別にいーだろ、好きにさせとけ)


 道隆は検索を止めにして、投稿動画を流し見する。

直接害があるとは思えないし、どうでもいい。


 道隆は直接手を出されない限り、無視する。

対面で罵倒されたとしても、長くとも一晩すれば気にしなくなる。

如何なる苦難にも耐え忍ぶ姿を、ある人はタフと言い、ある人は惰弱と吐き捨てた。

器が大きいのではない。


――自分に触ってほしくないだけだ。


 言い返したくない訳ではない。

社会常識を頭でしか理解できない彼は、相手の立場を一切気にかけない。

ただ、噛みつく度にトラブルが増えていくので、大きくなるにつれて何も言わなくなったのだ。

道隆は間違いなく幸せだった。興味のない相手との繋がりを完全に立てる今が、どうしようもなく愛おしい。




―――12人の王編、終了。


ありがとうございました。

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