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1時間――蛇の舌(1)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 ハリマルドは庄内通駅から、西に向かった。

途中、幾度となく異能者が現れて進行を妨害していったが、巨神は苦も無く踏みつぶしていった。

超重量に圧潰されてなお、行動可能な者が少なからず居た事は、特筆に値するだろう。

霧が集合するように具現化する怪物に至っては、一顧だに値しない。

やがて無貌の怪物は、火炎神――エルハームとクトゥグアの混合体によって作られた空白地帯に足を踏み入れた。


 メイトー祖父江工場の200m手前までやってきた際、空の彼方から青い怪人が近づいてきた。

その後ろでミミズのような頭部を持つ怪鳥が羽ばたき、地上を車両のような体躯を持つ白狼が駆けてくる。

道隆は炎の人型を倒した後、市外に向かっていった三本足を次の標的に定めた。


 道隆は2体の魔物に攻撃の指示を出しつつ、雨雲を呼んだ。

頭上の雲量が増える中、忠実極まりない魔獣達が、小山のような怪物に突撃する。

軽飛行機並みの翼が三本足を腐食させようとするが、効果が現れない。

白狼のブレスが、強靭な筋肉を炙る。青い炎から遠ざかる動きを見せた為、こちらは効き目がある事が分かる。


 道隆は上空から、四発の金属塊を巨神に打ち込んだ。

命中する度に50mの体躯が傾ぎ、蹴られたように吹き飛ぶ。

突風が吹き荒れるが、道隆らには干渉しない。彼自身が"そう認識している"から。


 巨神が咆哮を上げる。

道隆が頭部目がけて撃った杭に転ばされるが、咆哮は止まない。

声が終わった直後、道隆の視界が白く染まった。

ハリマルドの術によって、視力が奪われてしまったのだ。

魔物達に攻撃するよう命令を下しつつ、三本足から距離をとる。


 後退する道隆の背中に、強い力で何かが突き立つ。

手で触れると、生き物らしき身体に触れた。

道隆が腕を振るうと、悲鳴と共に離れていく。

巨神と魔物達の位置は、感知能力と大気中の水分の動きから把握できる。

しかし視覚情報が遮断されているのは辛い。今後の生活に大きな支障が出る。


――治せる奴、出てこい!


 道隆の前方に、2mほどの球根植物が現れた。

真っすぐ伸びた幹の頂点には朱色の花が咲き、粉のようなものを辺りに撒いている。

花粉がオレンジの複眼に触れると、道隆の視界に色が戻った。

厳つい手で顔をさすったが、特に違和感はない。

その時、隕石と正面衝突したような衝撃が、道隆を襲った。


 道隆は300m吹き飛んでから、地面に墜落する。

立ち上がった甲殻にヒビが入るが、瞬く間に修復されていく。

口元を覆うマスクの割れ目から覗く、歯を剥きだした口も、まもなく隠された。

球根植物の魔物はぐったりとして動かず、まもなく幻のように姿を消した。

再び空に上がり、ハリマルドの元に飛んでいく。


 道隆は上空に垂れこめる雲に、命令を下した。

待ちかねたように稲妻が降り注ぎ、三本足の怪物を貫いていく。

胸の悪くなるような動きをするが、まだ溌溂としている。

道隆はやにわに、頭部の触手に走る大きな亀裂に気づいた。

よく見ると、怪物は全身に傷を負っている。


――治癒力は高くないのか?




 道隆の知覚に、異能者が侵入する。

500m南の空中、白馬に跨った長髪の女。

その隣には、黒い騎手に支えられた短髪。

早苗は街の異変を察知すると、夏姫に声を掛けて基地の外に出たのだ。

肉眼による探知なら、流石に隠蔽の使用もないと考えての行動であり――見通しが当たった。


 強化された早苗の視覚が、こちらに顔を向けている青い怪人を映す。

黒騎士の隠形を見破ったのだろうか?

念視による追跡の意図せぬ中断……愛知県、封鎖の内側は、あれが制御しているというのか?


(あれは貴嶋…)


 何をしに来たのか?

考える道隆の聴覚に、後方の咆哮が届く。

思索を打ち切り、戦いに集中することにした。


 呼び出した2体の魔物は、巨大な怪物に雄々しく喰らいついていた。

彼らに命令を下し、再び5本の杭を撃つ。

その直前、三本足の身体が実体を失った。

標的を失った5発は地面に着弾し、土煙と瓦礫が噴きあがる。


 巨神は道隆の左手に出現、不可視の拳を2発叩き込む。

衝撃を喰らう道隆は、さながらハエたたきで叩かれる蠅だ。

道隆は砲丸のように飛んでいくが、空中で静止すると体勢を立て直した。

霧となって姿を消し、大きな腹の真ん前で固体化。

正拳突きを2発打ち込むと、断面の黒が露になった。


――自己保護の術が、効果を失しつつあるのだ。


 三本足の腕が不快な軌道を見せ、道隆に迫る。

壁のような指が彼を捉える直前、勢いよく離れていった。

触手状の頭部を掴む者があり、怪物が地面に引き倒されたのだ。

それを成したのは、道隆が呼び寄せた魔物。


(あんまりこれ頼りなのも、どうかとは思うけど)


 わざわざ、徒手で戦う謂れもない。

生来ものぐさ故に、腕が鈍る心配があるが、手札は使えばいい、という考え方もある。


 魔物は筋骨逞しい人型だった。

まるまるとした腹と、木の根を思わせる頼もしい足腰。

ケープのように見えるのは、皮膜が変化したものだ。

魔物は蛇の舌を力任せに引き倒し、蠢く頭部を抑え込む。

鋭い先端が幾度となく接触するが、厚い皮膚を貫くことはできない。


 道隆は空中で一旦距離を取り、両足に稲妻を奔らせる。

水煙をあげつつ、隕石のような勢いで急降下。

両足をハリマルドの胸部に叩きつけた。

その衝撃で、周囲20mに亀裂が走り、巨体が地に沈む。

三本足の胴体が癇癪玉のように破裂し、轟音が夜空を衝き上げた。


「えっ」


 沼のようになった身体の中から、巨大な蝙蝠が姿を現す。

その顔には篝火のように灯る三つの目は、如何なる感情も窺わせない。

全長数十mの蝙蝠人間は道隆にも、遠くで両者を観察する早苗にも目をくれず、空の彼方に飛び去った。

道隆は直ちに追撃を開始。車両並みの杭を飛ばすが、それらは蝙蝠の身体を突き抜けてしまう。

宙を舞い、二度三度とぶつかるが、黒い煙が上げる蝙蝠は飛行を止めようとしない。


 上空およそ10㎞で三つ目は大きく一度羽ばたいた。

翼が上下した直後、蝙蝠のスピードが第二宇宙速度に到達。

ロケットのように姿を消したその行先は、伝承通りなら、原初の混沌が蠢く無明の房室だろう。

怪物の消えた方を見上げ、道隆は身体の疲労を感じた。

地上に降りた時、早苗の姿は既になかった。


ありがとうございました。

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