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30分――暗黒の虹(2)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 ウィツィロポチトリの皮膚が再生していく。

彼は粗野な男――康一の隙を見計らいつつ、黎明の光を投げつけた。

牽制程度の意味合いしかないが、破壊力は別。

着弾地点のコンクリートを、ビスケットのように破壊していく。

伴う熱波が、街路樹や生垣に火をつけた。


 康一は戦士に向けて、殺気を飛ばす。

殺気は黒い杭となり、太陽神の身体を吹き飛ばした。

ウィツィロポチトリはすぐに空中で静止するが、活力で構成された彼の身体を黒い牙が蝕んでいく。

人知を超えた身体能力の持ち主とはいえ、零距離から出現した物は避けようがなかった。

伝承が完全再現されたなら、対処可能だったかもしれないが。


「馬鹿にできる威力ではないが…なァ!!」


 ウィツィロポチトリが気合を入れると、黒い杭が蒸発した。

闇の力を、曙光によって焼き払ったのだ。

全身を穴だらけにしつつ、戦士は獰猛な笑みを康一に向ける。

活力が傷口に集中していく。少しすれば、無数の風穴は塞がってしまう。


 戦士は康一の頭より大きな火球を20発近く投擲。

それと同時に間合いを詰め、突きを繰り出し、飛んできた多節槍を払い、愛槍を叩きつける。

康一は苦い顔をした。

横殴りの雨のような一撃は重く、打たれた肩がジンジンと痺れ出す。


――馬鹿にしやがって…。


 康一は勝利の実感が欲しかった。

守山からここまで、同格以上の相手を倒した覚えがない。

格下相手の殺戮なら飽きるほどこなしてきたが、維持局の連中や守山のアイツ――強敵からは敗走しかしていない。

ここで逃げ出せば、寿命は延びる。しかし…プライドが死ぬのだ。

自身を取り戻す為に、目の前の男は死ななくてはならない。




 太陽神が地上に降下する。

天魔の多節槍が黄金の槍を絡め取るが、戦士は表情を崩さない。

彼は愛槍を手放し、一気に距離を詰めると康一の胸を盾で打った。

戦士は前蹴りを軽やかに躱し、バックステップで距離を取る。

黄金の槍はいつの間にか姿を消しており、次に現れたのは、褐色の掌の中だ。


 曙光が火となり、康一に振りかかる。

灼けつく黄金の牢を破り、現れたのは漆黒の戦士。

金属にのような甲冑が全身を覆い、隙間からはガスのような闇が絶え間なく噴き出す。

鎧の中身は、康一。

闇を全身に覆って、ウィツィロポチトリの光に抵抗しているのだ。


 その防護は堅牢。

鎧の内側で皮膚が腫れ、続々と水疱が生まれているが、防御のおかげでその程度で済んでいる。

闇の守りと、精神力の守り。

全身を鎧った康一は、5mほど離れた地点から、褐色の戦士目がけて槍を疾らせた。

しならせてはいない。明らかに射程外だが、穂先からは指向性の衝撃波が真っすぐに飛んでいく。


 褐色の男は次々と飛来してくる無色の刃を、微笑を以て迎え入れた。

引き戻す隙を見失うほどの連撃。

態勢を変えて牽制を躱し、必殺の一撃を黄金槍で払い落す。

穂先の向きを読み取れば、対処は可能だ。


――拉致をあけなければな。


 完全ではないゆえ、手数で劣る事は認めるしかない。

低空に上がり、褐色の男は腰を落とす。

脇に引いた槍の穂先から、閃光が花のように咲く。


「アイツが見たら、喜びそうだな!」


 その分厚い掌の中で、黄金の槍が回転した。

穂先を輝かせたそれは、火のついた車輪を思わせる。

路面が焼けたパイのように砕け、光が通過した建物は骨組みだけが残った。


「舐めるなァ!!」


 闇が溢れた。

康一の身体から吹き出した黒が、半径およそ500mを覆う。

闇は血肉を消化し、太陽神が霊体に貯蔵している活力を急速に枯渇させていく。

ウィツィロポチトリは狼狽える事無く、光輝によって拭い去ろうとした。

光が闇を押し流した時、雄々しい腹筋を長槍が貫く。


 康一は暗黒の中を飛び、アステカの戦士に近づいたのだ。

黒騎士は闇を復活させ、褐色の男に喰らいつかせる。

異物感を覚える彼の全身に、プレス機にかけられたような圧力が加わった。

ウィツィロポチトリは盾を捨てて康一の頭を掴み、夜を裂く曙光を叩き込む。

動かした皮膚がずるりと剥けたが、彼は頓着しない。


 黒兜を掴んだ腕に、ウィツィロポチトリは活力を収束させる。

そのうち、彼の膂力が康一の防御を上回る。頭部を覆う金属にヒビが走った。

すかさず曙光を、兜の中に叩き込んだ。

康一の皮膚が焼け、筋肉が炭化するも、溜めた欲望によって見る見るうちに再生されていく。


「しぶとい。耐えるのか…」

「テメェごときが俺を見下してんじゃねェ!!塵ンなるまで砕いてやるゼぇ!!」


 康一が吼えると共に光が細くなる。

闇が濃さを増し、康一の頭を掴んでいた腕が落ちる。

頑健な体が次第に悲鳴を上げる。爪が割れ 破片が無明の黒に溶けていった。


 ウィツロポチトリは闇の中、崩れつつある身体から更に光を放った。

空間に余裕が生まれ、全身が動くようになる。

彼は目にもとまらぬ速さで、横薙ぎに愛槍を振るった。

長剣を括りつけた鉄杖のようなそれを真正面から受け、康一は押し流される。


「勝つの俺だ…!俺だァあ!!」


 康一は泳ぐように闇の中を進み、戦士へ突進。

硬質化した闇越しに衝撃が伝わり、打たれた上半身にしびれる。

めちゃくちゃに槍を振るい、衝撃波を飛ばした。


 ウィツィロポチトリは残った活力を集中させる。

この身体はまもなく限界を迎える。

暗黒から逃れたとしても、その時戦い続ける力は残ってはいまい。

ゆえに、彼の首を獲る事を優先した。


「貴様の…負けだ!地平の果てに沈め!!」


 狼のように駆ける康一の元に、黄金の奔流が迫る。

妄執の魔性はこれを凌ぐが、その直後にやってきた黄金の槍に心臓を貫かれてしまった。


「おぉッ…、死ねや雑魚が!」


 突き立った槍が独りでに動き、心臓をかき混ぜるが、康一はたたらを踏んで持ち応えた。

康一は漆黒の殺意を波涛のように浴びせる。

ウィツィロポチトリは崩れゆく身体から曙光を放射し、闇を裂いていく。

ややあって闇が掻き消え、軍神の目に僅かだが光が戻った。


――目の前にあったのは、鎌首をもたげた槍の穂先。


それが彼の、最後の知覚となった。



 それから、一分ほど経って。

仰向けになっていた康一は、ゆっくりと頭を持ち上げる。

先ほどの戦士は既に、姿を消している。


――勝ったのは俺だ。


 俺は強い。

これまで戦ってきた連中を倒す実力は、十分にある。

今までは何というか巡り合わせが悪かっただけだ。

しかし…さすがに疲れた。精根尽き果てたらしく、胸の傷はまだ塞がっていない。

康一は血の混じった痰を吐くと、ゆっくりとその場を後にした。


ありがとうございました。

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