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30分――暗黒の虹(1)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 日没後、動けるくらいに回復した康一は外に出る。

服が襤褸切れと化している事を除けば、ほぼ全壊している。

しかし首や腰が凝ったように固く、歩くのが辛い。。

鉄球を括りつけられたような身体を引きずる彼に、戦う気力はない。

この状態で無理に戦っても、異能者に太刀打ちできないのは目に見えている。


――なぜ、これほどのダメージを受けたのか。


 それと意識しているわけではないが、諦めかけているのだ。

守山で出会った何者かに、未だに出会えていない現状。

手がかりらしい手がかりもほとんど無く、あちこち彷徨っている自分。

その揺らいだ心が、放出する精神エネルギーを乱し、防御能力を低下させたのだ。


 太閤通口から出た康一は、外堀通りを渡る。

夜空には菫色のオーロラが大きく広がっており、この時間にしては明るい。

その時、マーラの気配を感じ取った。

立ち止まった康一に、右手の街路から声がかかる。

そろそろと近づいていくと、半分ほど開いたシャッターから、翔が顔を出した。


「なぁ、あんたも軍勢だよな?」

「誰だテメェ?」

「俺は翔。飢渇の力を持ってる」


 康一は興味なさげに返事をした。

それに不安を覚えたのか、媚びるような笑みを浮かべて翔は這い出して来る。


「今、ちょっと動けなくてさ…、回復するまで一緒にいてくれよ。ダメかな?」

「……わかった」


 康一が歩いてくるのを見て、翔は安堵の息を漏らす。

腕だけで這って出てくる様は、都市伝説の妖怪みたいだ。

そっと腕を差し出すと、嬉しそうな表情をし――そのまま硬直した。

俯せになった翔の背中から、黒い杭が数本突き立っている。


「っなんで…」

「こっちもまぁまぁピンチでな。別に俺ら、友達でもなんでもないだろ」


 言うが早いか、翔の頭部を闇の串が貫いた。

彼の溜め込んだ欲望が流れ込み、翔が絶命した事がわかる。

筋肉の緊張が解れ、身体が軽くなった。




(また、妙な事が起こってるらしいな)


 康一は浮ついた街の中を、忍ぶように走る。

その時、彼目がけて何かが飛んできた。

横っ飛びに避けてみると、それは長槍だった。

羽を広げた猛禽を思わせる、黄金の穂先を持つ槍がアスファルトに深々と突き刺さっている。

それは独りでに抜け、空中に帰っていく。視線を上げると、槍を手に取る者がいた。


 まず目に入ったのは、蜂鳥をかたどった頭飾り。

それから堂々と晒された褐色の肉体。

顔はアジア風。だが目鼻立ちは一般的な日本人よりもはっきりしている。

五つの羽飾りを付けた盾と黄金の槍を持つ、どこぞの原住民族といった風の戦士。


「何だテメェ、喧嘩売ってんのか?」

「喧嘩ではない。貴様――貴様らをを殺しに来た」


 空中から大上段に言い放った褐色の男に、康一はやや苛ついた。


「ハァ?どこかで会ったかお前?」

「初対面だ。それより貴様、色々と混じっているな」

「だからどうした。腹の足しにもならねぇテメェみたいなカスに、付き合ってられるほど暇じゃないんだよ」


 話が噛み合わない。

会話というより、向こうが一方的に言い分を並べているだけに思える。

康一がすげなく突き放すと、戦士――ウィツィロポチトリは合点したような顔になる。


「では疾く死ね」


 菫色の照る空から、光輝が投げ込まれる。

光は瞬きよりも早く地上に達し、康一の身体は再び焼かれた。

しかし、昼間ほど負傷はしていない。


(あぁ、面倒くせぇ。何でこんな奴に絡まれてンだ)


 康一は腹立たしく思った。

欲しいものは手に入らず、邪魔だけは次々と吸い寄せられてくる。

しかし――今は逃げる。

この近くに住宅街もある。一般人も少しはいるだろう。


「逃げるのか、臆病者め」


 背を向けた目標目がけて、戦士は黄金の閃光を見舞う。

位置を右にずらした康一の脇を、光の帯がすり抜けていく。

周囲に配慮しているのか、一帯をまとめて吹き飛ばすつもりはなさそうだ。

しかし、そろそろ限界だろう。康一は闇を解き放った。

保身を捨てて放ったそれは凄まじい規模を誇り、半径200mが光一つない漆黒に包まれる。


「暗黒か。いいぞ、俺に見舞う技としては洒落が利いている」


 闇は主の高揚に応じて、その威力を増している。

瞬く間に百以上の命が尽きていく世界で、ウィツィロポチトリは薄く笑った。

5秒経ち、闇が拭われる。

半径200m以内に、2人以外に動く者はいない。


 康一は逃走を再開する。

気配は感じないし、顔を見せてやる謂れはない。

あの半裸の相手をしてやる義理は、康一には無い。

10mほど走った辺りで、頭上から曙光が差した。


「結局、逃げるだけか?戦いの覚悟を決めたのではなかったのか、愚物め…」

「――てめェ」

「あぁ、死んだと思ったのか。甘い、俺は朝の光をもたらす戦闘神。そうあれと願われたのだから、この身が暗黒に屈することは無い」


 死の光に抗い、康一は頭上の戦士を見据える。

露出した肌が溶け、筋肉が露になっているが、その表情には余裕が見える。

活力を振り絞った結果がこれとは情けない。


「これで終わ――」


 褐色だった男が言い終えるより先に、長槍が宙を翔けた。

回避に移った彼だったが、露になった腕に赤い裂け目が生まれる。


「余裕ブッコいてんじゃねぇ」


 康一は内心の焦燥を、挑発で隠す。

辛うじて手詰まりではないらしいが、勝利への道筋はか細い。


「気力はまだ萎えていないか」

「つくづく俺を馬鹿にしたいらしいな、屑が…」


 康一は空中に飛び上がり、気合と共に槍を連続で突き出す。

足から放った波動が、簡易な足場となり、しっかりと体重を乗せることができた。

常人の目には、穂先が数十に分裂したようにしか見えない連撃を、ウィツィロポチトリは捌く。

致命傷は防いだが、首や脇、脛に裂傷が走る。


 戦士は口元を綻ばせた。

目の前の男は、ようやく真価を見せる気になったらしい。

家畜を屠殺するなら、自分で無くてもいい。

自分が相手取るのは、一端の戦士でなければならない。


ありがとうございました。

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