表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/152

黒い馬の背に乗って(1)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 アルスラは秘密基地から去っていった。

残りの、ケセドなど主要メンバーと合流して体制を立て直すためだ。

早苗達は、彼女らを引き留めるようなことはしなかった。

居場所を捕捉できる以上、手元に置いておく謂れはないし、向こうもそれは承知の上だろう。



 その後、銀河がゾンビの群れを街に放った時、早苗達は死体を攫っていた。

あまり関心は無かったが、修児に頼まれたのだ。

一宿一飯の恩義、でいいのだろう。

10体ほど夏姫に生きたまま―生命活動をしているのとは違う―転送を頼んでから、2人は秘密基地に帰還する。


「何か分かった?」

「運ばれてきた10体は、完全に死んでいた」


 翌日の昼、早苗は修児に尋ねた。

死体は全て検査にかけたが、心拍も呼吸も無し。血圧もゼロ。

角膜が完全に混濁している為、死後四十八時間は経っているはず。

外部から、何らかの力を供給されている事が確認できた直後、一斉に活動を停止。

おそらく10体の主人が死亡したのだろう、と修児は推測した。


「…脳波はどうだった?」

「脳波計も反応なし、だが動いていた。観察した限りでは、自分で思考している様子はなかったね」

「ふーん…」


 早苗は考え込むような素振りをする。


「妙な武器を振るう、3人組…」

「マーラっていうのは――」

「仏典に出てくる悪魔だね、比喩なのか…あるいは本物なのか」

「まさか」


 早苗が疑わし気にすると、修児は不敵に笑った。


「わからないじゃないか。異能者が現れ、名古屋がこうなったんだ、悪魔がいても可笑しくないと思うけどな」

「……」

「もしいるなら、一目会いたいね」


 悪魔と一口に言っても、いろいろだ。

考察するならまず、定義をハッキリさせなくてはならないだろう。

彼らは今の人間を肯定するだろうか、それとも否定するだろうか?

早苗は胸の奥を、不安と期待の混合物が満たしていく。






 一夜明けた後、賢人は天白区の隠れ家にやってきていた。

彼を眠たげな眼で見つめる、恰幅の良い丸顔の男は風間翔かざましょう

飢渇の担当者である。翔は維持局本部が壊滅してから、暮らしていた本山を抜け出して、新聞店の隣に建つ豪邸に潜んでいた。

帰宅する者はなく、翔は家主が死んだものと決めてかかっている。


 2人は前の通りを見渡せる、2階の寝室にいた。

賢人はベッドの端に腰かけ、翔はテーブルに座る。


「風間君、お願い!僕と協力して…」

「え~、やだよ。維持局の連中から追い回されるじゃん。却下」

「そんな――!」

「銀河と…えーと恐怖?殺されたんでしょ?無理無理!」


 賢人は瞳を潤ませ、俯いた。


「他の奴に頼めよ」


 翔は面倒臭そうに顔を顰め、目の前の書き物机に開けられたポテトチップスを掴む。

それを口までもっていき、無遠慮に音を立てて咀嚼する。

この手の劣化が遅い菓子類は、今の名古屋では喜ばれる品の一つだ。

栄養価は期待できないが、とりあえず腹は膨れる。


「他って…」


 欲望、疑惑、嫌悪、強情、妄執、そしてこの場にいる飢渇と怠惰。

このうち、確認されていないのが嫌悪と強情。

マーラ復活に意欲的な者は賢人と康一。

康一には、あまり声を掛けたくない。

振る舞いが粗暴なのもあるが、彼は自分を軽く見ているフシがある。


「誰もいないよ――!?」


 一切の予兆なく、邸宅が強烈な圧迫感で覆われた。

立ち上がった2人はとりつくように窓に近づく。

表にいたのは、アサルトスーツに身を包んだ数十の人影。

彼らは一様にサブマシンガンを携行し、こちらに油断なく目を配っている。

名古屋市中に散っていた維持局のメンバーである。


「おまえ!!連れてきたな…?尾行にも気づかないで、ここまで案内したんだ!」

「ち、ちがう。僕そんな」


 翔は賢人の胸ぐらをつかむ。

賢人が反論しようとすると、床に投げ飛ばして蹴りを入れる。

1mほど吹き飛んだ彼は、悲しげな顔で立ち上がった。


「違わねーだろ!!あれ見ろよ!どうすんだよ、コミュニティにいられねーから、逃げてきたのによォ!!」

「ごめんなさい…」

「ごめんじゃないよ!あー、もう!」


 叫んだ直後、壁が爆発した。

反応する間もなく、翔は何かに身体を掴まれてしまう。

顔を逸らした先にいたのは、ささくれた赤い外皮を持つ人型。

目も鼻もない顔で、そいつは人の言葉を発した。


「一人確保!」

「やば~い!!」


 翔は己の武装を形成しながら、脱兎のように逃げ出した。

鱗のような無数の金属板が首から足まですっぽりと覆い、胸の前と背中に取り付けられた丸い円盤が急所を覆う。

桃の果実に似た帽体を、錣がすっぽりと包み込む。顔を覆う面甲は、猪を象っている。

この鎧こそ、翔が命を預ける武装。


「離せ!!」

「うるさい!大人しくしろ!」


 赤い人型――省吾は鎧の出現に狼狽える事無く、身体を掴む力を強める。

しかし殆ど痛みはない。飢渇の鎧が、その圧力を無効化しているのだ。

賢人は部屋の出入口に向かいながら、左見右見する。

赤い怪人が作った壁の裂け目から、若い女が侵入した。


「おい、賢人!助けろ!」


 身を竦ませた賢人は、赤い人型と女に己の能力を放つ。

省吾は手を放し、その場に棒立ちになる。

女は首を傾げたが、思い直して攻撃に移る。

床に沈んだ彼女の頭上を、真紅の拳が横切った。


「え」


 振り仰いだ時、腕を突き出した省吾の姿が目に入った。

自分の頭があった辺りを彼の拳が通過しており、潜らなければ諸に食らっていただろう。


「何やってん――」


 赤い怪人が顔を傾けた時、女は不吉な予感を覚えた。

胸まで沈んでいた身体を完全に沈めた時、省吾は床を踏み砕く。

女は一階の玄関に姿を現すと、居並ぶ局員達に急を告げた。


「よ…し、おい、このままいくぞ」

「うん!」


 賢人の能力は魅了。

普段は殆ど使い物にならないが、その本領は防戦時。

自分に近づいてきた相手に対しては、出力が倍増する。

女は異能者であったが故、まるで効き目が無かったが省吾は別。

異能を扱えるとはいえ、彼は一般人でしかない。


「どこに行くの?」

「とりあえず…どっかコミュニティを襲うぞ!」

「え!?」


 豪邸から飛び出し、飛行物に乗った賢人は耳を疑った。

維持局に取り囲まれた状況で、さらに在野の異能者すら敵に回そうというのか?


「一般人だけ襲えばいいだろ!異能者を相手にする必要なんかない!」

「でも」

「名古屋の外に出たら殺されるんだろ?まず力を付けて、それから突っ切りゃいい!」


 翔にどやされ、賢人は飛行物の舵を切る。

その判断に疑問はあるが、これ以上口を挟むと手を飛んでくるかもしれない。

一方、翔はというと、自信たっぷりの表情で空を眺めている。

この判断に間違いはない、頭から決めてかかっているのだ。

彼らにもし、異能者のような精神耐性や、魔女の囁きを無視する頑なさがあれば、辿る結末は違ったものになっただろう。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ