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怪奇の幕が開いた(3)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 大輔の捜索依頼受諾から3日後。


「出て行った…確かか?」


 名古屋駅の地下街で、大輔の目撃証言を得ることができた。

相手が覚えている限りでは、愛知県を抜けて京都に入ると言っていたらしい。

聞き込みを続ける度に、話は確度を高めていく。冬彦が調べた限りでは、ここが最新の情報である。


 万場大橋を通り、庄内川を横切る時に細長い胴体を持つ犬に襲われる。

冬彦はこれを一瞥すると、刃渡り1m30㎝ほどの鋸刀を顕現させる。

すれ違いざまに振るうが、3匹の犬は軽やかに避けると嘲笑うように鼻を鳴らした。

冬彦は立ち止まることなく、蟹江町目がけて疾走する。


 走り去らんとする背中に牙を立てようとした時、犬の身体から無数のエッジが突き出る。

エッジは鋸刀が振るわれた瞬間、体の奥で発生。骨を割り、肉を割き、皮膚を破って、外気を存分に浴びた。

3匹の犬は全身から黄緑色の体液を流しながら、古びた布となって崩れ落ちた。




 2日後、公穂を県外まで送った冬彦は、未だに情報収集を続けている。

気がかりな点があり、それをどうしても解消したかった。

そして今、彼は午後4時の上前津を歩いている。

竜二が出入りし、大輔が嗅ぎまわっていたらしいコミュニティの本部がここにあるのだ。


(BTD…)


 緑と金のまだら模様の服装が特徴の音楽団体。

12人の王とかいう神を信仰しているらしい、宗教色を帯びた若者の集団である。

会員は400名を超えると聞いたが、何が彼らを惹きつけるのか、冬彦には分からない。

今回の一件が解決した時には、見当がつくだろうか? レトロな建物を見上げながら、思った。


「こんにちは!本日はどういったご用でしょうか?」

「ライブチケットはここで買えるのかな?」

「はい。3番窓口でお呼びしますので、ソファにお掛けになってお持ち下さい」


 案内されるままに腰を下ろした冬彦は、ロビーを見回す。


(随分と組織化されている)


 夏のゴタゴタがあったとはいえ、これほど立派な建物を手に入れる力がどこから出てくるのか。

立ち働いている会員の動きにも淀みが無い。

今の環境が出来たのは、今日明日の事ではあるまい。

異能者は参加していないらしく、探知範囲に気配は無い。名古屋のコミュニティとしては、相当珍しい。

しばらくしてから、冬彦はチケットを受け取り、本部を後にした。


 その2日後、冬彦は天白区のライブハウスに入場。

ステージでは、緑と金のまだら模様の司祭服を着た男達が叫ぶように歌う。

熱狂する観客を不思議に思いながら、冬彦は欠伸を噛み殺した。

独特の世界観が貫く彼らの歌は、冬彦に琴線に触れない。


(異能者…か?)


 異能者とも怪物とも異なる、独特の気配をグループから感じる。

それは焦点を合わせねば、見失ってしまうほどに薄い。

考えている内に公演が終わり、冬彦もスタジオを後にした。

すれ違う男女の半分以上は、翡翠と金で作られたブローチを着けている。


(会員証なのか?)


 出入口近くで5人の男女が話し込んでいる。その中に、一際目立つ風貌の女がいた。

サングラスを掛けた、白貌の女。

女は冬彦の視線に気づくと、柔らかな微笑みと共に歩み寄ってきた。


「こんばんは。私に何か用?良ければ力になるけど」

「…南雲竜二。ご存知ですか?」

「!」


 恐る恐る冬彦は切り出す。

笑顔を消した女はアルスラと名乗り、冬彦についてくるよう促す。

ライブハウスから外に出て、人気のない場所に移ると、彼女は口を開いた。


「あなた、彼を探してるの?」

「捜索の依頼を受けている、成果らしい成果は上げられていないが…」

「そう…」


 アルスラは、ぽつぽつと竜二について話し始めた。

直接話したことが何度かあり、彼女はその顔を覚えていた。

2週間ほど前に捜索願が出された事は、コミュニティの構成員から伝えられたと明かした。


「失踪するような前兆は、なかったように思っていたんだけど…」

「情報提供感謝します、私はこれで…」

「長々と引き止めてごめんなさい。まだ生きていないとも限らないから、出来るだけ早く見つけてあげて」

「あぁ、努力しよう」


 冬彦が頷くと、アルスラは顔を綻ばせた。

目元は隠されているが、その顔は整いすぎて人形のように見える。

彼女からも、極めて薄いが常人ならざる気を感じる。


「ありがとう。それじゃ、また…」


 アルスラが去っていき、冬彦は一人残された。

他に用事もない為、とぼとぼと帰路に就く。

大輔は名古屋を出ていく前、BTDを調べていた。竜二はBTDの集会に出入りしていた。

何か発見があるかとライブを観覧してみたが、変わっていた点といえば、ステージに上がったグループと先刻の女くらいのものだ。


 後日、冬彦はBTD本部を遠巻きに眺めていた。

丑三つ時、寝静まった周囲からは、獣を想起させる不吉な息遣いだけが感じられる。


(正気じゃない)


 冬彦は建物自体にサイコメトリーを試みるべく、抜き足差し足でやってきた。

映像を閲覧している間、視界が完全に封じられる。

頼れるのは四つの感覚と、異能者が標準的に備える気配探知のみ。

霊的近くに引っかからない常人と出くわさない分、この時間に行った方が安全なのではないか…と思ってきたが、やはり恐ろしい。


 隠れる場所が見当たらない為、冬彦は跳躍。

2階部分らしい窓の縁に手をかけ、更に上層を目指す。

屋上に立つと、冬彦は緊張した面持ちでサイコメトリーを試みる。


(建物を読み取るのは初めてなんだよな…)


 大輔も屋上までは立ち入っていないだろう。

もし、読み取りがうまくいかないなら、館内に侵入しなければならない。


 冬彦の眼球が、BTD本部の過去を映し始めた時、座り込んだ彼に近づくものがあった。

一般人の彼らは鈍器や刃物を手を取って、屋上を目指す。

さらに地下。


「運び女様!」

「会員の皆には屋上に近づかないように言って」

「よろしいんですか?最悪地下まで入ってくるのでは…」


 慌てた様子の男が報告を遮るように、運び女と呼ばれた人物が命じる。


「外で騒がれるのが一番不味いわ。踏み込んできたなら、私が対応する。早く!」


 男は長階段を駆け上り、地下から出ていく。

そこは限られた者しか存在を知らない、秘密の礼拝室である。

運び女は石檀に蹲った少年の頭をそっと撫で、静かに微笑んだ。


ありがとうございました。

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