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新人類狩りと夜の空(2)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 康一はパン屋を出た後、"虚栄"高橋銀河たかはしぎんがと賢人と共に街に繰り出していた。

マーラ復活を目指す組として、ある程度レクチャーしてやる、との事だ。

彼らは街に繰り出し、26名ほどの市民を殺害すると、若い3人組を残した。

銀河は一人を殺し、残った男女に武器を差し出しお互いを殺し合うよう、求めた。


 マーラは他者の欲望を己の欲望とし、快楽を遂げさせるという。

煩悩を遂げさせる点において、おおよそ万能に近い――という触れ込みだ。


「どんな願いでも叶えてくれるって事じゃね!?」


銀河の解釈を切っ掛けに、復活組は結成された。



 銀河は派手な格好をした20代の男。

明るい茶髪をソフトモヒカンしている、十人並みの顔立ち。

彼は今、牛すら両断できそうな戦斧の穂先を地面に突き立てて、だらしなく立っている。


「で、できるわけないじゃん!」

「あっそ、じゃあ、俺が両方とも…」

「…おい!」


 斧を持ち上げた銀河を見て、男が女の方に近づく。

彼は自分が銀河を襲撃した隙に、女を逃げ出させようと考えていた。

賢人は気の毒そうな顔で二人を見つめ、康一は苦虫を噛み潰したようにしている。

見るからに戦力差のある相手を、一方的に甚振る。面白い展開ではない。


 男が一歩、足を動かす。

女はそれに反応し、渡された自動式拳銃を男に向け、引き金を引いた。

身体を傾いだ男が倒れこむ。男が絶命したとみると銀河は女は近づき、女に戦斧を振り下ろす。

それが彼女が見た最後の景色。

女の頭蓋に熱い刃が入り、割られたスイカのように脳漿や血液が弾けた。


 その直後、変化が始まった。

銀河に殺害された20名の死体が、がたがたと揺れ始める。

揺れは徐々に大きくなり、彼らはゆっくりと起き上がった。

外的な負傷が徐々に癒えていき、やがて健常な見た目を取り戻す。

しかし生気のない皮膚や目を見れば、生きた人間でない事に気づけるだろう。


――これが虚栄の能力。


 殺害した相手を、己の手駒として操る能力。

彼らが動き出すと同時に、銀河の纏う気配が濃くなった。


「強化ってのはこんな感じだ!わかったか?」

「おう」

「まー、経験値稼ぐみてぇなもんだ。気楽にいけよ、気楽に」

「うるせぇな…」


 マーラの軍勢は異能者と違い、己を容易に強化できる。

欲望や快楽を満たした相手を己の一部とし、パワーを向上させる。

銀河が行ったように己の手駒とするのが最も効率がよく、他者の生存欲求を刺激――嬲り殺すのが最も手っ取り早い。

対象を殺害する必要はないのだが、銀河は必ず殺すことにしている。

曰く、生かしといたら足が着くかもしれない、との事だ。また、末期にも僅かだが欲望を受け取ることができる。


「じゃー俺らは行くから。賢人」

「うん、それじゃ…梅崎君、気を付けて」


 2人は去っていった。

これから街を出て、封鎖の外を目指すのだろう。


――いや、まだ揃ってないんだったか?まぁ、いいが。


 総勢9名らしいが、あと2人足りないはず。

興味のある話題では無かった為、康一は構わず、雑魚喰いに専念する。

守山で出会った何者かは、おそらく異能者だろう。

確実に狩るために、力を付けなくてはならない。


「タクどこ行った?」

「連絡付かない」

「ウッザ、探さなきゃなんねぇじゃん」


 銀河は鼻翼のあたりを掻きながら、言った。

恐怖の担当――山内匠やまうちたくみは方針としては中立だ。

この街に残留したくもないが、封鎖の外に出る気もない。勿論、マーラに叶えてもらう願いもない。

本来ならまず関わらない相手だが、これが中々戦力になりそうな能力を持っている。

ちょっと小突けばすぐについてくる為、パシリに丁度いいのだ。






 千晃はミュータントから気になる報告を聞いていた。

彼らはその容姿故差別されやすい。攻撃を逃れるために、身を隠す術を伸ばしていくのは自然だった。

集落の外で活動するミュータント達が、ミュータントを狩る男の情報を持ってきたのだ。

一般人でもないが、異能者でもないらしい人物。男は外にいるミュータントを見つけては、次々と殺していくそうだ。

昨日維持局本部が壊滅しており、それと関連があるのでは――千晃は静かに唸る。


「僕が調べてきます――」

「そんな、危険です!本部を壊滅させたような奴なんですから…」


 ミュータントが縋りつく。

ペイズリーに似た突起を持つ寸胴の身体に、口が縦についている。

千晃の身体に取りつく腕は、上下に四本存在している。


「心当たりが幾つかありますし、ここの守りは涼葉さんもいますから」

「あの娘じゃちょっと…」

「不安ですか?」


 ミュータントは言葉を詰まらせる。

もし表情があったなら、顔を俯かせていただろう。


「いや、まー…ドラゴンもいるし」

「すぐに戻りますから。それと、僕が行ったら注意喚起をお願いします」

「それは勿論」


 関所から外に出た千晃の身体で、白い燐光が弾ける。

その中から、黄金の鎧に身を包んだ天使が現れ、空の彼方に飛んで行った。

千晃は鶴舞方面を目指す。その判断には維持局本部壊滅の情報が関係している。

健介を通じて省吾と知己を得ており、情報があるなら、彼から聞き出しておきたい。

また、高速化して移動すると下手人を見逃すかも知れない、という考えもある。


「おい、止まれ!」


 地上から声が掛かり、千晃は降下する。

そこにいたのは、和成と他数名。

彼は千晃の姿に驚いた様子を見せる事無く、康一の目撃情報を尋ねる。

和成は千晃の事を知っている。ミュータントの親玉として、彼は知名度がある。

勿論、今日初めて聞いた千晃に、康一の行方を答える事はできない。


「館石さん、どこに行ったか知りませんか?」

「おー、省吾なら南区の方に行ったぜ」

「そうですか。ありがとうございます」


 和成に省吾への言伝を頼んでから、千晃は飛び去る。

南区に向かったとすると、熱田区を通るだろう。

入れ違いになったかもしれない。

とはいえ、本部壊滅の詳細を聞けた為、無駄足ではない。


(集落の様子を見ていこうかな)


 もしかしたら、件の不審者――康一が襲来しているかもしれない。

些か不安な心持で近づくが、特に変わった気配は無い。

城壁の見張りも、特に異常なしと言っている。

千晃は内心ホッとしてから、南区に向かった。


 ミュータント狩りが目的と仮定すると、康一らは市内にいるだろう。

彼らは名古屋市内…五本の柱の内側にしかいない。

封鎖の外に出ていきたがるミュータントは、千晃の知る限りではいない。




 緑区鳴海町。

7月に出現した巨大怪物によって、街の一部が黒沼と化した。

状況はその時から、ほとんど変化していない。

名古屋市民からも完全に見捨てられた此処は、近隣住民のゴミ捨て場と化していた。

再利用できそうにないゴミを回収し、選任の人々がここに捨てに来る。


「この近辺で、異能者や怪物でない気配は感じなかったんですね?」

「そりゃミュータントだろ?」

「いえ、えーと熱田区民で無く…」

「心当たり無いなぁ…。ところで、アンタらカチコミかけられたってホント?」


 本部壊滅から、早1日。

巡回に出ていたメンバーや非番のメンバーが多数いた為、全体の被害は軽微だった。

しかし、あの時建物内にいた210名のうち、166名が死亡。

本部建物自体は一昼夜で修復できたが、その組織力を大きく落とすことになった。




 その日の夜中、有松駅から少し離れた川沿いの空き家。

康一はのっそりと外に出た。

このあたりは住居として受けが良くなく、好き好んで住み着く者は稀だ。

人との関わりを避けている隠者志望とか、脛に傷持つ前科者、夜逃げ者――身を隠すにはちょうどいい。

こちとら伊達にあちこち走り回っていた訳ではないのだ。


 康一は散歩するような足取りで、夜の住宅地をうろつく。

人の気配を見つけ次第飛んでいき、襲い掛かる。

彼らの阿鼻叫喚を吸い、少しづつ力を付けてゆく。

特にミュータントが狙い目だ。徒党を組めば、一般人ですら彼らに襲いかかる。

維持局の面子に見つからなければ、安全に狩っていける。


――ふと空を見上げると、青い大穴が開いていた。


 ネオンも車のヘッドライトも存在しない名古屋の頭上には、満天の星空が広がっている。

その一角、コンパスで引いた様な丸い穴が開き、そこから青空が覗いていた。

青空、というのは正確でない。ただの淡い青色だ。


(ま、考えてもしょうがねぇか…)


 あれが今の自分に、何か関わりがあるとは思えない。

名環自動車道に沿って歩けば、八事あたりに着く気がする。

市の中心部にいくのはまだ不味い気がする。バイクか車か、足になるものが欲しかった。


ありがとうございました。

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