表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/152

復活する暗黒の虹(2)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。



「本邦初公開、俺を退屈させるなよォ!」


 康一は足元に沈殿する、黒い戦意を解き放った。

闇が維持局本部内を包んでいく。正史郎に殴られた後、彼の中に残ったのは身体強化のみ。

気配感知は劣化し、視界と同程度の距離にしか機能しない。そして保有していた力は3つとも失われた。

これはその代わり。これから命を預ける、彼の武器。


 新たな能力の発動は、たちまち局員達の知るところとなった。

本部内が闇に包まれると同時に、困惑が建物を満たす。

蛍火ほどの光すらない、完全な黒。

視界が暗転した直後、闇の中にいた全員の身体を焼けるような痛みが包み込んだ。


「ひィッ…!」


 異能者の男は視力を強化して、自身に起こった変化を見てしまった。

右手の皮膚が溶け落ち、骨まで露出していたのだ。

身じろぎした拍子に衣擦れが起こり、痛みが体中を駆ける。

服の下でも同様の変化が起こっているのではないか、と男は連想した。

慄然とした彼は失禁。それがまた激痛を催したが、強化された精神は彼を眠らせてはくれなかった。


「ぐぅ――ッ…」


 建物の一室、眼鏡をかけた若者――館石省吾は変身を行う。

白い燐光が弾けると、省吾と入れ替わりで、赤い異形が出現した。

筋骨たくましい、ささくれた赤い外皮を持つ人型。

8本の角が生えた、ワニのような口から声が漏れ、暖かな炎が蹲る局員を包み、天井を舐める。


「うぅ…すまない」

「俺は外の様子を確かめに行く!どこか、安全な所へ!」


 省吾は廊下に出ると、出会う局員の傷を片っ端から治癒する。

異能者は自力で歩ける程度に耐えていたが、一般局員は異変が始まった時点で動けなくなった。

皮膚が溶け落ち、筋肉が潰したイモのように崩れていっているのだから当然。

彼らも異能による強化を受けていたが、それで埋まるほど、異能者と一般人の差は小さくない。


 省吾は力を授けてくれた友人に何度目かの感謝をしつつ、破壊音に向かって走る。

変身するのが遅れていたら、彼らと同じ運命をたどっていただろう。

床を叩き割り、下の階層に落下。巻き込まれた仲間がいたなら、炎で治す。


「おォほッ――!結構、やるなぁ!」


 2階に降りた時、戦闘音が耳に入る。

闇に身体を喰われながら走っていた省吾だったが、視界の確保をかねて治癒の炎を纏って対処。

破壊力が無い為、燃え移る心配はない。

2階に入ってすぐ、3名の局員を相手取る革ジャンの男が目に入った。

彼は長い槍を振るっていたが、それは時に杖のように固く、鞭のように柔らかい。

省吾は局員達の元に駆け寄り、彼らの負傷を癒す。


「面倒くせぇのが来たな…」

「ありがと、省吾」

「あぁ、気にするな。これはお前だな、梅崎!」


 緑色の鳥人――雅音は己の武器を取り出した。

右手に出現したのは、前腕ほどの大きさの刃を生やした小振りな鎌。

見るからに凶悪なフォルムをしており、雅音はこれの使用を好まない。

しかし、今はそんな我儘を言える状況ではない。

雅音は軽やかに距離を詰め、康一の脳天目がけて鎌を振り下ろした。


 康一は雅音の右手を切り落とし、続けて刺突を繰り出す。

動作を終えて硬直したところに、火線が6本飛んできた。

康一は上半身を思い切って倒し、宙返りで間合いを離す。飛んできた炎は槍で払う。

着地する直前、ボストン型メガネをかけている女局員が3発撃った。

そのうちの1発が康一に命中。弾丸は右鎖骨を砕き、通路の彼方に抜けていく。


 シングルアクションの回転式拳銃だが、その威力は見かけ以上。

僧帽筋が抉れ、右腕が殆ど千切れそうになっている。

康一は多節槍を落とし、笑っているような怒っているような表情を浮かべた。


「いい気になってんじゃねぇ!」


 康一が4人に吼えた直後、黒い杭の群れが両者の間に出現。

それを見た瞬間、省吾は変身していない2名を抱えて、左手の壁に突撃する。

壁は真紅のタックルであっさり砕け、彼らは2階にあるオフィスに飛び込んだ。

その時、右足がふらついた。


(もう燃料切れか!?)


 省吾の友人の異能者――松岡健介は親しい相手と能力の共有を行う事が出来る。

一般人に異能者の能力を使わせることができるが、自由自在とはいかない。

能力を使用する度に相応の体力を消耗し、その激しさは異能の使用頻度に比例する。

計算を誤ったのか?


――どうする?


 抱えた2名と自分の傷を癒しながら、省吾は思案する。

この闇の中では闘わずとも負傷していく。

異能者ですら傷つくのだ。一般人からは、既に犠牲者が出ているかもしれない。




「おーい!!外だ―!」


 省吾が悩んでいると、遠くの方から声が聞こえた。


「外は無事だぞー!!外に出てこーい!!」


 省吾は、声の主が和成であると思い出した。

外?ちょっと思案したが、蘇った痛みがそれを打ち切らせた。

省吾は治癒の炎に包まれた二人を抱えて全力疾走。戦車のようにデスクを吹き飛ばしていく。

真紅の異形は壁を突き破り、雲のかかった青空に身を投げた。


「省吾か!怪我は!?」

「俺は平気だ。だが、矢上がまだ中に…」


 力の限り跳躍した省吾が落下した地点は、敷地の端に近い。

砲丸のような重量感をもって地面に激突。

その直後、省吾の変身が解けた。脱出まではもったが、もう一歩も動けない。

省吾は横になり、冷たい路面の感触を肌で味わう。


 本部の外、植込みのあたりに立っていた和成が落下した省吾に駆け寄る。

省吾は抱えた二人を離し、闇で満たされた建物内に這って戻ろうとした。

雅音がまだ戦っているはずなのだ。


「市村!」

「あー、局長…省吾は無事っ――あ?」


 外にいた局員の何割かが、同じ方を向いた。


――新手か?


 維持局での活動経験から、省吾は連想した。

いや、それより矢上の方だ。

新手は、外にいる所長たちに任せればいい。

建物内に戻ろうとした省吾の耳に、轟音が近づいてきた。



 午後2時過ぎの空の向こうから現れたのは、若い男の2人組だった。

彼らは戦闘機とバイクを混ぜたような、奇妙な物体に乗っている。

物体には車輪が前方に2つ、後方に1つ備えられているが浮遊している現在、それらは動いていない。

フロント部分は黒と銀の2色で塗られ、形状はクジラを思わせる。


「ねぇー、ついたよー」

「んー?」


 飛行物は複座式であり、前方の席に座る30近い男は、リラックスした様子で省吾たちを見下ろしている。

運転席の後ろでは、ぼさぼさ髪の少年が船を漕いでいた。男より若く、高校生くらいだろう。

男は背後に顔を向け、少年の身体を前後に揺らす。

少年は身体をビクッと震わせ、二度三度目を瞬かせてから男を見た。


「あれ、いっぱい外に出てるけど…」

「んー?中で何かあったんじゃない?」


 少年は席から身を乗り出し、地上の局員達をしげしげと観察する。

両者の距離は徐々に近づいており、この時点でおよそ30m。

この間、後輪の両サイドで羽を広げたようなスラスターが、炎を静かに吹き続けていた。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ