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魔女と魔女

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 夜中。 

早苗は秘密基地から移動し、浩紀の元に向かった。

携帯で呼び出し、千種公園で2人は落ち合う。

周囲にあるのは怪物の気配ばかりで、彼女達以外に人影はない。


「映像は見た?」

「見たけど…」

「同じ奴?」

「大体そうだけど、ちょっと違う…」


 早苗はじれったそうに顔を顰める。


「どっち?」

「あー、多分同じ奴だよ!きっと」

「そう」


 怪物だとすると、別個体なのだろうか?

しかし怪物が、兼がに出現した例は確認できていない。

攻撃手段の多彩さから見ても、異能者の可能性が高い気がする。


「ところで、俺らは行かなくていいの?ボス」

「TVに映りたいなら、どうぞ。私は遠慮しとくわ」


 街では多数の報道陣が、被害状況を伝えている。

今、浜松に出現すれば、どこかのカメラに撮られてしまうだろう。

それは早苗にしても、浩紀にしても歓迎するところではない。


「お、監視すんの?」

「ええ」


 黒い騎士を呼び出し、霧の怪物の現在地を確かめる。

青い怪人は浜松市内を飛び回り、およそ70名の食人者を殺害。最終的に2時間以上暴れ続けた。

彼は浜松城など、史跡を出来るだけ傷つけないように立ちまわっていたが、街が負ったダメージはそれでも深刻だった。

警官はおろか、自衛隊まで出動する騒ぎになったが、霧となって消えた主犯を追う能力は彼らにはない。


「あれ、消えた」

「どしたの?」


 食人者が豊橋市に入ったあたりで、映像が停止。

黒い騎士に幾ら命じても、追跡しない。

あちこち視点を切り替えてみたが、青い怪物も霧も見つからない。

3分経ってから、追跡は不可能と早苗は結論した。

こちらの念写を察知した様子はなかったが、何かしらの手段によって妨害したように思えた。




 BTD本部崩壊当日。

教団を監視していた際に、異世界人が本部に踏み込む瞬間を早苗は捉えた。

秘密基地の主にも情報を共有し、夏姫の能力で外見を変更。

空間を越えて、地下道を駆けるアルスラ達の前に姿を見せた。


「何か用?」


 フードを目深に被った15名の会員を引き連れた白い肌の女。

アルスラと名乗っている、幹部の女だ。

目元をサングラスで隠しているが、あれで見えているのだろうか?

辛うじて視界が確保できる程度の明りが点いている。異能者なら問題にしないが、彼女はどうか?


「貴方達に興味があってね。場所を移して話さない?魔術師のアルスラさん」


 アルスラは表情を崩さない。

会員達が息を呑む気配がしたが、早苗は無視した。

アルスラが口を開いたのは、二呼吸ほど置いてからだった。


「わかった。案内して頂戴」

「えぇ、ちょっと待って…聞こえた?」

『了解。すぐ入り口を開くから』


 早苗は通信機を取り出し、どこかに連絡を取る。

秘密基地の主も、彼女たちに興味を抱いたのだ。

早苗達の右手、壁に人ふたりが一度に通れる程度の穴が開く。

その向こうは、真新しい病棟を思わせる廊下。

早苗と夏姫は知った顔で穴をくぐり、アルスラ達を先導した。


「お、来たな。BTD」

「貴方は?」

「ここの持ち主。山本修児やまもとしゅうじって言います。よろしく」


 しばらく歩いていると、白衣の男が通路の向こうから現れた。

彼は円形の眼鏡をかけ、伸ばした髪を一つに括っている。

修児はにこやかな顔でアルスラに近づくと、握手を求めた。


「アルスラと言います。よろしく」

「修児。会議室かどこか空いてる?」

「おう。こっちだ」


 早苗達は修児についていき、通路の突き当りにあるエレベーターに乗り込む。

一度に30名を運ぶことができる大型のものだ。

アルスラ達は研究層の一角にある、会議室に通された。

部屋には18人掛けのテーブルと事務椅子。上座の側にホワイトボードが立っている。


「貴方も同席するの?」

「勿論。魔術師って聞いたらね、気になるじゃないか」


 夏姫が尋ねると、修児は平然と答えた。

彼は壁の側に並ぶ3脚の椅子のうち、左端に腰かけた。この場を仕切るつもりはない、と早苗に目配せをする。

早苗と夏姫、アルスラ達BTDのメンバーも次々と席に着く。


「こちらから質問したいのだけど、いい?」

「どうぞ」

「ありがとう。貴方はどれくらい私達の事を知っているのかしら?」

「…そこの会員達を、貴方が改造してるのは知ってる――」


 早苗が言い切る前に、席に着いた会員の一部が彼女に食って掛かった。


「改造だぁ!?」

「うちらは王の一部を受けてんだよ!適当に言うな!!」

「一部…?」


 アルスラは小さく溜息をついてから、説明を始めた。

BTD会員の大半は知らない事だが、コミュニティには秘密の階級が存在する。

ここにいるのはいずれも「騎士」の位階にある会員だ。

彼らは12人の王の片鱗を宿しており、常人よりも頑健な肉体を獲得している。


 会員の一人、若い男がフードを下ろす。

顔の右半分は鱗に覆われており、瞳は真鍮色。

左半分は一見、健常のように見える。

しかし、皮膚の下は細い触手で覆われており、感情が高ぶるとこれが蠢く。

首や顎の表面に管のようなものが4本浮かび上がり、ミミズのようにのたくってから姿を消した。


「あまり会員達を刺激するような事は、言わないでほしいわね」

「あぁ…ごめんなさい」


 早苗は心のこもらない謝罪をする。

それを聞くアルスラは内心、唇を噛んだ。

この街の状況を舐めていた訳ではないが、本当に見張られていたとは。

異能者とこのような形で対面したくなどなかった。

本来の力が出せるなら、異能による監視など直ちに察して見せるのに。


「後そういえば…、地下に礼拝堂のような部屋がいくつか設けていたわ。あそこで怪物を飼ってるのよ」

「ふぅん、何故?」


 アルスラは微笑を作り、修児の問いに答えた。


「彼らはコミュニティの戦力になるはずだったのだけど…多分、もう外に出たんじゃない?」


 アルスラは内心、舌打ちをした。

怪物と言ったが、おそらく飼育していた"落とし子"の事だろう。

地下で対面した事から、その辺りは予想できていた。アルスラが受けたショックは小さい。


――情報を読み取られないよう、術を施してはあるけど。


 どこまで効果が出るか…。本当に面倒臭いことになった。

あともう少しで、王達が降臨するというのに。


「人をやって確かめさせよう。で、アルスラさん?魔術が使えると聞きましたが、どういう仕組みなんで?」


 アルスラは自分が修める魔術の仕組みを説明した。

彼女の術は、言ってしまえば12人の王から賜わされる恩寵だ。

術者が詠唱――奇跡を請う文言を口にすることで、請う対象に見合った現象が起きる。

その為には、王との間に経絡を繋いでおく必要があり、普通人ではこの術は使用できない。


「聞いたことがないわね…、どの国で覚えたの?」

「習ったわけじゃないわ。夢の中で彼らの御姿を垣間見て、その時に授けられたの」

「あの予言も魔術?」

「違うわ。予言は予言よ」


 アルスラはきっぱりと言った。

予言が実現すると確信している様だ、と早苗は思った。


「運び女、って呼ばれてたわね?貴方…」

「あぁ、それは…」


 アルスラは自分の役割について説明する。

彼女は復活の日、王の1柱ハリマルドの器となる事が定められている。

その時、アルスラの意識はハリマルドの中に融けてしまい、彼女自身の記憶や人格は保障されない。


「ずいぶんと慈悲深い神様ね」

「フフ…王の依代になるんだもの。たかが人ひとりの精神なんて、簡単に消えてしまうでしょう」


 修児はアルスラと言葉を交わす早苗を見ながら、聞こえないくらいに小さな溜息を吐いた。


(随分と精力的に活動する…)


 怪物の次は魔術師と来た。

早苗は「人間に変わる新しい霊長」を生み出したい、と夏姫を通じて近づいてきた。

それを面白がった修児は協力を約束し、基地の一部を自由に使わせている。

どうも社会を変革したいようだが、修児は社会の趨勢にあまり関心がない。


――彼は自分達のルーツが知りたかった。


 なぜ異能者が生まれた?

名古屋が、愛知県が現在のようになり、怪物が蔓延るようになったのは何故?

早苗に手を貸していれば、そのうち明らかになるのではないか?今はそう考えている。

本音を言うと異能者の身体を調べてみたいのだが、流石に危険すぎる。

修児は基地を除くと戦闘向きの能力を持っておらず、懐に入られると弱いのだ。


――急ぎでもないし、地道に進めていくさ。


ありがとうございました。

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