災厄は夜に潜む(4)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
東伊場の工場前、年季の入った一戸建てから大型の食人者が飛び出す。
なめした革のように変化した皮膚の所々が裂け、赤い肉が覗く。
大型化した両前腕は鎧のような外殻に覆われ、指先は鉤爪のように鋭い。
うなじから腰にかけてを覆う赤い肉腫から、臭い液を垂れ流している。
その右肩に、赤と緑のまだら模様が歯を立てる。
四肢をしっかりと絡め、顎に力を込めるが噛み切れない。
食人者が暴れる事で路面に亀裂が走り、通行中の車が道を塞ぐ。
回れ右で引き返す者もいれば、留まって撮影を始める者もいた。
霧となった道隆は彼らを見つけると、攻撃を加える。
道隆は急降下しつつ固体化。
魔物が消失した直後、食人者の身体が蹴りを喰らい、横っ飛びになった。
青い怪人が現れたことで、野次馬の間にどよめきが起きる。
(こいつか…?2m)
それくらいありそうだが、目の前の怪物は人間には見えない。
あるいはその部分だけ、公には伏せられたのか?
食人者は一直線に突っ込み、爪を繰り出す。
思索を打ち切った道隆はこれを躱し、散弾銃の様な蹴りを繰り出す。
勢いよく吹き飛ぶが、食人者はすぐに立ち上がる。ふらつきはしたが、出血は見られない。
――固い!
道隆の一撃で体勢を崩し、追い打ちされるも決定打にはならない。
武器化した身体は攻撃を受けながらも、休む事無く治癒を続ける。
住宅街の中年男性とは、継戦能力が段違いだ。
食人者の爪も届きはしたが、青い装甲には引っ掻き痕すら残らない。
「すげー!!CGじゃねーよ、あれ!」
「ねー…早くいこーよ、ヤバいよ」
屯している野次馬はざわめきながら、戦闘する道隆を撮影する。
道隆が瀑布を叩きつけると彼らは10m近く飛ばされ、その手から携帯電話が滑り落ちた。
野次馬の視界を遮る水壁の向こう、道隆は食人者に拳を振るう。
ガードするだけの知能を持っていたが、変身態の膂力の前では役に立たない。
食人者は立ち上がると、上半身に力を込める。
直後肩から上腕にかけて、無数の針がびっしりと覆う。
小指大のそれは全て先端を道隆の方に向けている。
道隆が地面から足を話した直後、針が射出された。
針はジャンプした道隆の足元を通り過ぎ、水壁の向こうに消える。
野次馬たちは既に逃げ出しており、針は勢いを失って地面に落ちた。
道隆は杭を3本、空中から食人者に向けて撃ち出す。
0.1秒で着弾した杭が放った衝撃波が街路樹を倒し、窓ガラスを砕く。
轟音と共に土煙が上がり、食人者の姿が消える。
まもなく煙が晴れ、崩壊した路面と赤黒い肉片が露になった。
しばらく道隆は食人者の亡骸を眺めていたが、組成する様子が無いとみるとその場から飛び去った。
道隆は福祉センターのある角を抜けて、浜松駅を目指す。
パトカーのサイレンを遠くに聞きながら、10秒ほどで駅前に辿り着いた。
夜の浜松駅の高架近くでは、先ほどの食人者より一回りは大きな個体が警官達を相手取っていた。
大の大人を軽々と持ち上げ、苦もなく引きちぎる。
顎を大きく開いて吐き出されたのは黄色い液が、人体も路面も等しく焦がす。
地上で市民が逃げ惑う一方、近くのビルの高層にいた者は窓から身を乗り出し、食人者を撮影していた。
しかし、撮影者は携帯を掲げながら、はらはらと頬に滴を伝わせている。
道路の隅では、蛾のような魔物が弱弱しく震えている。
この魔物は対象を悲しい気持ちにさせる。
直接戦闘を苦手としており、ここまで持ちこたえていた事が奇跡であった。
視界に入れた道隆は、すぐに魔物を精神世界に呼び戻す。
道隆はその場に降り立つと、まず取り囲んでいた警官達を散らせた。
循環する体液を思念で掴み、投げ飛ばす。
彼らは自由が戻ると道隆に銃口を向けたが、それに構わず食人者を見据える。
何人かは発砲してきたが、今の道隆にとっては紙礫と大差ない。
食人者は道隆と目が合うと、手に持っていた死体を口に押し込んだ。
慌てるように咀嚼していく中、その身体が形を変えていく。
全身から蒸気を吹き出し、身体の幅が倍くらいに広がる。
両足はワニかゾウのように逞しくなるが、巨大化した胴体を支えきれず、四つん這いになる。
塞がった四肢を補うように、一対の腕が背中から生える。頭部がサメのように変化し、鼻を頂点に3つに裂けた。
サメ頭は開いた口を突き出し、道隆を噛みつこうとした。
歯を合わせた拍子に、金属質の音が鳴る。
道隆を側面に回り込むと、拳打を連続で繰り出す。
傾いだ頭上から、大きな爪が振り下ろされる。
身体を回し切った後では回避しきれず、道隆は地面に引き倒されてしまうが、頭部に傷はつかない。
――あ”つ”!!
起き上がる道隆の背中に、黄色い液が浴びせられる。
肉の焼けるような音が鳴り、煙が立ち上る。
道隆がそれを見ることは無かったが、背中には強烈な痛みが走った。
霧となって間合いを離し、固体化してサメ頭を見据える。
サメ頭の動作は、東伊場の食人者と比較すると緩慢だ。
しかし、背中の腕は本体の遅さを補うように、敏捷に動く。
背中の腕には関節が二つあり、サメ頭は器用に青い怪人を狙う。
道隆は手刀で応戦しつつ、再び気体化した。
道隆はサメ頭の背中の上で固体化、右手側にある腕を手刀で切りつけた。
長い腕に裂け目が入るが、切断には至らない。
動かす度に断面から、黄色い液体が潮のように噴き出す。
道隆は体表を蹴って素早く離れたが、右手から焦げる音が立つ。
ブルーの甲殻が溶け、赤黒い肉が覗くが、瞬く間に新しい細胞が傷を塞いでいく。
「う”あ”!!」
サメ頭が前進した事で背中から落下するも、道隆は浮遊して態勢を整えた。
道隆が構えた両腕にエネルギーが注がれる。
まもなく腕を構成する分子が、原子に分離された。
サメ頭は姿勢を変え、道隆目がけて突進。食らいつかんと大口を開ける。
道隆は霧となってこれを回避。霧の中、眩い光輝を放つ両腕だけが浮かんでいる。
両腕はミサイルのようにサメ頭に刺さった。
その身体を瞬時に燃焼させた時、轟音が高架近くの空気を揺るがせた。
戦闘が行われている交差点、半径30mが一瞬で巨大な炎に包まれる。
ガラスやアスファルトなど、様々な屑が辺りを吹き荒ぶ。
近くに建っているコンビニは黒く焦げ、陳列されていた商品の半分以上が無残に炭化した。
至る所から煙が立ち昇り、商店から火の手が上がる中、道隆は片膝を立てて座っていた。
(うそぉ…)
サメ頭は皮膚を泡立たせつつ、道隆に近づいてきた。
その頭上100mから、杭がトドメに放たれる。再び音が轟き、サメ頭の身体は千切れ飛んだ。
静かになった交差点を見渡してみると、あちこちに車両や警官の残骸が散らばっている。
道隆はその場から飛び去り、各所で戦っているであろう魔物達の元に向かった。
3体と戦ったが、それぞれ造形が異なる。
放った魔物の殺傷力次第では、返り討ちに合う可能性すらある。
魔物達に任せきりでは、今日中に終わらないかもしれない。
ありがとうございました。