災厄は夜に潜む(3)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
午後1時、霧と化した道隆は浜松市に入った。
浜松駅に向かう途中、怪しげな気配を2つ感知した為、近い方に道隆は接近。
一部を分離させて両方を追跡することも可能だがその場合、肉体操作の精度が落ちる事は避けられないだろう。
駅からおよそ1㎞の距離に建つ高校の駐車場。
気配を放っているのは、その側を歩いている中年男性。
近所に住んでいるのだろう。ラフな格好で、勝手知ったる顔で歩を進めていく。
中年男性は変わらぬ歩調で、住宅街に入る。
そのうちの1軒の玄関を開けると、彼は2階建ての中に消えていった。
道隆が隙間から2階建てに侵入すると、寝室に横たわった死体が目に入った。
造り替わった中年男性の犠牲者である。
現在は保存食と言わんばかりに、中年男性によってちびちび齧られ続けている。
道隆は死体に口をつける中年男性の背後で固体化、その背に右拳を撃ち込む。
(ん、まだ生きてる?)
右腕を引き抜こうとした時、中年男性は両腕を武器化させて襲い掛かってきた。
無数の矢尻を生やした鈍器と化した腕が叩きつけられるも、青い異形はビクともしない。
右ひざを高々と掲げて、前蹴りを見舞うと中年男性の腹部が弾け飛ぶ。
ちぎれた上半身がベッドの傍に転がった。
上半身からはタコ足のように腸が飛び出している。
それを見る道隆は平然とした様子で、中年男性の体を触る。
異能者になる以前だったら、怯えて飛び上がっていただろう。
身体から放射される精神エネルギーが、道隆の精神を保護しているのだ。
――道隆の知覚に、異能者の気配が侵入する。
気配は住宅街の中にあったが、瞬き程の間に移動。
道隆は妖気の移動先目がけて、50本の杭を降り注がせた。
彼が生成する金属製の杭は成長を重ね、弾速は今や秒間1200mに達する。
目標地点にあったのは、静岡県内に多数出店しているスーパーマーケット。
店舗と言わず駐車場と言わず、あらゆる場所が衝撃によって破壊されてしまった。
(異能者、儂の動きに気づいたやつが…?)
面倒事に首を突っ込んだ気がして、道隆はうんざりした。
家族が巻き込まれたら困るから、封鎖の外で妙な行動をとるのはやめてほしい。
気配は消失している。先ほどの異能者は死んだのではないか?
生きている可能性はあるが、面倒臭いので死体の確認はしない。
中年男性の死体は消失していない。
市内に現れる、倒すと消失する怪物達とは違うようだ。
半分に分かれてしまったが、2mも無かったように思う。
せいぜい170㎝、自分より僅かに低い程度のはず。
――誰かさらうかー?
気は進まないが、一度この怪物について調べてみなければなるまい。
ただ目の前の死体は出血がひどく、魔物の中に収納するのは躊躇われる。
自分の内的世界が汚れそうな気がするのだ。
勿論、このまま持ち歩く事など不可能。別の怪物を綺麗なまま入手したい。
夕方には早い時間、道隆は二階建てを中心に霧を広げた。
範囲内で気配が存在するのは郵便局に1つ、中学校に3つ、高校に1つ、住宅地に4つ。
発生源を求めてまず住宅地に向かったが、捕捉したのはいずれも中高年の男女。
しばらく考えてから、道隆は下校、退勤時間まで時間を潰すことに決めた。
年を取り過ぎており、食指が動かない。
午後3時を過ぎ、道隆は高校の方に霧を集中させる。
しばらく待っていると、下校する学生が次々と校舎から出ていく。
その中に、気配の発生源を見つけた。身長は170㎝前後の男子。
二重瞼のくりっとした目をしており、幅広のきゅっと引き締まった口が印象的だ。
――さらう…、ちがう、此奴なら。
校門に赤い外套に身を包んだ人型。
頭部では十数枚の花弁が、渦を描くように重なっている。
赤外套は人混みを飛び越えて、男子に右手で触れた。
二重瞼の少年が突然引き倒され、下校中の生徒達にどよめきが走る。
赤外套の左手に黄色い薔薇が出現。倒れた男子に構わず、道隆は赤外套と黄色い薔薇を回収。
道隆は繁華街から離れ、人気のない雑木林で固体化。
赤外套から黄色い薔薇を受け取り、額にそっと当てる。
薔薇が触れた瞬間、薔薇に籠められた記憶が再現された。
視点は3人称。男子の16、7年近い人生を題材とした、映画を見ているようだ。
プライベートな記憶まで容赦なく映し出され、道隆は吐き気を催す。
再現の経過時間が1か月前を切った時、道隆は大きな驚きを以てその情報を見た。
子供の手首くらいの奇妙な生物が、男子に飛び掛かってきたのである。
生物は長い尾と楕円形の身体を持ち、全体としてはカブトガニに似ていた。
それが空中で縫い針のような器官を射出した直後、少年は顔を抑えて呻く。
指で掻き出そうと試みたようだったが、既に針は体内に潜り込んだ後だった。
男子は即座に生まれ変わる。
手足を武器化させ、大型の生き物を狩る捕食者となった。
十数mを楽に跳び、豊富な体力をもってすれば1昼夜戦闘し続ける事すら可能。
感情が希薄化し、生存欲求が増した事で他者を傷つける事に躊躇がなくなった。
周囲に変化を認識させていないのは、その方が都合がいいから。
(記憶だから、此奴が知らない事は分からないんだよな…)
次はこのカブトガニもどきの確保を目的にすればいいだろう。
この生物の記憶――気は進まないが――を閲覧すれば、間違いなく真犯人の元に辿り着けるはず。
道隆は浜松市の中区に霧となって広がり、探索するがカブトガニもどきは見つからない。
空が赤みを帯びた頃、捕捉した食人者は32名にのぼっていた。
これが多いというべきか、少ないというべきかは分からない。
西区の捜索を終えた頃、完全に日が暮れてしまった。
(今日の内に32人、始末しとくか)
道隆は感知した怪物達だけでも始末しておくことにした。
放っておいても自分の利にはならない。
道隆は命令を下し、中区と西区に数十の魔物を投下した。
放たれた魔物達は怪物達の元へ、猟犬のように殺到する。
殺し合いが始まった。
飲み屋で、マンションで、道の上で道隆が放った魔物達は、食人者に襲い掛かった。
彼らは散り散りに逃げ出し、それも叶わぬとみると人間への擬態を解く。
手や足、頭を硬質の武器に変え、辺り構わず振り回す。
食人者達は魔物を認識できない為、被害は徒に広がっていった。
ありがとうございました。