災厄は夜に潜む(2)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
翌日の早朝、道隆は内的世界への潜行を試みる事にした。
彼は度々、自分の精神の深奥を探索している。
布団に身を横たえた道隆の意識が眠りに落ちる。それと同時に、彼の意識は濃紺色の空間に沈んだ。
異空間を漂う道隆の前後左右を赤、青、黄など色とりどりの光線が行き交う。
まもなく道隆の視界一杯に、白い輝きが出現。その意識は光の中に吸い込まれていった。
天地定かならぬ白の中、道隆の内側で感情が荒れ狂う。
欲望が渦を巻き、過去の思い出が沸騰するように蘇る。
そのうちには魔物達に収納した数々の収集品も、道隆の一部として漂っている。
魔物達はこの白から切り離される事で実体を得て、また還っていくのだ。
道隆は情報の奔流から魔物を選り分けていくが、お目当ての能力に行き着かない。
(あると思うんだけど、結界を敷く能力)
自分に代わって県を隔離する存在がいてくれれば、自分は自由に動ける。
ただ、結界の管理を委譲した際に何が起こるか分からない。
その不安が潰えない為、手間だとは思いつつも結界の管理に勤しんでいるのだ。
膨大な情報が道隆を包み、押し流していく。
そこには彼が内包する膨大な要素があった。
単細胞の生命、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、人間。
さらには男性像、女性像。これまで見聞きし、体験してきた事象が駆け巡る。
――我を生み出した者…、我が父道隆…。
――誰だ?
ここでは思考が言葉となる。
口を開かずとも意思疎通できるのは便利だが、外ではデメリットの方が多いだろう。
道隆が返事をした直後、その眼前に像が形成されていく。
卵型の腹部を持ち、鱗を鬣のように生やした、飛蝗に似た頭。
腹部には毒々しいほど赤いスリットが2つ走り、背中では蜘蛛の様な触肢が3対蠢いている。
――なにこれ気持ち悪ィい!
――聞こえているぞ、父上…。
――あぁ、そうなの。便利だけど嫌な空間だな。
道隆が相手に関心を向けると、飛蝗頭の情報が明らかになる。
目の前の怪物の能力は、環境の改変。
特定の土地に降りる事で、道隆が定めた法則を指定した範囲に垂れ流す。
――お前…愛知県を結界で囲う事って、出来る?
――既に異界で覆っているだろう?一度、覆っている異界を消さなければ、新たな異界を設定することはできないぞ。
飛蝗頭の言う異界とは、青い魔人として行使した結界術のことだ。
――そのまま使うことはできないのか?
――我が知っていると思うか?自分で調べろ。
――マジかよ…。
道隆とて、己の扱う結界術の全てを知り尽くしているわけではない。
戦闘が始まる前に簡単なものを幾つも作ってきたし、自宅と愛知県、2つの結界をおおむね6か月維持している。
一から十まで明らかにする必要はないと思っているし、現在の習熟度で十分、上手くいっていた。
――ちょっと調べてみるか…、用が出来たら呼ぶ。
――委細承った。
道隆の視界から輝きが薄れ、まもなく目を覚ます。
時計を見ると、時刻は9時を回ろうとしている。
道隆は顔を洗ってから、朝食の準備に取り掛かった。
朝食を済ませてから、道隆は100mほど離れた場所に建つ空き家に向かった。
中に忍び込むと変身を行い、空き家の内側に聖域を形成し始める。
正午を回った時点で、小規模な異界が構築された。
時間を掛けた分だけ聖域の規模は大きくなり、異能者に抵抗できるレベルを構築するとなると3~4時間はかかる。
(これ後回しにした方がいいかな…)
実験を後にして、調査を優先させた方がいいかもしれない。
この後、聖域の運営権を魔物に委譲し、内部に別の領域を作るとしたら、確実に日が暮れる。
その間に怪物の勢力が拡大するかもしれない。
いっそ、人間に擬態する怪物達を感知する端から、殺していくのもいいか?
その手段をとる場合、騒ぎになるのは避けられない。
封鎖の外にいる、家族の元に被害を届けてはならない。
いち早く、怪物を根絶させる。
怪異を抑え込む結界を、維持させなくてはならない。
(ゆっくりしてたら間に合わなくなる。さっさと委譲させてみるか…)
自宅の結界は最悪、破壊されてもいい。
もう一度形成すればいいだけだ。
食料も手段を問わなければ、いくらでも調達できる。
道隆はスズメに似た魔物を召喚。
淡色の羽毛で覆われた、テーブル並みの巨体を持つ怪物に結界の運営権を委譲した。
彼あるいは彼女は栄養を摂取することで子供を産み、巣を作る性質を持つ。
拠点の運営に長けると考えたのだ。
道隆は変身を解かず、霧となって帰宅。
途中、足軽のような怪物とすれちがったが、気付いた様子はなかった。
道隆は緊張した面持ちで自宅の床に横たわっていた。
取り出していた私物はそう多くない。全ての荷物を物体収集の魔物にしまい、周囲に気を張る。
道隆の自宅から少し離れた公園に今、飛蝗頭が浮遊している。
彼は自らの造物主の合図を待っていた。
念を受け取り次第、結界の管理権を受け取り、愛知県全体を己の能力に嵌めるのだ。
〈始めてくれ〉
〈良し。すぐに始めるが、何が起こっても良しとしろ?私は与えられた力を流すだけだからな…〉
道隆が指定した理が、愛知県を沈める。
飛蝗頭の力が1~2秒ほど大地を震わせ、封鎖内の人々は地震か、と騒いだ。
震度2の揺れは愛知県のみ、四方の守護の内側を正確に襲い、外には一切影響が現れなかった。
封鎖内の異能者達だけは、この地震が何者かの能力によるものであると、気付くことができた。
――問題ない。何も、問題ない。
道隆はゆっくりと立ち上がり、自宅の様子を確かめる。
変身を行い、結界を調整するが異常は見られない。
飛蝗頭の領域と、青い異形の領域。2つは共存できる。
安堵した彼は戸締りを確かめてから、霧に変化した。
ありがとうございました。