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災厄は夜に潜む(1)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 時はディエゴ達が街に流れてきて2日後、BTD本部訪問前の朝に遡る。

道隆の周囲では「特別製」の事件以降、目立った異変は起きなかった。

異世界人の情報も掴んではいたが、揉め事を起こすわけでもなさそうなので静観する。

市内、県内でならどれだけ暴れてくれてもかまわない。自分を巻き込む場合は、話も違ってくるが。


 道隆は半熟になった溶き卵に、白飯を投入した。

更にチャーシュー、人参、ネギを加えて、さらに炒める。

道隆は調理し終えた炒飯を、皿に盛りつけた。


(まずくない、まずくないぞ!)


 一口ごとに、炒めたネギと醤油の香りが広がる。

ご飯のパラリ感が足りない気がするが、食べられない程不満は無い。

レンゲで炒飯を掬いながら、道隆は細やかな感動を味わっていた。


 聖域とかした自宅に籠り、時間を持て余した道隆は食事を自炊することにしている。

食材は自宅に満ちる法則によって生産される為、買い出しに行く必要すら無い。

あらゆる面倒ごとから逃げ、楽に頭まで浸かりきることができる。


(春が来たな…!)


 昼食を済ませてPCを弄っていると、一件のニュースが目に留まった。


――浜松市内で先週と今週、6件の殺人事件が起こっている。 

どの被害者も身体の一部が持ち去られており、現場には夥しい量の血痕が残されていた。

目撃証言があり、犯人は190㎝~2mくらいのかなり大柄な人物らしい。


(2m…)


 日本ではまず見かけない体格だ。

そんな人物、警察が捜査すればすぐに見つかりそうだが、どこかに隠れているのだろうか?

ひょっとしたら化物かも知れない…調べるだけ調べてみるか?

もし怪物だったなら…。


 道隆はPCを閉じてから、自室で変身を行う。

すぐさま気体と化し、自宅を後にした。

その1時間後、浜松駅のロータリー上空に蠢く霧が出現する。

霧となった道隆は周囲の気配を探った。被害現場が分からなかった為、現地で調べる事にした。

超常が関わっている場合、しばらく彷徨っていれば手がかりを掴めるはず。




 午後2時過ぎの浜松駅前を、多くの人が行き来している。

鉄道網が壊滅状態にある名古屋では、ついぞ見なくなった光景だ。

懐かしさを覚えた時、道隆は違和感を覚えた。


(こいつは…?)


 道行く人の中に数名、妖気を帯びた者が混じっている。

異能者ではないらしいが、道隆は内心冷や汗をかいた。

偶然か、故意のものか?怪異が県外に漏れている…。


 妖気を帯びている一人、10歳前後の少女を連れた母親らしき女性を道隆は追跡。

彼女が道隆に気づいた様子はなく、魔の霧が見ている中、5階建てのマンションの一室に入っていく。

住所を把握した後、使い魔を二体放ってから、道隆は名古屋市に戻った。

結界が弱まる為、長々と県を開けるわけにはいかない。

最悪、身体だけは県内に置いておかなければ。



 それから深夜1時、目を覚ました母親は着の身着のままで自宅を抜け出した。

眼が冴えるのだ。消化器が疼き、このままでは眠れそうにない。

単なる夜食で腹が膨れない事は、本能に刻まれた命令が教えてくれる。

この飢餓のせいで睡眠時間が減っているが、二徹三徹してもコンディションが落ちないくらいに体力がついている為、問題ない。


 母親はマンションの外を、人目を避けつつ駆ける。

左見右見してから、母親は落ち着いた様子で15mほど跳躍。

体内時計が狂ったのと同時に、異常な身体能力を発揮できるようになった。

彼女は猿のように街を跳ね回り、やがて繁華街に到着。強かに酔っているスーツ姿の男に目星をつけた。


(はぁ…お腹すいた)


 壁面に右手の指を立てながら、左手を触手か鎖分銅のように変化させる。

感覚が消えた前腕が波打った直後、鱗状の突起に隙間なく覆われた。

松かさに似たそれはあっという間に男の身体に絡みつき、彼の口を塞ぐ。

軽々とその身体を持ち上げ、手元に引き寄せた。

母親は男を異形化させた左手で抱えたまま、何処かに向かって飛び去った。


 それを赤と緑のまだら模様の魔物が観察していた。

頭部には口しか無く、背中に人間の眼が五つ、バラバラについている。

赤緑の魔物はヤモリのように四肢を壁につけて、母親の行動を見つめていた。


 それは母親の自宅近くまで走り去ると、姿を霧のように消す。

隠形である。道隆の従えている魔物達は、霊感の持ち主で無い限りその姿は見えないが、これはその比ではない。

優れた知覚能力の持ち主でない限り、異能者であってもその存在を把握することはできない。

道隆は同じ種類を二十数体、心の中に飼っている。


 午後2時に道隆は一旦、赤緑の魔物を帰還させた。

すぐ後、人さらいがあった地点に投下。

この僅かな時間に道隆は流れ込んできた情報を自意識に統合、情報収集を済ませてから魔物を内的世界から再度切り離したのだ。

浜松市に出現した魔物は、再び姿を隠蔽する。


(どうやって調べる?怪物がいる、そこからどうすればいい…)


 人間に化けた怪物が潜んでいることが分かった。

最終的には全て駆除したいが、総数も把握していない怪物の群れを相手取るなど考えるだけで憂鬱になる。

あの母親は倒すべきだと思うが、子供は人間のように感じた。


――まず、2mの方を捜索しよう。


 あの母親はどう考えても、2mも身長は無い。

家族の眼を忍んで真夜中に出ていくあたり、ニュースの犯人のような凶暴さは感じない。

彼女は周囲の目を気にして、自分を抑えている。

2mの方を殺害するなり、捕らえるなりしてから、次の行動を決めよう。







 深夜1時、母親が男を連れ去る様子を早苗は眺めていた。

現地にいるのではなく、黒い騎士が液晶にその場面を映し出しているのだ。

空を飛んだり、壁に張り付いているように視点が動く。

風景を流していく最中、壁に張り付くヤモリの様な人型がスゥっと消えていく様を、早苗は目撃した。


「……」


 騎士に消えたそれを追跡するよう命じると、映写された風景が街中を出鱈目に動く。

黒い騎士は過去を辿る事も、未来を予知する事も出来ない。早苗は仕方なく、黒い騎士を自身の内側に呼び戻す。

画面から視線を外し、思案する。

ここは「秘密基地」の早苗の部屋。住んでいたマンションは現在、電気が通っておらず、他の住人も姿を消している。

彼女達も住居を移しており、今はここで寝起きしていた。


 怪異は愛知県の外に出ていない。

五本の柱によって外部から隔離された名古屋より外、愛知県内の市街は定期的に害獣駆除部隊が巡回している。

出現した怪物達は住民を見つけると襲い掛かっていくが、県境から外に出ようとはしない。


――何故、愛知県のみなのか?


 偶然か、何者かの意思によるものか。

早苗は興味がない。「そういうこともあるだろう」位にしか、考えていない。

ただ、この異変が愛知県だけで終わっては面白くないので、外に広げようと考えている。


 ミュータントは失敗だった。

能力は十分だと思ったが、人間だった頃の精神を引きずりすぎている。

その為、次の生物を作成した。

夏から実験を繰り返し、ロールアウトしたのが12月の頭。


(改良を繰り返したとはいえ、暴走の可能性は無くなった訳じゃない…)


 早苗は明日、夏姫に浜松に向かってもらうよう頼むことにしてから、寝に入る。

自分が出向くより、テレポート能力を持ち、探知範囲も広い彼女に向かってもらう方がいい。


ありがとうございました。

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