表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/152

吸血鬼女王には弱すぎた(2)/儂とお前は似ている

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・展開次第でハーレムもあるか?

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


(独りになるなんて嫌だよ…)


 無事、家を出て逃げることができたが、道隆以外に当てはない。

それにしたって、自分が勝手に期待しただけ――わかっている。だから誠心誠意お願いしなければならないのだが口が重い。

こんな厄介な自分を受け入れてくるわけが無いと思ってはいるが、それを孤独への恐怖が勝った。


 道隆は冷ややかに自分を見つめている。

道隆は何も言わず、香菜が話し出すのを待っている――――味方は必要だ。間違いなく。

彼は自分に付き合ってくれる。これで駄目なら、もう駄目だ。


「誰にも言わないで…」


 香菜は蚊が鳴くような声で言うと、故郷で為したことを語り出す。

母親の血を吸ったこと、父親にクラスメイト、担任まで暗示にかけた事。

道隆は口を挟む事なく、香菜が語るに任せた。


「あそこには帰りたくない。昼間は役立たないけど、夜は結構強いし、血は、操ってから吸えば殺さなくていいし…」


 香菜は喋りながら、内心自嘲した。

だったらそうすればいい。これまでそうしなかったのは、人と目を合わせるのが怖いからだ。

目線が交わらない限り、魅了の魔眼は効果を発揮しない。他人の顔を見たくないのだ。


「だからお願い、あの此処に…!」


 匿って?置いて?助けて?どれでもあるし、そのどれも違う気がする。

受け容れて欲しいだけだ。辛かったね、君は悪くない、と言ってほしい。


「…ったか?」

「え?」

「儂と出会うまでに、誰か襲ったか?」


 困惑する香菜だったが、質問の内容を呑み込むと、我知らず瞼を固く閉じた。

心臓に針が刺されたような痛みが走る。震える手でジーンズを握りしめた。

まさか、そんなという思考と、やはりという諦観がねちっこく絡み合う。


「ま、やっちまったもんはしょうがないな。しばらくここにいろ」


 香菜の首が、すとんと落ちる。

死刑宣告を待っていた囚人が、いきなり釈放されたら、こんな気持ちになるだろうか。

緩慢な動作で首をあげると、道隆は先程と同じ目で香菜を見ていた。


「武田さん…大手のコミュニティがアンタを探してるから、壁の外には出るなよ。部屋は空いてるところを適当に使って」


 そこまで聞いてようやく、香菜は安堵の息を吐いた。

驚きで硬直していた心に、喜びが広がっていく。良かった、やっぱり良い人だ。


「あ、あの、ありがとうございます!私、なんでもします!だからその、見捨てないで!」

「あー、はいはい」


 道隆は立ち上がり、玄関扉を開ける。

廊下には咲世子が一人で立っており、薄い笑みを浮かべて、道隆と香菜を見上げていた。

聞かれただろうか?香菜は大量の石を呑み込んだような重圧を覚えるが、咲世子は無言のまま、空き部屋に入る香菜を眺めていた。


「受け入れたんだ、あのおねーさんの事」


 咲世子が口を開いたのは、香菜が扉を閉めた後。

当たり前のように道隆の部屋に上がり込んでから、呟くように言った。


「あぁ…」

「小太りのクラリモンド。無駄な肉がつきすぎだけど、男の人はあれくらいのほうが好きなのかな?」

「そんなんじゃないよ」


 香菜は自分に似ている。

ただ、自己肯定の度合いが自分より低く、罪悪感に苛まれているのだ。

そして運がない。始まりの時点で身内を手にかけてしまっている――自分は違う。

だが、社会的な立場は、大体似たような物だったろう。教室の隅で/職場の隅で、独りで帰宅時間を待っている私/儂。


 しばらく保護者になってやろう。

同情したのではなく、お前より余裕があるから。

道隆は能力と引き換えに平和を失い、家族を捨てた代わりに行動力を得た。彼女を見ていると、自分が何者であったか思い出す。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ