吸血鬼女王には弱すぎた(2)/儂とお前は似ている
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
(独りになるなんて嫌だよ…)
無事、家を出て逃げることができたが、道隆以外に当てはない。
それにしたって、自分が勝手に期待しただけ――わかっている。だから誠心誠意お願いしなければならないのだが口が重い。
こんな厄介な自分を受け入れてくるわけが無いと思ってはいるが、それを孤独への恐怖が勝った。
道隆は冷ややかに自分を見つめている。
道隆は何も言わず、香菜が話し出すのを待っている――――味方は必要だ。間違いなく。
彼は自分に付き合ってくれる。これで駄目なら、もう駄目だ。
「誰にも言わないで…」
香菜は蚊が鳴くような声で言うと、故郷で為したことを語り出す。
母親の血を吸ったこと、父親にクラスメイト、担任まで暗示にかけた事。
道隆は口を挟む事なく、香菜が語るに任せた。
「あそこには帰りたくない。昼間は役立たないけど、夜は結構強いし、血は、操ってから吸えば殺さなくていいし…」
香菜は喋りながら、内心自嘲した。
だったらそうすればいい。これまでそうしなかったのは、人と目を合わせるのが怖いからだ。
目線が交わらない限り、魅了の魔眼は効果を発揮しない。他人の顔を見たくないのだ。
「だからお願い、あの此処に…!」
匿って?置いて?助けて?どれでもあるし、そのどれも違う気がする。
受け容れて欲しいだけだ。辛かったね、君は悪くない、と言ってほしい。
「…ったか?」
「え?」
「儂と出会うまでに、誰か襲ったか?」
困惑する香菜だったが、質問の内容を呑み込むと、我知らず瞼を固く閉じた。
心臓に針が刺されたような痛みが走る。震える手でジーンズを握りしめた。
まさか、そんなという思考と、やはりという諦観がねちっこく絡み合う。
「ま、やっちまったもんはしょうがないな。しばらくここにいろ」
香菜の首が、すとんと落ちる。
死刑宣告を待っていた囚人が、いきなり釈放されたら、こんな気持ちになるだろうか。
緩慢な動作で首をあげると、道隆は先程と同じ目で香菜を見ていた。
「武田さん…大手のコミュニティがアンタを探してるから、壁の外には出るなよ。部屋は空いてるところを適当に使って」
そこまで聞いてようやく、香菜は安堵の息を吐いた。
驚きで硬直していた心に、喜びが広がっていく。良かった、やっぱり良い人だ。
「あ、あの、ありがとうございます!私、なんでもします!だからその、見捨てないで!」
「あー、はいはい」
道隆は立ち上がり、玄関扉を開ける。
廊下には咲世子が一人で立っており、薄い笑みを浮かべて、道隆と香菜を見上げていた。
聞かれただろうか?香菜は大量の石を呑み込んだような重圧を覚えるが、咲世子は無言のまま、空き部屋に入る香菜を眺めていた。
「受け入れたんだ、あのおねーさんの事」
咲世子が口を開いたのは、香菜が扉を閉めた後。
当たり前のように道隆の部屋に上がり込んでから、呟くように言った。
「あぁ…」
「小太りのクラリモンド。無駄な肉がつきすぎだけど、男の人はあれくらいのほうが好きなのかな?」
「そんなんじゃないよ」
香菜は自分に似ている。
ただ、自己肯定の度合いが自分より低く、罪悪感に苛まれているのだ。
そして運がない。始まりの時点で身内を手にかけてしまっている――自分は違う。
だが、社会的な立場は、大体似たような物だったろう。教室の隅で/職場の隅で、独りで帰宅時間を待っている私/儂。
しばらく保護者になってやろう。
同情したのではなく、お前より余裕があるから。
道隆は能力と引き換えに平和を失い、家族を捨てた代わりに行動力を得た。彼女を見ていると、自分が何者であったか思い出す。
ありがとうございました。