肥えた女は理想郷を探す(1)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
「病院に連れて行く――」
「び、病院は止めて!」
「…?」
「お金、無いから…、大丈夫です。包帯でも巻いてれば治るから」
道隆は首を傾げつつ、魔物を呼び出した。
艶やかな鱗で覆われた蛇だ。大蛇に巻き付かれた彼女は悲鳴を上げるも、皮膚から暖かさが染み込んでくると静かになった。
傷が癒え、痛みが引いたのだ。
「で、家何処?」
「えぇと、名古屋の…中区」
「中区?わかった」
道隆は女を抱えあげる。
「え、ちょ」
「あ、ごめん」
「あ、あの大丈夫でス…ごめんなさい」
身を捩ったので、地面に降ろすと女は首を左右に振った。
泣きそうな顔で見つめてきたので、恐る恐る抱えると、今度は抵抗しなかった。道隆は飛行を再開。
2人の間に会話は無かった。だからだろう。道隆は後方に過ぎ去る街並みを、珍しそうに眺める女の様子に気づく事が出来た。
異能者の気配は無い、空中散歩は初めてらしい。道隆は若宮大通に女を降ろす。
「ここから、一人で帰れそう?」
「あ、はい、大丈夫ス。あの…優しいスね」
「いや、別に」
自分でやると決めた事を、やりかけで放り出すのが好かないだけだ。
それを反映してか、異変前も仕事ぶりは真面目だった。助けるか、と決めて行動したから、途中まで送ってやることにする。
とはいえ、それもここまで。初対面であまり踏み込むのは怖いだろうし、これきり会うことは無いだろう。
道隆を見送った女――東郷香菜は目についた空きビルに駆け込んだ。
曇天であることに加え、屋内に入った事で、身体が軽くなった。晴天なら、10m走るだけでへたりこんでしまう。
(優しい……)
道隆の顔を思い出すと、視界が潤む。
いきなりお姫様抱っこされた時は驚いたが、一緒に空を飛んでいる間、体温が上がるのを感じた。
どう思われただろう?やっぱり痩せているほうがいいだろうか、太っている女は嫌いなのかな…?
それに汗もかいている。風呂には2日前に入ったきりだし、臭かっただろう。もし腕を拭われていたら……香菜の気持ちが萎む。
彼女はありふれたいじめられっ子だった。
学校にも家庭にも居場所はない。SNS上で一部生徒から叩かれているのはほとんどの同級生が知っており、深く関わろうとする者はいなかった。
運動も勉強も苦手で、内気で太っているのが悪いのだろうか?クラスメイトと顔を合わせると緊張するので、聞いた事は無い。
両親は家を空けていることが多い。
仕事が忙しい、と言っているが、それだけが理由でない事は、既に察している。
砂を噛むような日々を過ごしていた頃、愛知県が魔物の群れによって壊滅した。
ぽっきりと折れたのは、両親の会話を聞いた時だっただろう。
高校卒業を機に別れるつもりらしいが、盗み聞きした会話内容から察するに、どちらも親権を得ようとは思っていないようだった。
その少し前、浜松市で化け物が暴れた。どうせならこっちにくればいいのに。
愛知県に暗い興味を抱いていた頃、香菜は異能者となった。
自宅で鉢合わせた父親に無視された時、軽い失望と悲しみ、怒りを混ぜた視線を彼に向ける。
するとどうだろう。今までの冷淡さが嘘のように、父親が親身になっていったではないか。
クラスメイトも同様。あっというまにイジメは止んだが、代わりに学校に行くのが辛くなった。
自分の変調に戸惑いつつ、アニメを実況し、ゲームに耽っていた時、身体を突き上げるような疼きが香菜を襲った。
ありがとうございます。