帰り道で肥えた少女と
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
コテージの前に、長身の男が立っている。
逞しく、均整の取れた身体をビジネススーツで包んでいるが季節柄、ジャケットは着ていない。
面長で目つきは猛禽のように鋭い。彼はこちらを見つけると、長い脚で歩み寄ってきた。
「紀里野さん!鹿島さん!」
「ご無沙汰してます、武田雄一さん」
武田雄一、人材派遣コミュのナンバー2。
彼は開拓団壊滅の報せを聞き、昨夜刈谷市に入ったのだ。
「随分と大勢連れていますが、これだけの人数が必要なのですか?」
「必要なのです。ゾンビ……仮の呼称ですが、異能者が含まれていて、捜索隊に大きな犠牲を出しました。今日の未明に、ようやく掃討できたのです…」
雄一は沈んだ声色で語るが、興味は引かれない。
「で、犯人は?」
異能者が複数倒されたのだ、犯人がいる可能性は高い――怪物か、異能者かは知らないが。
「犯人の顔は割れています。皆さんは吸血鬼らしいと、口を揃えています」
「へぇ?」
雄一は独りの異能者を連れてきた。
雲津と紹介された彼は自己紹介もそこそこに、ペンキでアスファルトの上に四角を描き始める。
四角形が完成してすぐ、枠の内側に歪みが生まれた。
枠の内側に描かれたのは、夜の刈谷市。
開拓団に唸り声をあげる人々が、噛みつき、血を啜っている。
「襲っているのは、開拓団に所属していた異能者です」
「犯人は映ってないのか?吸血鬼なら、最初の一体目がいるはずだろ」
「2日前の記録が見えれば即効ですけど、時間が経ち過ぎてて…」
雲津が映像を巻き戻すと、徐々にノイズが走り出した。
音声は無く、何かが動いている、という程度しか分からない。これだけで犯人を見つけるのは、難しいだろう。
他の探知系異能者もいるようだが、捜査は進んでいないらしい。道隆は既に興味が薄れつつある。
「儂、帰るわ」
「もう帰るの?」
「ここに居る間に犯人が来るかもしれないし、住んでる所の防御を固めておきたい」
「そうですか…、何か手掛かりを掴んだら、派遣コミュまで知らせてください」
環希は残り、捜索を手伝うらしい。
魔物を呼び出せば捜索を進めれるのでは、などと言い出さなくてよかった。
道隆は両脚を変化させて、宙に浮かび上がると、ミサイルのように飛行して刈谷から帰還する。
途中、県道36号の橋の近くで巨大鴉の群れを見た…人間を襲っているらしい。彼が睨みつけた直後、鴉どもは果実が摘まれるように八方に散る。
空中で握りつぶされたように、鴉は爆裂。
道隆は襲われていた人間の側に降りる。黒縁眼鏡をかけた若い女だ。
光沢のない、荒れ放題の長髪。目はぱっちりと大きく、顎にうっすらと肉がついている。
半袖から、たるんだ腕を晒している女は、道隆の顔を見ると、驚いたように目を瞠った。
嘴に突かれていたので、あちこち破け、血が滲んでいる。
「死んじゃいないか」
「あ、ありがとうございまス」
「いや、いいけど…」
ほっといてもいいか――と考えたが思い直した。
このまま放りだしたら死ぬな、と思いながら放っておくほど、人情の無い自分ではない。
協調性や社会性は人より欠けているが、道隆にも倫理感はある。無法地帯で生まれた修羅ではなく、現代日本で生まれ育った小市民なのだから。
ありがとうございました。