魔王の薫陶を受けた2人の男
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
春を過ぎ、日本は梅雨の時期に入った。
無論、愛知県にも雨は降る。蒸し暑くなったコンクリートの上を、彫りの深い顔をした一団を歩く。
彼らは日比野駅近くの市場に、魚や肉、野菜の詰まった箱を馬とも鳥ともつかぬ生き物に引かせて運んできた。
それを受け取るのは、現地に住む異能者の男。それを小柄な女が、遠巻きに見守っている。
ややウェーブかかった髪に広い額、垂れ目。
日比野に居を構える、俵藤奈々(ひょうどうなな)だ。名古屋はダンジョン内に発見された世界「マゴニア」と交流を始めた。
こちらからは人手やアイテムを輸出し、向こうからは物資――主に食材。妖気に侵されていない生き物――を受け取る。
紀里野道隆は曇天の下、痩身の少年と共に歩いていた。
「寿司なんて久しぶりだな、こっちで食べれるのは回らない奴ばかりだし」
「あー、チェーン店が全滅したもんな」
「ご馳走してくれるって事で、いいんだよね?」
「ランチメニューやってるから、それ以上頼んだら支払いは持たない」
「ケチ臭…」
高槻亮は頷く。
細面で顎が小さい。他に特筆する事は見当たらない。特徴のない顔立ちだが、逆にいえばそれだけ整っているという事。
軽い笑みを浮かべているその顔には、どこかアンニュイな雰囲気が漂う。
口を開くと鷹揚に応えてくれるが、奥底まで踏み込みがたい雰囲気を放つ。道隆はそのように捉えている。
マーラの異変が終わった頃、道隆は由依にそれとなく会いに行った。
由依が住んでいるのは、東部医療センターの近く……前園浩紀と同じ集落に住んでいる。彼女は自分とすれ違っても特に反応を示さなかった。
それが何を意味するのか計りかねたが、とにかく自分達の繋がりが切れた事は分かった。
しかし、亮は道隆のことを記憶しており、再会してからはちょくちょく会っている。
(マーラの手下なんだから、当たり前なんだけど)
2人は名古屋駅のツインタワーを望める通りにある店に足を運んだ。
電力供給の安定しつつあるとはいえ、現在の名古屋に寿司屋は少ない。
彼らが入店した寿司屋は、構えている店自体が異能――異変前の自分の店を再現したものらしい。
客は彼らのほかに3名。大将1人であるため、あまり多くの客は受け入れていない。
「席、空いてる?」
「空いてる席にどうぞ」
店はカウンター席のみ。
2人はランチメニューを頼み、差し出されたそれ――握りのセットに舌鼓を打つ。
1種類しかないだけあって美味い。仕込みに不味い点は無いし、シャリの管理も万全。
2人は満足して、店を出る。
だから人材派遣コミュの掲示板に、前述の寿司屋が依頼を出していた時は驚いた。
マゴニアの海に住む魚介類を、店に出したいらしい。漁業経験者を求む、と依頼文は締め括られていた。
(マゴニアって、外の魚だけじゃ駄目なのか?向こうから仕入れた方が安いのか?)
少し興味を惹かれたが、参加は見送ることにした。
先日、ランチを亮に奢ったとはいえ、懐にはまだ余裕がある。
「何見てるのー!?」
パソコンを見ている道隆に、咲世子が身を寄せてくる。
彼女はマーラが形成した空間について、何も知らなかった。杏子も同様だが、亮典や暁は覚えていた。
ほとんど肩を組むような姿勢のまま、彼女はページに目を走らせる。
「お願いがいっぱい書いてあるけど、なにこれ」
「仕事を頼む文章だよ」
「仕事に行くの?」
「いや……行かない」
道隆は咲世子の前で、PCをシャットダウン。
丁寧に箱にしまうと、ゲームでもする?と少女に尋ねた。
咲世子は上機嫌で首を縦に振り、養護教諭の恰好をした白貌の魔物を呼んだ。
ありがとうございました。