7月の異変、再び(1)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
スーパーから通りに出た道隆は、夜空で燃える2つの星を見た。
目を凝らすと、手足の長い人型が夜闇の中に、黒々と浮かび上がる。道隆は見られている、と感じた。
道隆が弾かれたようにバックステップすると、先程まで立っていた地点が陥没する。土を握り込み、指の間から零れるように、目の前で瓦礫が降る。
肉の腐った臭いが、道隆の嗅覚をくすぐる。
耳元で何かが囁く、それに意識を向けると同時に空腹を覚えた。
身体の奥底で、顔のないものが悲鳴を上げる――腹が減った。
道隆は銀のリボルバーを取り出し、砲撃態に変化する。
装甲は厚さを増し、その外見はさながら、人型の城塞を思わせた。
黒い翼が空を混ぜると、推進力が発生。巨大な人影の腰の高さまで浮上すると、両腕の引き金を引く。
閃光が走り、空間が引きちぎれる音が響いた。通りに並ぶビルが下半身もろとも、一点に集束。
人影は倒れなかった。
夜闇が不吉に唸り、冷えた突風が渦を巻く。道隆を気流が取り巻き、天高く持ち上げようとするが、抵抗する異能者は、根を張ったように動かない。
道隆はプラズマ球を巨大な影目がけて放つ。立て続けに炸裂したそれらは、空を昼間のように明るくする。白い光の中に、テレビ塔のように大きな人影が立っているのが目に入った。
周囲に喧騒が戻る。
轟音と閃光が晴れた時、道隆は通常空間に帰還した事を悟った。
周囲に感知網を広げるが、怪異は引っ掛からない。道隆は自宅に戻り、就寝。
翌日もいつも通り学校に登校し、授業を受ける。化学の授業を受けるべく、教室から移動を始めた時、道隆は不意に立ち止まった。
巨大な気配が、道隆の周囲を満遍なく包み込んだのだ。発信源が分からないほど隙間ないそれは、学校の外にまで広がっている――懐かしい妖気だ。
(あれだ!)
7月の異変の時と同じ、学校の内部は僅かに妖気が薄い。
まもなく、グラウンド方面から悲鳴が上がった。道隆が感知圏に収めている半径およそ3㎞内に、妖気を放つ"何か"が数百出現。
道隆がスマホを取ると、早苗からメッセージが送られてきている。読んでいる途中、電話がかかってきた。
「もしもし?」
「紀里野さん、合流しましょう。今どこ?」
「学校…」
「なら今すぐ出て。星ヶ丘の百貨店前に来て」
通話が切れた。
お互い異能者だ、ある程度近づけば信号でお互いの位置を把握できる。
グラウンドを覗ける位置の教室や廊下の窓には、生徒が張り付き、悲鳴や喚声を上げている。
道隆は由依の元に走ると、その手を取り、駆け出した。
「なに!?…ね、授業は」
「行ってる場合じゃない!こっち!」
由依の手を引いていた道隆は、ひょいと彼女を抱えて駆け出す。
豹のように玄関に駆け下りていく道隆に、由依は抱っこされたまま、内心舌を巻いた。
彼の運動能力が高いのは知っているが、これまでは加減していたらしい。壁から壁に蹴り移り、あっという間に玄関に到着。
「待…まって」
道隆は何かしゃべっている事を聞きつけ、急停止。
「靴、靴、替えさせて」
「あぁ、はいはい」
道隆が降ろすと、由依は使っている下駄箱に走った。
靴を履き替えている途中、悲鳴が2人を貫く。固まった由依を抱きかかえ、道隆は翔ける。
両脚だけを変身させ、スピードを上昇させる。唸り声や湿りのある何かが砕ける音を背に、道隆は正門を飛び越えた。
学校の敷地内にある異能者の気配は一つだけ、おそらく香里のものだ。道隆は由依以外の全員を捨てる――それを気にする道隆ではないが。
大曾根を通り過ぎた道隆の頭上を、旅客機のような鴉が通過した。
不意に、腕の中にいる由依の事が気にかかる。この少女はひょっとして――"向こうの名古屋"にもいたのだろうか?
マーラによって記憶を奪われ、人生を植え付けられた挙句、儂の恋人に?
「ね、なにあれ?」
「怪物」
「そうじゃなくて…」
「儂も詳しい事は知らない。覚えてないか?」
「何を?」
由依はきょとんとした顔で、立ち止まった道隆を見つめる。
内的世界の魔物の声は聞こえない。道隆はとりあえず、由依を彼女の自宅まで送ることにした。
玄関の鍵を開けさせ、中に放り込む。
ありがとうございました。