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旅人は東雲の下に流れ着いた(2)

趣味で書き始めました。

「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・キモイ主人公。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 3人は敷地から白川通に出ると、コンクリートの街を見回す。

やはり以前旅した世界に似ている。しかしあちらほど荒廃していない。

巨大な塔に挟まれた3~4階建てに匹敵する球体が銀色に照り輝く。

球体は見上げた3人は、醜く潰れた自分の姿を錯覚した。

他の乗客も、ディエゴ達から少し遅れて白川通にやってくると、整然とした街並みに驚嘆の声を上げた。


 エントランスに入ると、ガラスケースに収められた巨人の心臓のようなものが目に入った。

鋼鉄で作られており、下半分は釣鐘に似ている。

ヨアンはガラスの壁を背にしたカウンターを調べ、フレデリクは掲示された地図を確かめている。

他の遭難者は立ち話をしている者、エントランスで右往左往している者、様々だ。


 ディエゴは奥へ進み、2階に上がる。

足を踏み入れたのは、用途不明の装置が並べられた広場。

それらはテーマ毎に固められた展示物なのだが、ディエゴには理解できなかった。


「おい、待て!」


 視界の隅に人影が映る。

疾風のように近づき、驚いた様子の少年の肩を掴む。

声を掛けたその背丈は、ディエゴの腰より下までしかない。


「ふ=Π$ばΔふe!」

「…?何言ってンだ」


 肩から手を離すと、少年は大柄な男の様子を恐々と窺う。

ディエゴはゆっくりと子供の前に座り、二人は静かに向かい合った。

十秒近く見つめあった後、怯えの抜けたらしい少年が口を開く。


「Ζ、ΖΩdgωさ?」

「まるで分らん…」


 ディエゴは少年に別れを告げて、さらに奥を目指す。

丸いテーブルとカーブを描く長椅子が並ぶエリアに差し掛かった時、部屋の中に気配が1つ増えた。

気配の正体はフレデリクであった。

彼はディエゴと同様、少年に話しかけたが、やはり言葉が分からないらしい。


「異国の言葉ですか…」


 フレデリクが感心したように言うと、鞄から合成樹脂のケースを取り出す。

ケースを開くと、水色のヘッドセットを取り出し、起動。


「それなに聞いてるの?音楽?」

『いえ、音楽は聞いていませんよ』

「兄ちゃん、喋れるのか!」


 ヘッドセットがフレデリクの台詞を吸い、無機質な合成音声を響かせる。

旅の途中で入手した翻訳機は問題なく使用できた。


『一つ聞きたいのですが、いいですか?』

「なんだ?」

『ここはどこですか?』

「名古屋だよ?」


 少年はきょとんとした顔で答えた。


『君はここに――』

「なーなー、あっちの兄ちゃんすげー格好してるよな、コスプレ?」

『コスプレ?…』

「?」


 フレデリクは少年を緊張させないよう、穏やかな調子で会話を試みる。

長々と質問攻めにするつもりは無く、質問内容は絞る。

現在自分達がいるのは日本の名古屋である事、街には化け物が出没するようになった事、彼がこの場所に棲みついている事など、聞き出せた内容は基本的なものだけだった。







 1階エントランスでヨアンと合流した後、3人は街の外に向かうことに決めた。

コンクリートの固い道路を闊歩し、同じようなデザインの建物の間を進む。

フレデリクの生まれ育った世界より発達している事が伺えるが、面白味が感じられない。

故郷では集合住宅一つ建てる際にも、職工達が創意工夫を凝らす。


 こちらの通りに並ぶ屋根が四角ばかりであるのに対して、フレデリクの故郷に並ぶ建物は腰折、寄棟、円錐形など様々だ。

母屋から外に張り出した多用途台や、母屋と交叉した附属棟も、名古屋では見当たらない。

ヨアンが作られた荒廃世界とはまた違った意味で、寂寥感を覚えさせる景色である。


――あたりに轟音が鳴り渡った。


 3人から見て北西の方から赤色の光と土煙が上がる。


「面白そうな事やってるじゃねぇかァッ…!」


 ディエゴが飢えた犬のように走り去る。

止める間もなく、2人は距離を離していく背中を目指して駆ける。

光の上がった場所が近づくにつれ、人らしき声や轟音が大きくなる。


 辿り着いた伏見通では、4体の怪物達が戦闘を行っていた。

そのうち3体はディエゴ達とほぼ同じ大きさ。彼らが囲んでいる1体だけが抜きんでて大きい。

体長5~6mほどの、人面蛇身の怪物だ。


「なにあれー?化け物同士で…殺しあってる?」

「状況が分かりませんね…ちょっと?」

「どうでもいいだろ?全員、イリーシャの果てに送ってやるぜ…!」


 ディエゴが近づいていくと、3体のうちの1体が振り返った。


「y!?βΒgΓd!?」

「混ぜてもらいに来たぜェ!」


 ディエゴが斬りかかると、振り返った1体は爪で剣を弾いた。

指が割れる痛みに呻く彼は、ワニに似た大顎を除くと人間に近い。

緑と黄色の斑の外皮は加工したレザーのように固く、強靭な脂肪層が2撃目の威力を殆ど殺した。

鉄筋すら容易く真っ二つにする一撃だったが、ミュータント化した腕を両断するには至らない。


「gはwvb!?」

「s妃Q?」


 仲間らしきミュータントがディエゴに襲い掛かり、斑外皮を救出。

彼らは飛びずさり、巨大な怪物とディエゴ達双方に警戒の目を向ける。

斑外皮を抱えて飛んだのは、形容しがたい異形。

皮膚はライトグリーンの外骨格に変化し、左肩口から象の鼻のような肉のチューブと伸びる。

右腕は数本の触手が絡み合ったような形状をし、腰からは透き通った長い翅を一対生やしている。


「何だ、貴様らは人間か?」

「お、お前は言葉通じるらしいな」

〈ふふふ、俺にとって言語の違いなんてのは些細なものだ〉


 蛇身の怪物は機嫌を良くしたらしく、四つに割れる顎で器用に笑った。

分厚い筋肉で覆われた暗い青の上半身。造形は人間に似ている。

額で第三の目が開いている事を除けば、顔の作りもほぼ同じ。

右手に自身の体長とほぼ同じ長さの戦斧を提げ、ディエゴを見下ろしている。


「gjsЗa」

「@ganぁf!」


 ミュータント達は手短に相談を済ませると、その場から離脱。

ヨアンがガントレットから銃撃を行う。弾丸の殆どは空を切ったが、全て外れた訳ではない。

斑外皮の肩を貫き、3体目の腰が抉られた。

3体目は人間だった頃の容姿が多く残っているが、首が異様に長く、20もの骨は蛇のように動かすことができる。

蟹の鉗脚に酷似した両腕からは、象牙のような3本爪が伸びている。


 彼らはヨアンに恨めしげな視線を送っただけで、矢のような速さで走る。

反撃を警戒したフレデリクは接近する3体から離れながら、詠唱を行う。


「ザー・セー・ウァト」


 一帯の気温が氷点下まで落ち、雹や雪が嵐のように吹き荒れた。

氷の刃が4体の怪物に襲い掛かるが、逃亡に集中していた3体は嵐から難なく逃れる。

蛇身は戦斧を豪快に振るって雹を打ち落とし、突き刺さった氷柱を手で軽く払った。

日土地名古屋ビル前には、ディエゴ達と蛇身だけが残される。


〈おい、行っちまったぜ?〉

「あー?…わざわざ追いかける事もねえな。相手してくれるんだろ、筋肉野郎?」


 蛇身は粗野な笑みを浮かべて尋ねる。


〈ウハハハ!言うじゃねえか!?いいだろう、叩き殺してやるぞ…!〉


 蛇身は戦斧を軽々と持ち上げ、剣士目がけて大きく横薙ぎにする。

ディエゴが軽々と避けた一撃は、固い路面へ豪快に一文字の切れ込みを入れた。

フレデリクとヨアンもこれに気づき、ディエゴの側による。踏みしめる地面が音を立てた。


ありがとうございました。

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