傷ついた虚栄の帝国(1)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
道隆のLINEに、気配感知に何かが引っ掛かったとメッセージが送られてきた。
送り主は香里だ。彼女が住んでいる――異変前の名古屋を再現した空間――のは、徳川美術館の近く。
暗示めいたものを感じつつ、道隆は自身が確かめる旨を返信した。
(罠かも知れないけど、考えすぎかなぁ…)
道隆は外出着に着替えてから、外に出た。
夕食を済ませて、後は眠るばかりの時刻。明日も学校なのでこんな時間に出ていきたくないのだが、早く脱出しなければならない。
目覚めてから数日経ち、自分がこの暮らしを快適に思いつつあることに、道隆は気づいた。
(面倒臭いな)
この暮らしは放っておいた場合、いつまで続くのだろう。
センター試験なんて、2度と受けたくないのだが。道隆が駆けだすと、夜闇が不吉に唸った。
100mを最速3秒で走り抜けられる脚力を持ってすれば、徳川美術館の前まで3分もかからない。
(これ……菅松さんの家分かっちゃったかも)
そこまで来た頃、道隆の気配感知に引っ掛かったものがあった。
信号を頼りに走り続けると、コート姿の男2人組と鉢合わせる。蒸し暑い夏でありながら、男は汗を一筋もかいていない。
印象の薄い顔の男――ナイトストーカーは、懐からナイフを取り出した。道隆も装備していたメリケンサックを、両手に出現させる。
敏捷ながら、人間の域を出た速度ではなく、道隆は2人との間を駆けると、鉄拳で頭部を打ち抜いた。
2人を始末している途中、道隆は迫る怪異の気配を捉えていた。
その場から離れる頃、迫るエンジン音を聞く。間もなく頭上に、バイクとも飛行機ともつかない物体が姿を現す。
エンジン音をまき散らしていながら、左右の住宅地からは顔を出す者はいない。
――戦闘フィールドが形成されたのだ。
そのような事情は知らぬ道隆が空を仰いだ瞬間、不可視の歪みが降り注ぐ。
道隆の手間で爆発が起こる。この場に現れた気配は3つ――いや、周囲に100近い気配を感じる。
爆発によって陥没した道路から、中年男性が飛び出してきた。その手には柄頭に金緑石を飾った、湾曲した片刃の刀が握られている。
垂直に振り下ろされた刃を、道隆は左手に跳びあがって回避。
★
「始まったようだね…」
「申し訳ありません」
亮と池崎は高槻宅のリビングで、マーラと向かい合っていた。
彼は南雲や賢人が銀河に殺されたと知るや否や、住宅を引き払い、身を隠した。
銀河に殺され、ゾンビとして扱き使われるのはゾッとしない。
「かまわない」
「いいんですか?けど……」
「悲しいよ。虚栄を受け取った子は、痛みと怒りに向かっている。そして 強情を担うはずであったあの子も、我の自在天から出ていこうとしている…」
痩身の男は、しんみりと泣き出した。
亮は目の前にいる主人を見たまま、盛大に溜息を吐く。
顔を合わせるのはこの空間に来てからだが、会話が成立しない。意思の疎通は出来るのだが、こちらと話す気が無いように思う。
亮は隣の和室に布団を敷き、瞼を閉じた。
銀河はなぜあれほど、道隆にこだわるのか。叶わない相手から逃げる事は、何も恥ずかしい事ではない。
せっかく、食っちゃ寝で生活できるのだから、余計なことはしないで欲しいのだが。
ありがとうございました。