降り立つ他化自在天
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
「よーし、席につけー。今日は転校生を紹介する」
その一言により、クラスにざわめきが広がった。
由依も興味を惹かれたらしい。道隆はガールフレンドに調子を合わせるが、転校生が姿を現すとそちらに顔を向けた。
担任に招かれたのは男。特徴のない顔立ちだが、逆にいえばそれだけ整っているという事。
軽い笑みを浮かべているその顔には、どこかアンニュイな雰囲気が漂う。
「高槻亮です。これからよろしく」
涼し気な口調で言うと、道隆に目を向けた。休憩時間に入り、彼は質問攻めに遭う。
由依は道隆の隣で、転校生の席を囲む人だかりを遠巻きに眺めている。
「行かないの?」
「聞きたいこと無いし、そっちは?」
「儂も興味ない」
私も、と由依は道隆を見つめる。
彼女はあまり社交的でないらしく、付き合いのあるクラスメイトは二人。
両方とも女子。事務的な会話程度はするが、交友は広くないようだ。
昼休みになり、2人は机をくっつけて弁当を広げた。道隆はテーブルから何気なく亮を見ると、目があった。
亮は結局、道隆に話しかけることなく1日を終えた。
自宅として割り当てられたマンションの鍵を開け、部屋に入る。
フローリングの居間に大柄で七三分けの男――池崎輔や、派手な格好をした高橋銀河、20代くらいの肥満体――風間翔が集まっていた。
他の面々は、街に出ている。
「あ、ひどいなぁ~、入るなら玄関からにしてよ」
「うるせぇな、俺らにとっちゃあってないようなもんだろ。それより、康一と匠がやられたって?」
「うん、記録を見て欲しい」
指で宙をかくと、液晶画面のような空間の歪みが現れた。
マーラの軍勢、その中でもマーラの代行である彼は、空間内で起こった事象を閲覧できる。
夜色の篭手と具足を嵌めた道隆が、2人を消滅させる様を、亮達は映画のように見届けた。
「…どう思う?」
「どうって、長い射程と、地形を変えるほどの威力は厄介だな」
「街の修復は、昨夜のうちに完了した。ここ…北名古屋市が呑み込まれるまでには、あと3日かかる。妨害されてるみたいだね」
「こいつか?」
「俺には分からない。何も教えられてないし」
銀河は不満そうに鼻を鳴らした。
「ぶっ殺すか」
亮が口を開くより早く、だめだと誰かが言った。
声を聞いた瞬間、4名の気勢が萎んでいく。もしや……主人が来るのか?
「…殺すのは許さない。彼もまた、救われるべき子なのだから」
亮達が密談する居間に、痩身に髭面の男が現れる。
目を細め、口元に笑みをたたえている表情は、アルカイックスマイルに近い。
銀河は立ち上がろうとしたが、浮上した考えはたちまち深淵に沈む。
彼こそマーラ。名古屋を中心とした異常地帯に満ちる悲嘆や渇きを聞き届け、降臨した天魔――その片鱗。
その正体を確かめずとも、亮は感覚で理解できた。
「しかし、このまま放置していては、この街が壊される恐れがあります。対策が必要です」
「対策ぅ?何が必要だ?道隆が欲するものを、口に放ってやればいいじゃないか」
「欲するもの…」
舌を蕩けさせる食物、従順な美女、豪奢な宮殿。
好みはそれぞれだけど、この空間でなら遂げられる。
重く、発酵した欲望を抱えたものほど、他化自在天では栄光を掴める。強烈に望めば、欲しいものが向こうからやってくる。
「願えばいい、喚けばいい。真実それだけ願っていれば、そのうち現実が歪むからな」
「それで、この野郎を殺すのは駄目なのかい、…あー、マーラ様」
銀河が付け加えたように言うが、マーラは気にした様子はない。
「殺したいなら、殺せばいい。ただそれだけを欲するなら、一念で身体を満たすなら、おまえは必ず道隆を倒せる」
「へぇ、面白い。ありがとうございます」
マーラは慈愛に満ちた微笑で頷く。
しかし、池崎は気づいていた。痩身の瞳が、銀河を、いや部屋にいる何者を見ていない事を。
彼は自分達を子と呼ぶが、万が一全滅したとして、マーラは悲憤を覚えるだろうか?池崎は確信を持てなかった。
ありがとうございました。