日常を営む紛い物(1)
趣味で書き始めました。
「先日、僕らの街が終了した件について」の続きです。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・展開次第でハーレムもあるか?
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・キモイ主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
朝、道隆は第3能力の拳銃で射撃の練習をしていた。
静かな公園でペットボトルをターゲットにする。教本を見て、姿勢を確認。
道隆の側には20本の空きペットボトルが、出番を待っていた。
目標に向かって正対し、両足を肩幅程度に開く。異能によって構成されている銃なので、装弾の手間は要らない。
左手の親指を、グリップを握る右手の親指に這わせる。引き金を引いた。
――当たらない。
朝の集落に、銃声が幾度となく轟く。
普通の銃器のように――銃を始めて撃つのに、この表現はおかしいが――に、武器として使えそうだ。
しかし、一発ではあたらない。十回以上引き金を引いて、ようやくペットボトルを吹き飛ばす事ができた。
異能者となり、戦闘力の高い形態に変身できる今の道隆にとっては、無意味な殺傷性能だ。
(別にいらないよな。ま、変身するときには要るんだけど)
手から何か出るし。
用意したペットボトル全てに穴を開けると、道隆はゴミと教本を抱えて帰宅。
1本当てるまでに、ひどい場合で30発かかった為、公園を去る事には正午を回った。
「紀里野さん、起きて下さい!街が」
「――!なに?」
公園で練習した翌日の朝、亮典が呼びに来た。
彼の表情を見てただならぬ様子を察し、手早く着替えて外に出る。
暁と杏子、咲世子と保険教諭と合流して、平安通交差点に向かう道すがら、徐々に異常が明らかになった。
黒い幽霊が消えている――いや、少し違う。
幽霊は通行人に変化したのだ。制服を着た少年達や会社員らしき男女、私服の老人が呑気な顔で歩いている。
別に珍しい光景ではない。異変が起き、市内の企業が操業停止した名古屋で無ければ。
商店は殆ど無く、住宅の間に小さな企業が軒を連ねている集落。彼らはどこに向かうのか?
道隆らが尾行すると、人々はバリケードに向かってためらうことなく歩き続ける。地下鉄の出入口に降りる者はいたが、車に乗っている者はいない。
「おい、地下鉄に降りてくけど」
「うん、どっち行く?」
しばしの協議の末、彼らは2手に分かれて人々を追った。
牧野母子組は地下鉄へ、道隆と咲世子はバリケードに向かう。
走る道隆の後ろを、少女が駆けていく。咲世子の走力は、体格による歩幅の違いを意に介さないほど高い。
お互い全力疾走には及ばないので、脚力の現界を窺う事は出来ないが。
通行人はバリケードにぶつかると吸い込まれるように消えた。
黒い馬を呼び出し、咲世子と共に集落の上空に上がり、通行人の行き先を探すが見つからない。
気配感知を展開するも、壁にぶつかった時点で消失している。
「どうしたの?お兄さん」
「下にいる通行人がどこに行ったのかなって」
「あぁ、あれ。消えてるんでしょ」
咲世子が当たり前のように言った。
「消えてるって、何処に?」
「あの幽霊達は、この街の付属品なの。街を維持する為に存在しているから、この街の外には出られないの。夜になったら帰ってくるでしょ」
少女は淡々と口にする。
道隆は呆気にとられるが、彼女の推論は納得のいく物だ。
「…よくわかるね」
「え?お兄さんはわからないの」
「教科書が無いとわからないかな」
「頭悪いのー?大人なのに」
言い方がきつすぎるだろう。
しかし、この程度で目くじらを立てるのは馬鹿馬鹿しい。
社会的立場を考えて、自分を抑える。異変が起きる前の名古屋で培った常識だ。
ありがとうございました。